聖女候補に認定された幼馴染が泣きながら帰ってきたので戦争します。

名無シング

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承:不穏

17.復讐を成し遂げる為の準備へ…

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翌朝…

カイはミリーと共に起床した後、コレットの様子を見に彼女の部屋に訪れた。
コレットは既に起床しており、ティファの手伝いの元に執事服の着付けを終えたばかりであった。

「おはようございます、カイ様」
「おはよう、コレット。ティファ。コレットに合う服があって良かった」
「ええ、良く似合っておりますわ。コレット様」
「そ、そうでしょうか…?」

ロングウェーブだった髪の毛をショートロングにまで切って束ね、男装っぽく整えたコレットは未だに戸惑いながらも褒められた事に嬉しがる様子に、カイは安堵した表情で見ていた。
それと同時に男装したコレットの姿を見て、カイの中にある女性への恐怖心が残り続ける事に対して情けなく感じていた。

「…いい加減、僕も未練を断ち切らないといけないな」
「焦らなくて良いよ…それよりも、ティファ様」
「なんでしょうか?ミリー様」
「何故、ティファ様まで執事服を…?」

ミリーの問いに気付いたカイは改めてティファを見たら、彼女が何時ものドレスやメイド服ではなく、執事服を着ていた事に今になって気付いた。
しかも、ミリーやコレットよりも大きい胸を服で隠す形で。

「あら?私の男装はお気に召されませんでしたか?」
「いや、そう言うわけじゃないんだが…何故に?」
「実は、コレット様のお手入れや着付けを楽しんでましたら、私もやってみても大丈夫かなぁ…と思いまして。…駄目でしょうか?」
「いや、駄目じゃないけど…良いのかな?これ」

元々淑女らしい姿をしていたティファであったゆえに、カイは彼女の変わり様に言葉を表せなかった。
しかし、昨日以前のような女性への恐怖心が薄れている事に、カイは直ぐに気付き、ティファもまたカイが気付いた事に分かり、カイの身体に触れていた。

「どうでしょうか?震えは出ますか?」
「…皮肉な事に、男装している君だと震えは出なくなってる」
「でしょう?それでしたら、今後はカイ様とのご一緒する時はこの姿でお世話させていただきます」

そういってニッコリと微笑む眼帯の少女に、カイは申し訳なく感じた…
復讐が終えたら、まずは女性恐怖症を克服するべきだと…



着替えなどの身支度を終え、朝食を取る為に食堂に向かっていた。
その際、例の侯爵令嬢四人もコレットとティファの姿に驚き、言葉を出せずにいた。

その後は一同が集るまで待ち、静かに朝食を取っていた…


朝食を終え、午前の書類業務を終えたカイ達は予定通りに軍事訓練の視察へと向かっていた。
移動用の大型馬車で簡素な物であるが、一台につき7~8人乗り用としてはかなり良い物であった。
そんな馬車の中で、カイは執事服を着た三人から資料を受け取りながら整理し続けていた。
そのカイの行動に、ミシェルは呆れながら問いかけてきた。


「あんたねぇ…こんな時も仕事をしているわけ?」
「お生憎ですが、政局が安定するまではずっとこの状態ですね」
「はぁ…もうツッコミ気が起きないわ…それはそうと、なんで私達の服装はこんな学生服みたいな作業着なわけ?」

ミシェルの言う通り、現在の彼女達の服装は貴族令嬢のドレス服ではなく、学校に通う女子生徒の制服であった。
ブレザーにスカートという煌びやかとはかけ離れた服装に、ミシェルは不満を漏らしていた。
一方、ジュディに関しては動きやすい男子生徒の制服を着ていたことに誰も追及はしなかった。
本人も「こっちの方が気が楽になる。スカートだと意識して動きにくくなる」と言ってたのでカイは何も言及しなかった。

「しかし、カイ殿。今日はどんな軍事訓練を行うのですか?」
「砲撃訓練と射撃訓練ですね。新型の火砲と銃の性能に合わせて、兵達の訓練状況を見る事にします」
「火砲?火砲とは、大砲のことですか?」
「はい、大砲の事ですね。但し、ジュディ嬢のご存知の大砲は丸い砲丸で撃つものだと思われてますね?」
「あ、ああ…騎士団に在籍していた時は、セィタン閣下が指揮する砲兵達の訓練を見学して際に知りました。あれとは違うのですか?」
「ですね。あれよりも進化した物と言っておきましょう。同時に、今までのようなマスケット銃とは比べ物にならない兵器もご紹介しましょう」

カイの言葉にジュディを除く三人は未だに首を傾げ、ジュディもまた一体どういう物なのか理解せずにいた。



馬車で移動して約一時間…
演習場として使われてる草原へと辿り着き、その演習場に置かれている物を見たコレットを含む侯爵令嬢五人は驚きを隠せなかった。

馬8頭で牽引するような大砲が30門ほど横一列に並び、その隣には6連装の砲身の付いた奇銃の砲台が備えられ、兵士達にはマスケット銃よりも長い銃を両手で持ち、片手でも持てる短めの銃が腰に携えていた。

「何…これ…」

見た事の無い兵器や装備の光景に、ミシェルはあまりの驚きに思わず呟いた。
これほどの装備が田舎の伯爵領に配備されてるなど、有り得ない…と。

「ミシェル殿…」
「何よ、ジュディ…」
「あちらを見てくれ…」
「あっち?…っ!?」

ジュディの指摘を受けたミシェルはその方向へと顔を逸らして見た時、目を見開いて言葉を詰まらせた。
先程の砲台が玩具に見えるような、10人以上で動かすような巨大な砲台がそこに鎮座していた…

まるで、巨人が使うような銃に見える巨砲がそこにあった。

「セィタン家騎士団所属、第四師団・第三砲兵部隊の演習配置が完了いたしました!!」
「ご苦労。新型の榴弾砲がやっと届いたね」
「フリーデンの町から約二日かけて分解輸送し、一日かけて組み立てましたからね。次の訓練までには短縮してみます」

現場の指揮官と話していたカイは巨砲のところまで歩き、砲身から砲を支える台まで隅々に触りながら見て、砲台の周りにある薬莢付き砲弾を眺めていた。

「…こいつの威力が見てみたいな」
「まもなく発射訓練を実施します。通常の野砲の後に試射致します」
「頼む。では、始めてくれ」

指揮官が短く返事を終えた後、砲の周りに配置している兵士達に号令をかけた。

「発射準備、始めっ!」

指揮官の号令と共に、砲の周りに配置された兵士達は発射準備を始めた。
兵士達は先端を鋭くしたような薬莢付き砲弾を野砲に装填し、遠く離れた標的旗に照準を合わせるようにクランクを回しながら砲身の角度を上げて行き、全砲が照準合わせ終えた。
そして…

「撃ち方、始めっ!」

発射号令と共に、野砲の砲身先から一斉に火が噴き上がり、轟音と共に弾を発射された。
あまりの音の大きさと衝撃に、予め予測していたカイ達三人を除いた全員が腰を抜かし、尻餅をついてしまった。


「な、何よこの…!?」

ミシェルが抗議をしようと立ち上がろうとした時に標的旗付近にて砲弾が着弾し、砲弾に内蔵された炸薬が爆発した衝撃で黒煙と土煙が混じった柱が空高く昇っていった…
30門による野砲の一斉射撃により、着弾地点の大地は抉れて変形してしまった…

「嘘…」
「こ、これが新しい大砲…なのか…?」

砲弾の威力に驚くミシェルとジュディであった。
しかも、ミシェル自身は魔法学科を卒業した身であり、爆裂魔法の威力に関しては把握していたので砲弾の爆発威力自体は瞬時に理解した。

砲弾一発分の爆発は中級の爆裂魔法程度の威力であった為、一対一の魔法使い同士であれば大した事ではなかったが…大砲一台がその威力かつ30台同時に一斉発射となれば話が変わる。
一台が一人分となれば、30人の魔法使いを同時に相手をせねばならず、況してや中級の爆裂魔法になれば長い詠唱が必要である為、詠唱のいらない大砲の方が勝り、その上魔法の結界を張ろうにも、あんな威力の爆発に耐えるにしても精々五発分が限界である。
耐え切れるとするなら、聖女の力もしくは勇者の力による加護のブーストがなければ30発の砲弾には耐え切れないだろう。
但し、あくまでも一回目の・・・・一斉射撃による話であるが…

「次弾装填、急げっ!続けて、連射訓練を開始するっ!!」

指揮官の言葉にミシェルは我に帰って再び大砲の方へと目を向け、驚愕し続けた。
空になって排出された薬莢を回収した兵士の後に、新しい弾薬を装填終えた大砲達は再び咆哮を上げて火を噴かせ、砲弾を打ち上げていった。
しかも、今度は空の薬莢が排出されたと同時に弾薬が素早く装填され、即座に発射された。




約10分後…
演習用の弾を撃ち尽くした30門の野砲は熱で赤く帯び、砲塔から煙を上げていた。
同時に、着弾地点である標的地は黒煙と土煙で舞い上がり、辺りを草一つの無い平地に変えてしまった…


「撃ち方、止めっ!…如何でしょうか?カイ様」
「うん、75mmの野砲としては悪くは無い…が、各砲の装填時間の誤差が生じている。引き続き統率出来る様に」
「はっ!次の演習の時は反映させます!」
「うん。では、次は150mm榴弾砲の稼動を」
「了解しました!直ちに準備いたします!!」

指揮官はカイに敬礼した後、榴弾砲の稼動をするように兵達に指揮を始めた。
一方、カイはミリーとティファ、そして自力で立ち上がったコレットと共に尻餅ついた令嬢達に手を差し伸べて起こした。

「大丈夫でしたか?」
「え、ええ…」

ユリアーナはあまりの砲撃音と砲弾の爆発による光景に顔を蒼くさせた…
ルルナはこの兵団のあまりにも高い戦闘力に言葉を詰まらせるばかり…
ジュディは予想以上の訓練光景に唖然とし続けた…
そして、ミシェルは…

「あんた…こんな行き過ぎた力を持って、何がしたいの…?」

伯爵程度にしては過剰すぎる戦力を持つ事に、思わずカイに問いかけていた。
ただ、カイはそんなミシェルの疑問に抵抗も無くニッコリと笑った後…

「勇者を倒す為だ」

その言葉の後に、カイの後ろで鎮座していた巨大な大砲は爆音と共に砲塔から火柱を噴かせた。





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