聖女候補に認定された幼馴染が泣きながら帰ってきたので戦争します。

名無シング

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承:不穏

16.壊れたモノは開花する

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侯爵令嬢達がキクルス家の屋敷に到着した夜…
夕食を終えたカイとレオンは家族内会議を行っていた。
勿論、カイの傍にはミリーとティファ、レオンの傍にはイライザが座りながらで…

「そうか。お前の結論はそう決めたんだな」
「はい。利用するものは利用しようと思います。無論、あの男みたいに彼女達を弄ぶような事は致しません、父上」
「それは分かっている。元々、お前が異性に対して奥手だった上に、アスモデの遊び人によってミリー以外の女には警戒するようになったのものな。ティファ嬢に到っては漸く傍に置くようになったぐらいには回復したみたいだが…」
「ただ、女を抱けと言われたらミリー以外の女性には震えが出ますけどね…先程のルルナみたいに握手をしたり、ティファみたい服越しでは触る事は出来ますが、それでもミリー以外の異性の素肌に触れるのは怖いのです」

現に、カイの隣にいるティファがカイの体に触れて入るものの手袋越しによるもので、これが素手で触ろうとするだけで鳥肌が立って動けなくなるほどのトラウマを抱えていた。
原因は勿論、ミリーの証言用に持ち帰った”あの時の悪夢”の光景によるものである…

継母であるイライザは幼い頃からの母親として認識していた事や、元から相思相愛であったミリーとならば素肌を触れても平気であるが、他の異性…特にあの婚約破棄成立に立ち会った元婚約者のクリスには内心嫌悪感に満ちていた事には否定してなかった。
その上、そんな魅了されて姦通した原因が自分の優柔不断さによる嫉妬心が影響した事も重なって、新しく来た女性に対して余計に奥手もしくは事務的態度でしか接する事しか出来なくなった。
最も、あの婚約破棄の成立の日の夜にあった、継母イライザが耐え切ったはずの魅了効果の後遺症でレオンに対して発情し続けていた事にも若干尾を引いていたのは間違いなかった。

「ところでイライザ母上、もう魅了発情に関しては落ち着かれましたか」
「ええ、おかげさまで…ごめんなさいね、カイ。あの時は不快にさせてしまって」
「いえ、母上があの男に魅了されなかった事に感謝してます。万が一母上が魅了されていたら、僕と父上はあの男と母上の交わる光景を見せられていたと思います」
「やめて…想像するだけでもゾッとするわ。あんな男に抱かれるくらいなら、ナイフで首を切った方がマシだわ…」

そう言いながら、イライザは愛しそうにお腹を撫でながらレオンに寄り添っていた。
あの時の余談ではあるが、あの夜の番によってイライザが妊娠した事が判明。
医師の診断ではもうすぐ二ヵ月半目になるらしく、そろそろ視察などの身体に負担のかかる業務からは休む事になっていた。

「ふふっ…あの男がふっかけたお蔭で、愛する旦那との新しい命が授かるなんて…何年ぶりに燃えたのかしらね」
「全く、私も歳なのだから大変だったよ…」

レオンはゲッソリとした顔をしながらも隣に居るイライザを抱き寄せて頭を撫でていた。
再婚同士とはいえ、元から仲が良かった上にアレのきっかけで夫婦の絆は更に強くなった。
カイはその事に静かに祝いながらも、自分もいずれ克服せねばと考えていた。

「羨ましいですね…」
「ああ。…すまない、ティファ。まだ、君に心が開けなくて…」
「構いませんわ…それに、恐れているのでしょう?万が一とはいえ、私達が再びあの男に魅了されないかという恐怖に」
「ああ、そうだよ。現場に居なかったとはいえ、あんな経験は二度と御免だ」
「ですが、その点はぬかりはありませんよ。恐らくは、ミリー様も私も、二度とあの男に魅了はされないと思います。彼女達の研究報告書がそれを物語ってますので」

侯爵令嬢達が来る前、以前ミリーとティファの二人と共に王都から脱出した令嬢二人…エーベルシュタイン伯爵の次女ベアトリス・エーベルシュタインとシェーンハウゼン伯爵の次女アレクシア・シェーンハウゼンはそれぞれ家を出た後に合流し、二人で聖女選定による被害を受けた下級貴族令嬢の実家や平民の女が居た村や小さな町に廻り、被害者とその家族から事細かに被害経験の情報を聞き続けて論文として纏めながら研究していた。

結果、以下の事が判明した。


■勇者セシル・アスモデの魅了洗脳は万能ではなく、魅了された者でも間の開ける時間が長くなればなるほど効果が薄れていき、最終的には解除される。
■但し、魅了洗脳されていた期間に行われていた悪習は残り、人格にも影響を与える。
■魅了されなかった者達の大半は、何らかの異性に対する性的嫌悪感を持つ者が多く、特に幼少期や思春期における家族間による異性関係のトラブルを抱えてるものには影響は少なかった。
■なお、魅了に対する精神耐性の貴金属の防御も可能であるが、肉欲の悪魔であるアスモデウスの加護の影響かは不明であるが、魅了に耐えた女性と魅了されなかった女性の一部にて発情の後遺症が含まれる事もあり、関係者との第二のトラブルが発生する事もある。場合によっては数ヶ月も引き起こす可能性も起こりえるので、経過観察は必要である。
■現在調査中であるが、勇者と魅了寵愛を受けた聖女に危害や不貞を働いた場合、加護の罰によりなんらかの後遺症が残る事がある。
判明しているだけで、友人達のティファの隻眼やアレクシアの足は魔法治療を試みても拒絶される傾向あり。他、不貞働いた平民側は顔面変形や不妊化の身体的症状も発現化する傾向が見られる。
著しい男性恐怖症発生もしくは悪化、対極的に発情狂いを見せる等の精神的症状も見受けられる。続けて経過観察する必要性あり。
■最後に、一度魅了洗脳が解けるもしくは一度も魅了洗脳されなかった者は二度とされない事も調査中に発覚、こちらも続けて経過観察する必要性あり。


この報告書を見た時、カイ達三人は深い溜息を付きながら女神教の前身である主神教に対して悪態をつくばかりであった。
神々や悪魔達は、信仰を集める為に自分達以外の地上に生きる者達を弄ぶシステムなど、どうして作ったんだと…
ただ、結論から言えば…彼等の加護は万能ではないという証明も出来上がった事に、カイ達は新たな可能性を見ていた。

「しかしまぁ、あれは一種の呪いではないのかと思えるな…」
「そうですね。まぁ、その辺は後の報告書が来るのを待ちましょう。それよりも…」
「ああ。そうだね…父上、この話を踏まえてお伝えしたい事が…」
「…言ってみろ」

レオンの許可を受けたカイは立ち上がり、父親の耳元に手を当てて伝えた。
その事を聞いたレオンは驚きを隠せなかったが、直ぐに冷静になってからカイに目を合わせた。

「良いのか?」
「はい。恐らくは、”既に見ている”と思いますので」
「…そうか。して、どうするのだ?」
「助けますよ。同時に、利用します」
「そうか…分かった。任せるよ。…本当に、お前は変わったな」
「大人になった…と言うべきですよ。もう、子どもみたいな純粋な気持ちでは、貴族が関わる政の世界に生き残れませんよ…。それでは、おやすみなさいませ。父上、母上」

カイはそう答えた後、ミリーとティファを引き連れて自室へと戻っていった。






深夜にて…

明かりが全部消されたキクルス家の屋敷に、一つの足跡が静かに響いていた…

その足音を出すじんぶつはカイの寝室にまで辿り着き、目の前で止まってから静かに扉を開いていった…

部屋の中ではカイが一人で・・・寝ており、静かに寝息をかいて眠っていた…

部屋に入ってきた影は音を立てずに寝ているカイの傍まで近付き、静かにカイの首を掴んで絞めようとした…

しかし、その時…

「動くな」

カイは寝たふりをやめてから一気に起き上がって振り払い、隠れていたミリーとティファの二人がかりで影を押さえた後、部屋の明かりを点けた。
その影こと、コレット・シャックスはカイに対して異常な目をしながら興奮していた。

「男…!若い男…!!キヒッ…キヒヒヒッ…!!」
「やはり…コレット嬢は魅了による発情後遺症を患っていたか…」

カイは彼女達が来る前に魅了洗脳されていないかを徹底的に調べていた。
結果は五人とも全員にあの男に魅了はされなかったものの、元々魔法や加護の耐性の少ないコレットは、アスモデウスの加護のろいに汚染されており、実家であるシャックス家でも男性の首を絞めながら寵愛を求めようとする発作を患い、何人かの若い男性使用人を襲って殺人未遂を起こしていた。
今回のキクルス家へ縁談として送られたのは、シャックス侯爵がキクルス家に対し厄介払いとして押しつけたもので、勘当どころか罪人として処刑されても構わんという扱いであった。
六女という序列の低さに加え、聖女の選定を受けた事による教育強制に、七大公爵同士の抗争による追放に加えて、勇者からの魅了汚染による姦通…
シャックス家内部でも特に目立った特出性のないまま普通の侯爵令嬢として育った彼女にとってはとても耐え難いもので、心が壊れて男への愛憎を持つ事にはなんら不思議でもない。
だが、そんな彼女をカイはあえて引き取ったのは同情などではなかった。

自分と同じく、壊された者だから…

幸せだった世界を全部崩され、後悔と失望しか残らなかった事に絶望して壊れた彼女だからこそ、壊れかけたカイにとって共感するものであった。
”ミリーさえも裏切っていたら”、間違いなく自分は彼女みたいになっていたんだ…と。

だからこそ、カイは彼女を自分達の世界に引き込む事にした。
勇者と聖女、それを生み出し狂わせる神と悪魔が欲しがる”信仰”その物に…

押さえられて暴れていたコレットであったが、徐々に体力が尽きてきたのか暴れるの止め、そして…泣き始めた。

「あ…わ、私…また…」

ボロボロと涙を流し始めたコレットはついに大きな声を上げて泣き出した。

「私は!私はまたやってしまったの!?一体どれだけ苦しめば良いの!!あとどれだけ苦しめばこの悪夢が終わるのよ!!」

コレットは喚きながら、カイのベッドにある掛け布団に顔を埋めながら泣き続けた。
そんなコレットを見て、カイはミリーとティファにコレットを押さえるのを止めて解放し、コレットの体に触れる事に恐れながらも彼女の頭を撫でた。

「えっ…?」
「失礼、コレット嬢。許してくれ…」

カイは戸惑いを見せるコレットを構わずに彼女の体を起こし、彼女の身体をギュッと抱きしめてから再び頭を撫でた。
突然の行為にコレットは混乱するばかりであったが、カイが身体を震わせながらあやしてる事に気付き、興奮していた体を沈静化させていった…
コレットがすすり泣く程度まで落ち着いたところで、カイはゆっくりと彼女から離れていき、ベッドに座らせる形で話し始めた。

「落ち着きましたか…?」
「…はい」
「最初にお聴きしますが…ここまでの出来事は覚えてますか?」
「はい…」

コレットはこれまでの事を興奮して取り乱さない様にゆっくりとカイ達に話していった。
内容はカイ達が事前に調べていた通りに、特に才能を持っていないただの令嬢として育っていた彼女が聖女に選定されてからは実家からそのまま教会に入れられ、才能を持つ他の侯爵令嬢達に遅れる中で必死に聖女教育を受けていた。
しかし、ベルフェ家とセィタン家を除く七大公爵の派閥によって王都から追放処分を受けたその日、セシル・アスモデが自分達の派閥に属する侯爵令嬢達の前に現れ、例の魅了の力を浴びてしまった。
ただ、その時の侯爵令嬢全員は既に魅了対策の貴金属をつけていた為に魅了による洗脳はされなかったものの、その後にアスモデ家の騎士達に拘束されて教会内部の部屋に監禁された後、その時の令嬢全員がセシルに乱暴されてしまった。
余りにも酷い仕打ちに乱暴されて捨てられた令嬢の半分はその場で精神を壊れてしまったが、コレットはユリアーナ達四人と同じく辛うじて壊れずに済んだ。
いや、逆に壊れずに済んだことがその後の地獄であった。
その後は追放される令嬢全員を装甲馬車に鮨詰め状態で元の領地に移送され、コレットも同じくしてシャックス領に戻っていったが…そこで当主であるシャックス侯爵から親子関係を完全に否定されてしまった。

”妾腹から生まれた私生児ごときが、聖女になるどころか政略道具にもならん傷物になりおって!貴様のような役立たずはいらん!!”

その言葉を受けた時にコレットは完全に壊れてしまい、現実から逃避しながら、セシルに慰み者にされてしまった事を忘れる為に実家の若い男の使用人を襲う様になってしまった。
無論、その事も知ったシャックス侯爵はコレットを収容所とされる”分水領”と呼ばれる北の修道院に幽閉しようと画作していた所、ブエル家の傷物を向かい入れたキクルス家の存在に気付き、利権目的で傷物で壊れ物であるコレットを送る様に主である公爵のセィタン家に念入りに願い出たとの事。
その後は、こちらに移送する前に「二度と戻ってくるな。戻れば貴様の命はない」と絶縁宣言を受けたのを最後に意識を現実逃避しながら朦朧としていた。

そして、例の発作でカイに手を掛けそうになって拘束された今、正気に戻って泣き喚いた事を全部カイに話したのであった…


「本当にごめんなさい…」
「大丈夫…もう大丈夫だから…」
「ですが…私は貴方を犯し、殺そうとしました…罰は受ける覚悟はあります」

正気に戻ってもなお罰を望むコレットに、カイは既に決めていた。

彼女も、自分達と同じ復讐者になることを…

「コレット嬢。いや、コレット…君は、悔しくないか?」
「…えっ?」
「訳も分からずに聖女と言う場違いの役職に強制的に選ばれ、権力抗争によって役職を降ろされた挙句に勇者という名の暴漢に女として犯され、挙句の果てに実の父親に愛情もなしに容赦なく捨てられた…こんな理不尽な世界の理や世界を作った者達に恨みや憎しみはないかね?」

そんなカイの言葉に、コレットは静かに身体を震わせ…声を発した。

「憎い…です…全てが憎い…恨みたいです…こんな…努力しても報われない世界など…憎いです…!!」
「…ならば、僕達と歩む気はないかね?ここに居る二人は僕に賛同し、僕の兄上を含めた協力者も賛同してくれた…勇者と言う神々と悪魔が作る偶像に頼らない、自分達の力で作る新しい世界を…見る気はないかね?」

そんなカイの甘い言葉に、コレットは今一度我に返りながらカイを見つめて言葉を発した。

「出来るの…ですか?私にそんな事を…?」
「出来るさ。現に、君は一度壊れながらも正気に戻り、僕達の前に本音を吐いた…それだけの熱意があれば、何も問題は無いよ。能力などは関係ない、諦めない心と復讐心があれば何時か必ず叶う…」
「良いの…ですか?」
「ああ。こんな屑みたいな勧誘の仕方で本当に申し訳ない…引き受けてくれるかね?」

そんなカイの言葉に、コレットは瞳の奥底にどす黒い炎を宿したかのような目でカイを見つめ、答えを出した。

「ええ…貴方が必要と有れば…こんな女でもお使いくださいませ…カイ様」
「…ありがとう。これからも君も同志だ…」
「はい…それと…私からお願いがございます…私を…ただの下女として抱いてくださいませ…」

コレットは着ていた肌着を脱ぎ、カイを抱きしめようとしたが…カイはそれを拒否し、はだけたコレットの体をシーツで包んで隠した。

「それだけはまだ駄目だ…今の僕では君を抱く事は出来ない…君だけじゃない。ティファは勿論、ユリアーナ達四人も抱く事が出来ないんだ…」
「なら、そこの男装している女性なら抱けるのですね…?」
「…”ミハイル”、いや、ミリーが分かるのか?」
「はい…元より、暗闇でも体から出る気配の色で分かります…男の人なら青…女の人なら赤という感じに…先程まではカイ様の青色しか見えなかったのですが、冷静になった今ではハッキリと男女の色が見えるのです…」

コレットの意外な特性に気付いたカイはミリーとティファの二人に目を合わせ、互いに頷いてから話を続けた。

「…もしかすると、コレットは掘り出し物だったかもしれない」
「そうだね、カイ…」
「もしかして…貴方達は…」
「お互い、幼馴染で一番大事な人だ…だから、彼女のみに対して女性への恐怖が出ないんだ…」
「ああ、なるほど…そうなれば抱けない理由も分かります…だけど、私の貴方への…」
「すまない…女性の君に素肌を触れるのだって、震えるんだ…」
「分かりました…なら、私も”男”になれば良いんですね…?」

コレットのあまりにも突発的な発言にカイ達は一瞬戸惑ったが、コレットは構わず続けた。

「見ての通り、私の体はそこまで女性的ではありませんし、そこのミリー様?みたいに男装をすればカイ様の負担が減ると思われます」
「しかし…」
「大丈夫です。元々、女としては貧相な体と罵られてましたので…貴方様の負担にならないならば、この女の身を捨てる事だって出来ます…」

コレットの頑な意思に、カイは思わずミリーに意見を求めていた。

「…カイ。私の事は気にしなくて良いよ」
「しかし、ミリー。また君を傷つける事になってしまう」
「私だけの問題じゃないわ。この人も私と同じ…帰る場所が無く、女として否定された人なんだ…コレット様、貴方のお慕い人は居ましたか?」
「…いいえ。誰も居りません」
「そう…わかりました。カイ、お願い」
「そこまで言うなら…コレット、それでいいかね?」
「はい…貴方様方々に私を拾ってくださるならば…」
「ああ。改めて宜しく…ティファ、彼女をお願い」
「はい。コレット様の事はお任せください」

コレットをティファに預け、彼女達二人がカイの部屋から退出した後…カイはドッと疲れを出したかの様にベッドに倒れ、そのカイの傍にミリーが寄添った。

「一か八かの賭けだったけど…彼女をこちら側に入れて正解だったな」
「ええ。…本当、カイもどんどん黒くなってきてるわね」
「…政に関わる為政者が善人であり続けるわけには行かないからね。政を知らん人間からすれば、僕が屑なのは自覚しているよ」

あの婚約破棄から二ヶ月過ぎた現在、カイは以前の自分とは比べ物にならないほど考えを黒くさせていた。
国や世界を変えるためならば、まずは貴族社会の闇に亀裂を入れる…
利用するものは利用し、切り捨てるものは切り捨てる…

今回のコレットの異常行動を”わざと”泳がした上で正気になった彼女を勧誘した事に関しても、予め精神異常の情報を仕入れておいた上でカイ自ら暴行を受ける事でシャックス侯爵に対する口実を作る事も出来、彼女自身が家族から疎まれた挙句に死んでもいいという切り捨てに入ってるのも知った上で、彼女を諭しながら自分達の仲間に引き入れる事にも成功した。
ただ、誤算を上げるならばコレット自身の能力が諜報員か暗殺者向けの探知能力を持っていたのと、彼女がミリーと同じく男装をしてまでカイの傍に居たいという気持ちであった。

「…これもまた、僕に対する業なのだろうか」
「それがカイの業なら、私の業にもなるわ…。カイ、自分をあまり責めないで」
「すまない、ミリー…そして、ありがとう」
「別にいいわ…それよりも、次はどうするの?」

ミリーの問いかけに、カイは次の手を考えた。

「シャックス侯に関しては、コレットの髪を添えて手紙と一緒に送ろう。殺人未遂を起こしたのでこちらで処分したと内容で送りつければ、いくら向こうが僕らよりも上である侯爵でも罪人を作ったと言う事になれば青ざめるだろうし、これ以上する事は無い。ただ、次の問題はあの四人だが…彼女達の”元婚約者達”に宛てた手紙が届いてるだろうし、それで様子を見るか…」
「本当、カイは変わったね…」
「少なくとも、策略で僕達の家を乗っ取ろうと考えるならば手段は選ばないよ。まだこのキクルスには頑張って貰わないと…この貴族のしがらみが終わったら、次の段階に移るよ」
「ええ。オイゲン様達や、ルーデル閣下もそれぞれで動いてらっしゃる…あとは、外部との協力ね」
「ああ。その辺も抜かりは無い…近日中に隣国の視察に行く事も決まってるし、その時にでも新しい策を考えよう…」
「そうね…って、カイ?」

ミリーがカイに呼びかけるも、カイは緊張が解けて気を緩んだ所で眠りについてしまった。
そんなカイの姿にミリーは静かに笑った後、カイの身体を動かして寝かせた後、ミリーもまたカイと添い寝する形で寄添って眠りについた…




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