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翌朝、小鳥の鳴き声で目が覚めた私はベッドから起き上がると大きく伸びをした。それから服を着替えると、リビングに向かうために部屋を出た。廊下を歩いていると、隣のカイトの部屋から物音が聞こえることに気付く。
(また剣を振ってるのかな?)
そう思って部屋を覗いてみると案の定、彼は剣を振っていた。私にはその姿が美しく思えた。洗練された動きでありながらどこか力強い印象を受けるのだ。しばらくするとカイトは動きを止めてこちらを見た。
「おはよう」
「おはようございます!」
私は元気よく挨拶を返すと彼の側に向かった。
「今日も朝から鍛錬ですか?」
「ああ、日課だからな」
カイトは手に持った剣を鞘にしまうと、額の汗を拭った。私はその仕草に胸がどきりと高鳴るのを感じた。
「朝ごはん、できてますよ」
「ありがとう、すぐに行く」
彼はそう言って微笑むと部屋を出ていく。その後ろ姿を見送りながら私はため息をついた。
(ずるいなぁ……)
そんなことを考えていると、食卓からご飯の炊ける良い匂いが漂ってきたので慌ててキッチンに向かうのであった。
朝食を済ませた私とカイトはギルドに向かうことにした。仕事の依頼を受けたわけではない。新しい装備を慣らすための訓練場を借りに行ったのだ。
「すみません、訓練場をお借りしたいのですが」
私は受付のお姉さんに話しかけると、彼女は笑顔で対応してくれた。
「はい! こちらで大丈夫ですよ!」
彼女は奥の扉を開けると私たちを案内してくれる。そこには簡易的なグラウンドのような場所があり、隅には藁束が積まれていた。
(ここで魔物と戦うこともあるのかな……)
そんなことを考えつつ、私とカイトは練習場の中へと入っていった。
「わぁ……広いですね!」
私は感嘆の声を上げた。学校にあるグラウンドよりもずっと広くて走り回るのに最適そうだ。
(ここで訓練したら強くなれるかも……)
私はワクワクした気持ちを抑えながらカイトの方を向くと、彼もまた興味深そうに周囲を見渡していた。彼は様々な武器を使うが、一番得意なのは双剣だ。両手に剣を装備して戦う姿はまるで舞を舞っているかのような美しさがあると思う。
そんなことを考えていると、カイトが話しかけてくる。
「ここなら思う存分試せそうだな」
「はい!」
私は元気よく返事をすると、軽く準備運動を始める。それを見たカイトも同じように体を動かし始めた。それからしばらくの間、私たちは並んで走ったり素振りをしたりして訓練を行った。カイトは双剣だけでなく弓や槍なども得意なので、いろんな武器を試すことができたのが嬉しかったようだ。私も片手剣しか使ったことがなかったので槍や斧などの重量武器も扱えるようになったことがとても嬉しかった。
(でもやっぱり一番嬉しいのは……)
「ノエル」
名前を呼ばれた瞬間、私の心が躍った。
(やっぱりカイトに名前を呼んでもらえるのが嬉しい……)
私は頬を緩ませながらカイトの隣に移動すると、お互いに剣を構える。それから私たちは模擬戦を始めるのであった。
「はぁっ!!」
私とカイトは同時に斬りかかると激しい打ち合いが始まった。彼の剣捌きは美しく、私の攻撃は全て受け流されてしまう。
(悔しい……!)
私は必死になって攻め続けるも、一撃たりとも命中することはなかった。
「そろそろ休憩するか?」
模擬戦を始めて1時間くらい経ったところで、カイトが私に声をかける。私は肩で息をしながら彼の顔を見る。
(まだまだ余裕そうだ……)
私は彼の強さに感心しながら頷いた。私たちは練習場の休憩スペースに向かうと、置いてあったベンチに腰を下ろすのであった。
「まだまだ未熟だな」
私が息を整えていると、カイトがぽつりと呟いた。
「そ、そんなことないですよ! 結構強くなってます!」
私は慌てて反論する。確かにまだ一度も勝てていないけれど、前よりは確実に強くなっているはずだ。
「いや、まだまだだ。お前は動きが単純すぎる」
「うぅ……」
私は反論できずに黙り込んだ。確かにカイトに指摘されてからは動きがぎこちなくなっていたような気がする。
(やっぱりカイトには敵わないなぁ……)
私は心の中でため息をつくと、空を見上げた。雲一つない青空が広がっているのを見て心が洗われるような感覚を覚えたのだった。
休憩を終えた私たちはギルドを出てから街を歩くことにした。とりあえず昼食を食べるために『金のリンゴ亭』に向かった。店内に入ると、アンジュさんが笑顔で出迎えてくれた。
「あら、いらっしゃい! 今日はお二人さんなのね」
「こんにちは!」
私たちは挨拶を返すと席に着く。メニューを見てから料理を選んで注文すると、しばらくして運ばれてきた。
「いただきます!」
私は手を合わせてからスプーンを手に取るとスープを口に運んだ。濃厚な味わいが口の中に広がり幸せな気分に包まれる。
(美味しい……)
夢中になって食べているうちにあっという間に完食してしまった。食後のコーヒーを飲みながら一息ついていると、ふと隣から視線を感じた。そちらを見ると、カイトが私のことをじっと見つめていた。
「えっと……どうしました?」
私が尋ねると、彼は少し慌てたような素振りを見せる。それから何かを言いかけたが、口を閉じて首を振った。
(どうしたんだろう……?)
不思議に思って首を傾げると、彼は再び口を開いた。
「お前の食べ方はとても綺麗だと思う」
突然褒められて私は顔が熱くなった。嬉しいけれど恥ずかしくて上手く言葉を返せない。そんな私を見てカイトは優しく微笑んだのであっ
(また剣を振ってるのかな?)
そう思って部屋を覗いてみると案の定、彼は剣を振っていた。私にはその姿が美しく思えた。洗練された動きでありながらどこか力強い印象を受けるのだ。しばらくするとカイトは動きを止めてこちらを見た。
「おはよう」
「おはようございます!」
私は元気よく挨拶を返すと彼の側に向かった。
「今日も朝から鍛錬ですか?」
「ああ、日課だからな」
カイトは手に持った剣を鞘にしまうと、額の汗を拭った。私はその仕草に胸がどきりと高鳴るのを感じた。
「朝ごはん、できてますよ」
「ありがとう、すぐに行く」
彼はそう言って微笑むと部屋を出ていく。その後ろ姿を見送りながら私はため息をついた。
(ずるいなぁ……)
そんなことを考えていると、食卓からご飯の炊ける良い匂いが漂ってきたので慌ててキッチンに向かうのであった。
朝食を済ませた私とカイトはギルドに向かうことにした。仕事の依頼を受けたわけではない。新しい装備を慣らすための訓練場を借りに行ったのだ。
「すみません、訓練場をお借りしたいのですが」
私は受付のお姉さんに話しかけると、彼女は笑顔で対応してくれた。
「はい! こちらで大丈夫ですよ!」
彼女は奥の扉を開けると私たちを案内してくれる。そこには簡易的なグラウンドのような場所があり、隅には藁束が積まれていた。
(ここで魔物と戦うこともあるのかな……)
そんなことを考えつつ、私とカイトは練習場の中へと入っていった。
「わぁ……広いですね!」
私は感嘆の声を上げた。学校にあるグラウンドよりもずっと広くて走り回るのに最適そうだ。
(ここで訓練したら強くなれるかも……)
私はワクワクした気持ちを抑えながらカイトの方を向くと、彼もまた興味深そうに周囲を見渡していた。彼は様々な武器を使うが、一番得意なのは双剣だ。両手に剣を装備して戦う姿はまるで舞を舞っているかのような美しさがあると思う。
そんなことを考えていると、カイトが話しかけてくる。
「ここなら思う存分試せそうだな」
「はい!」
私は元気よく返事をすると、軽く準備運動を始める。それを見たカイトも同じように体を動かし始めた。それからしばらくの間、私たちは並んで走ったり素振りをしたりして訓練を行った。カイトは双剣だけでなく弓や槍なども得意なので、いろんな武器を試すことができたのが嬉しかったようだ。私も片手剣しか使ったことがなかったので槍や斧などの重量武器も扱えるようになったことがとても嬉しかった。
(でもやっぱり一番嬉しいのは……)
「ノエル」
名前を呼ばれた瞬間、私の心が躍った。
(やっぱりカイトに名前を呼んでもらえるのが嬉しい……)
私は頬を緩ませながらカイトの隣に移動すると、お互いに剣を構える。それから私たちは模擬戦を始めるのであった。
「はぁっ!!」
私とカイトは同時に斬りかかると激しい打ち合いが始まった。彼の剣捌きは美しく、私の攻撃は全て受け流されてしまう。
(悔しい……!)
私は必死になって攻め続けるも、一撃たりとも命中することはなかった。
「そろそろ休憩するか?」
模擬戦を始めて1時間くらい経ったところで、カイトが私に声をかける。私は肩で息をしながら彼の顔を見る。
(まだまだ余裕そうだ……)
私は彼の強さに感心しながら頷いた。私たちは練習場の休憩スペースに向かうと、置いてあったベンチに腰を下ろすのであった。
「まだまだ未熟だな」
私が息を整えていると、カイトがぽつりと呟いた。
「そ、そんなことないですよ! 結構強くなってます!」
私は慌てて反論する。確かにまだ一度も勝てていないけれど、前よりは確実に強くなっているはずだ。
「いや、まだまだだ。お前は動きが単純すぎる」
「うぅ……」
私は反論できずに黙り込んだ。確かにカイトに指摘されてからは動きがぎこちなくなっていたような気がする。
(やっぱりカイトには敵わないなぁ……)
私は心の中でため息をつくと、空を見上げた。雲一つない青空が広がっているのを見て心が洗われるような感覚を覚えたのだった。
休憩を終えた私たちはギルドを出てから街を歩くことにした。とりあえず昼食を食べるために『金のリンゴ亭』に向かった。店内に入ると、アンジュさんが笑顔で出迎えてくれた。
「あら、いらっしゃい! 今日はお二人さんなのね」
「こんにちは!」
私たちは挨拶を返すと席に着く。メニューを見てから料理を選んで注文すると、しばらくして運ばれてきた。
「いただきます!」
私は手を合わせてからスプーンを手に取るとスープを口に運んだ。濃厚な味わいが口の中に広がり幸せな気分に包まれる。
(美味しい……)
夢中になって食べているうちにあっという間に完食してしまった。食後のコーヒーを飲みながら一息ついていると、ふと隣から視線を感じた。そちらを見ると、カイトが私のことをじっと見つめていた。
「えっと……どうしました?」
私が尋ねると、彼は少し慌てたような素振りを見せる。それから何かを言いかけたが、口を閉じて首を振った。
(どうしたんだろう……?)
不思議に思って首を傾げると、彼は再び口を開いた。
「お前の食べ方はとても綺麗だと思う」
突然褒められて私は顔が熱くなった。嬉しいけれど恥ずかしくて上手く言葉を返せない。そんな私を見てカイトは優しく微笑んだのであっ
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