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起:始まり
9.ドワーフ達が住まう町に向かう事にした
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兄のオイゲンとベルトーラ公爵令嬢がキクルス家に来てから翌日。
カイ達三人は領内視察から帰ってきたキクルス伯爵夫妻と入れ替わる様に屋敷から出発した。
「では父上、イライザ母上。オイゲン兄上達の事をお願いいたします」
「承知した」
「気をつけて行ってらっしゃい」
何処かやつれた顔をする父レオンと視察に行く前よりも肌が艶々している義母イライザを余所に、カイ達は馬車に乗って目的地であるキクルス伯爵領の南部にある町まで行く事にした。
その町に居る友人である亜種族のドワーフ達に会いに行く為に。
「マシューとピアシェ、元気にしているだろうか」
「そういえば、最後にあったのが選定から一ヶ月前だったよね?」
「そうなるな。ティファは南部の町に行くのは始めてでしたっけ?」
「そうですね。私もベルフェ家領土より南部の地域はキクルスより先は行った事がありませんですね」
今日のティファはメイド服ではなく貴族らしく令嬢のドレスを着て参加していた。
右目の眼帯さえなければ完璧で美人な彼女なだけに、ミリーは何とも言えない顔をしてティファを見ていた。
そんなミリーの姿にティファはニッコリと微笑み、彼女の頬を撫でていた。
「大丈夫ですよ、ミリー様。私は、生きているのですから」
「割り切ってはいるのですが…クリスのした事には許す事は」
「確かに、私はあの方に右目を焼かれました。ですが、私は生きて家に帰り、今こうしてミリー様とカイ様の傍に居て、普通に生活をし、普通に仲良く暮している。それだけで彼女達への報復になります。最も、私もミリー様、そしてカイ様も彼女達に制裁を与えたいお気持ちがあるのは分かります。ですが、それはその時に任せれば宜しいのです」
ティファの言葉にカイとミリーは頷き、ニッコリと微笑み返した。
そんな時、馬車の窓からはキクルス家が保有する麦畑の光景が見えてきた。
畑に生える小麦達は黄金色に染まり、収穫間近にはなっていたが…
「カイ様。外の光景を見られましたか?」
「ああ。今年の冬は厳しそうだな…」
御者台に乗っている老執事のバトラの問いに、カイは素直に答えた。
今年の麦はおろか、穀物の農家全体が不作になるほど実りの出来が悪かった。
これはキクルス領土内に限らず、セントーラ王国全体で起っており、食料の価格が上昇しているのが見えていた。
「なんでも、今年は雨が多くて日照が少なく、その上寒かったのが原因かと思われます」
「確かに、収穫前には一週間も雨が振り続けていたからな」
「王都では女神の加護が失いつつあるとか噂が出ておりますが…」
「恐らくは勇者に対する不信感が女神教への信仰が落ちてる所為でもあるだろう。最も、全て女神が悪いわけではないんだがなぁ…」
カイの言う通り、この加護システムを作り上げたのは女神の先代である父神の関係であり、その父神が自分の感情一つで地上を加護と罰を与えているほど傲慢に満ちていた。
女神自体はその父神のやらかした尻拭いの為に守護の座に就いているのだが、碌な引継ぎもせずに勇者達に封印されてしまった父に代わって運営をしている為、やることなすことが全て裏目に出ていた。
要するに、傲慢な父による初代経営者の後に無能な子による二代目経営者に店を任せて赤字にしてしまってるようなものである。
ただ、その赤字の代償がセントーラ王国の全人間に被害をもたらす程であるが…
「建国前の文献では、父神と同等の神格を持つ神々が居たとされてますが、その神々の殆どは邪神や悪魔とされて追放、もしくは亜種族の小さな土着の神としてひっそりと信仰される程度にされてしまいましたからね」
「主な原因が建国前から居たレヴィア家の祖先である初代女神教の教皇…当時は主神教であった最後の教皇が父神と女神以外の神を認めない一神制度を取った事が原因でもあるからね。王国の人間を団結させる為には良かったが、その後の独裁と退廃が酷いものであったからね」
カイの言う通り、建国前のレヴィア公爵家出身である主神教最後の教皇が、自分の家に悪魔憑きにさせた原因が父神による古き神々の追放が原因だと分かり、他の公爵家と建国前の王家となる勇者達が父神を封印する事に成功し、建国後に七大公爵の祖先が改心をするついでに国教であった主神教を父神の娘である女神を奉る事になった。
当時はそれでよく、女神も人間の為に父神に変わって頑張ってはいたが…時が過ぎれば過ぎるほど記憶が劣化し、当時に腐敗も進行していった。
建国当時に他の神々を認めない一神制度を採っていたのは悪魔に落ちた古き神々が改心させるための戒めの為であったが、それが後に自分達への報復による復讐を恐れる様になり、女神以外を信仰する者を背教者として断罪し、処罰するほどにまで悪化した。
同時に、女神の下なら何しても良いという欺瞞も生まれ、貴族と宗教家の汚職がはびこる様になった。
ただ、その間にあの六度による勇者の暴君時代が起るたびに反省をし、戒めてはきたが…
これも今回のアスモデ家のセシルによる暴走が不信感を煽る結果となり、信仰力が斜め駄々下がり状態になっていた。
「ただ、この現象はセントーラ王国のみに起ってる現象で、王国に属さない小国や各亜種族の国々では例年通りの収穫であったと旦那様と奥様の視察による報告でした」
「やはり宗教改革は行うべきなのか…」
「そのあたりの事は上のお方達にお任せするのが妥当かと思われます」
「分かった。ありがとう、バトラ」
「ほっほっ、カイ坊ちゃまのお世話はまだまださせて貰いますぞ」
「もう…坊ちゃまというのはやめてくれ…成人したのだから」
バトラの坊ちゃま扱いに、カイは頭を掻いてるのをミリーとティファはクスッと笑って和んでいた。
そんなやり取りをしている合間に、目的地であるキクルス南部の町…巨大な建物に幾つ物の煙突が立ち並び、その煙突郡から黒煙が立ち上る工業の町に辿り着いた。
カイ達三人は領内視察から帰ってきたキクルス伯爵夫妻と入れ替わる様に屋敷から出発した。
「では父上、イライザ母上。オイゲン兄上達の事をお願いいたします」
「承知した」
「気をつけて行ってらっしゃい」
何処かやつれた顔をする父レオンと視察に行く前よりも肌が艶々している義母イライザを余所に、カイ達は馬車に乗って目的地であるキクルス伯爵領の南部にある町まで行く事にした。
その町に居る友人である亜種族のドワーフ達に会いに行く為に。
「マシューとピアシェ、元気にしているだろうか」
「そういえば、最後にあったのが選定から一ヶ月前だったよね?」
「そうなるな。ティファは南部の町に行くのは始めてでしたっけ?」
「そうですね。私もベルフェ家領土より南部の地域はキクルスより先は行った事がありませんですね」
今日のティファはメイド服ではなく貴族らしく令嬢のドレスを着て参加していた。
右目の眼帯さえなければ完璧で美人な彼女なだけに、ミリーは何とも言えない顔をしてティファを見ていた。
そんなミリーの姿にティファはニッコリと微笑み、彼女の頬を撫でていた。
「大丈夫ですよ、ミリー様。私は、生きているのですから」
「割り切ってはいるのですが…クリスのした事には許す事は」
「確かに、私はあの方に右目を焼かれました。ですが、私は生きて家に帰り、今こうしてミリー様とカイ様の傍に居て、普通に生活をし、普通に仲良く暮している。それだけで彼女達への報復になります。最も、私もミリー様、そしてカイ様も彼女達に制裁を与えたいお気持ちがあるのは分かります。ですが、それはその時に任せれば宜しいのです」
ティファの言葉にカイとミリーは頷き、ニッコリと微笑み返した。
そんな時、馬車の窓からはキクルス家が保有する麦畑の光景が見えてきた。
畑に生える小麦達は黄金色に染まり、収穫間近にはなっていたが…
「カイ様。外の光景を見られましたか?」
「ああ。今年の冬は厳しそうだな…」
御者台に乗っている老執事のバトラの問いに、カイは素直に答えた。
今年の麦はおろか、穀物の農家全体が不作になるほど実りの出来が悪かった。
これはキクルス領土内に限らず、セントーラ王国全体で起っており、食料の価格が上昇しているのが見えていた。
「なんでも、今年は雨が多くて日照が少なく、その上寒かったのが原因かと思われます」
「確かに、収穫前には一週間も雨が振り続けていたからな」
「王都では女神の加護が失いつつあるとか噂が出ておりますが…」
「恐らくは勇者に対する不信感が女神教への信仰が落ちてる所為でもあるだろう。最も、全て女神が悪いわけではないんだがなぁ…」
カイの言う通り、この加護システムを作り上げたのは女神の先代である父神の関係であり、その父神が自分の感情一つで地上を加護と罰を与えているほど傲慢に満ちていた。
女神自体はその父神のやらかした尻拭いの為に守護の座に就いているのだが、碌な引継ぎもせずに勇者達に封印されてしまった父に代わって運営をしている為、やることなすことが全て裏目に出ていた。
要するに、傲慢な父による初代経営者の後に無能な子による二代目経営者に店を任せて赤字にしてしまってるようなものである。
ただ、その赤字の代償がセントーラ王国の全人間に被害をもたらす程であるが…
「建国前の文献では、父神と同等の神格を持つ神々が居たとされてますが、その神々の殆どは邪神や悪魔とされて追放、もしくは亜種族の小さな土着の神としてひっそりと信仰される程度にされてしまいましたからね」
「主な原因が建国前から居たレヴィア家の祖先である初代女神教の教皇…当時は主神教であった最後の教皇が父神と女神以外の神を認めない一神制度を取った事が原因でもあるからね。王国の人間を団結させる為には良かったが、その後の独裁と退廃が酷いものであったからね」
カイの言う通り、建国前のレヴィア公爵家出身である主神教最後の教皇が、自分の家に悪魔憑きにさせた原因が父神による古き神々の追放が原因だと分かり、他の公爵家と建国前の王家となる勇者達が父神を封印する事に成功し、建国後に七大公爵の祖先が改心をするついでに国教であった主神教を父神の娘である女神を奉る事になった。
当時はそれでよく、女神も人間の為に父神に変わって頑張ってはいたが…時が過ぎれば過ぎるほど記憶が劣化し、当時に腐敗も進行していった。
建国当時に他の神々を認めない一神制度を採っていたのは悪魔に落ちた古き神々が改心させるための戒めの為であったが、それが後に自分達への報復による復讐を恐れる様になり、女神以外を信仰する者を背教者として断罪し、処罰するほどにまで悪化した。
同時に、女神の下なら何しても良いという欺瞞も生まれ、貴族と宗教家の汚職がはびこる様になった。
ただ、その間にあの六度による勇者の暴君時代が起るたびに反省をし、戒めてはきたが…
これも今回のアスモデ家のセシルによる暴走が不信感を煽る結果となり、信仰力が斜め駄々下がり状態になっていた。
「ただ、この現象はセントーラ王国のみに起ってる現象で、王国に属さない小国や各亜種族の国々では例年通りの収穫であったと旦那様と奥様の視察による報告でした」
「やはり宗教改革は行うべきなのか…」
「そのあたりの事は上のお方達にお任せするのが妥当かと思われます」
「分かった。ありがとう、バトラ」
「ほっほっ、カイ坊ちゃまのお世話はまだまださせて貰いますぞ」
「もう…坊ちゃまというのはやめてくれ…成人したのだから」
バトラの坊ちゃま扱いに、カイは頭を掻いてるのをミリーとティファはクスッと笑って和んでいた。
そんなやり取りをしている合間に、目的地であるキクルス南部の町…巨大な建物に幾つ物の煙突が立ち並び、その煙突郡から黒煙が立ち上る工業の町に辿り着いた。
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