聖女候補に認定された幼馴染が泣きながら帰ってきたので戦争します。

名無シング

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転:争乱

38.目覚め

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―ここは…どこ…―

意識をはっきりとさせたミリーは辺りを見回してみたが、何もない黒い空間が広がっているだけであった。
確か、自分が致命傷を負ったカイを無意識で回復させたあと、訳の分からない言葉と共に銃を握って、あのゲテモノ勇者を遠くに吹き飛ばしたまでは覚えていた。
だが、そこから先の記憶が全く思い出せず、今がどういう状況なのかもはっきりと思い出せなかった。
特に、自分がどんな姿になったのかも全く分からずにいた…


―全く、この寝坊助は何時になったらしゃきっとするんだ―

―…!?誰なの!?―

ミリーは声のする方向に視線を向けると、強大な光の玉が浮かび上がっていた。
それと同時に、真っ暗であった世界が星々が見える夜空の様に広がっていた。

―私が誰なのか…それは答えられないが…一つ例えるなら、私はあんた。あんたは私だ―

―何よそれ、全然答えになってないわ―

―今はそれで良いんだよ。この無意識と意識の狭間である阿頼耶識に常識なんてないからな―

―意味分からない。阿頼耶識って何よ?―

―あー…そこからか。まぁ、馬鹿の一つ覚えで言うなら、心の奥底の世界だと思って良いぞ。正直、馬鹿の私でもそんな程度の世界だと思ってるし―

―本当に何よそれ…あなたって不思議な人ね―

―うっせ。こちとら少し気にしてるんだよ。それよりも、あんた…自分の指名はこんな物じゃないって、理解してるよな?―

光の玉の問いにミリーは少し悩んでいたが、何となく答えを出した。

―覚えてる限りでは、あの馬鹿勇者を倒したら終わりとは思ってないわ―

―それでいい。なんだ、分かってるじゃないか―

―やっぱりね…ねぇ、教えてくれない?私…いいえ、私とカイの本当の敵は誰なの?―

―そいつは規律に引っかかるから言えないな。まぁ、簡単な答で言うなら…お前達の本当の敵はあの勇者でもなければ魔王でもない。正真正銘、神と戦わなければならない。そして、その神を倒しても、お前達の戦いは終わらない…それが、あれだ―

光の玉が示した方向にミリーは顔を向けると、そこには異様な光景が広がっていた…



黒い世界が3割とするなら、残りの7割は異形の軍勢が空間を移動し、星々を破壊しながら進み続けていた…

一方の別の方角からは異様な金属質の機械軍団が迫っており、機械人形のおいてはオーガの様な強面の像に見える異形さを感じた。

―我ら、仏の同志80億を以て奴らを討ち滅ぼす!!全軍、奴ら虚無に立ち向かえ!!―

仏と呼ばれた機械軍団は数多の光の熱線を放ちながら突撃し、虚無と呼ばれる異形の軍勢もまた光の熱線を放ちながら仏の軍団を破壊していった…



―何よ、これ…―

―あー…これを例えるなら、最後の聖戦って奴か。お前達、女神の信仰する世界の言葉で言うなら…終末の戦争・ハルマゲドンといったかな―

―終末の戦争って…―

―言っておくが、これは一つの未来の結末にすぎない。お前達の進む未来の中にある一つの結末がこれなだけだ。必ずしもこういう世界になるわけではないからな―


光の玉の言葉に、ミリーは困惑するしかなかった。
今、見せつけられてる終末戦争が未来の結末の一つと言われても、何のことか分からずにいた。
そんなミリーの様子に光の玉は再度呆れながらも続けた。


―まぁ、そういう反応するのは仕方ないが…お前もいずれは私と同じく導く者になるんだから、そこは察しておけ―

―…本当に、意味分からないわ。まるで私達の世界がいくつもあると言いたいの?―

―ご名答だ。実際に、お前達以外の世界はいくつもある。お前達の世界にもあっただろ?異界からやってきた奴らが技術を撒いて、それをお前達の技術者達が解析模倣して、戦争に持ち込んだりしてるの。そんな感じでお前達以上に技術を発展させた世界もあれば、お前達以下の発展していない世界もある。この三千世界の宇宙においては、平行世界など沢山あってもおかしくないんだよ―

―…同時に、私達の世界以上の不幸もあって、選択肢によっては破滅の未来が待っている。それも、今移っている異形の連中みたいなどうあがいても滅亡しかない戦争が待ち受けるみたいに―

―正解だ。…ちっ、介入者がちょっかいかけてきたか。これが最後になるかもしれないが、覚えておけ。お前の本当の進む道は、氷で閉ざされた大地である北にある。そこが全ての答えで、終点の始まりだ。間違えるなよ―

―分かった。間違えずに進むわ―

―よし、これでここでの私の役目は終わった。あとは目覚めたら整理してくれ。ああそれと…―

―何よ?―

―お前の相方、絶対に離すなよ。離したら、今度こそ永遠の別れになる。絶対にだぞ―


その最後の言葉と共に、ミリーは急速に引っ張られる感触に見舞われ、声を上げる前に意識が真っ暗になった。

後に残った光の玉もまた、別の方角から飛来する黒い光の玉が過ぎ去るのを見たと同時に、次元をずらすかの様に静かに消えていった…




「ハッ!?こ、ここは…」
「ミリー様!目覚められたのですね…」

ミリーが目覚めて体を起こした時、ベッドの隣にはティファが座っていて、起きあがったミリーの体を支えていた。

「ティファ様…ご無事で。それと、カイは…」
「ミリー様、落ち着いて聞いてください…あの勇者との攻防戦から一週間も経過しております」
「一週間…っ!?それなら尚更カイはどうなってるの!?」
「カイ様は無事に回復されました。ミリー様のおかげで…」
「…ごめんなさい。カイが撃たれた後から記憶が混在していてよく覚えてない」

ミリーの記憶混濁の状態に、ティファは困惑しながらどう答えたものか考えていた。
と、そこに療養室の扉からノックする音が聞こえたのでティファが「どうぞ」の言葉と共に、カイがコレットと共に入ってきた。

「ミリー、無事に回復したな」
「カイ!無事だったんだね…っ!?」

ミリーはベッドから降りて抱きつこうかと思った瞬間、カイから放たれてる気配が異質な物に感じて硬直してしまった。
そして、つい聞いてしまった…

「カイ…あなた、本当にカイなの…」
「…ああ。やっぱり、君は気づいたか。”私”の事に」
「えっ…いつもの”僕”は…」
「…何もかも思い出してしまったのだよ、ミリー。いや…”ミリアリス”」

カイがミリアリスと言った瞬間、ミリーの脳内から一気に情報が流れ始めた。
自分が気絶している間、何をしたのかを…


・聖女とは違う訳の分からない力に目覚めた後、カイを治療した後に勇者を撃った…

・意識が混濁している合間、体の構造が異質な物に変わってしまったこと…

・そして、意識が混濁している間に介入者…大罪の悪魔の一人であるベルフェゴールミリアリス本体からメッセンジャーとして喋っていた事を…


「あっ…あっ…」

あまりにも押し寄せてくる記憶に、頭が割れそうな痛みと共に混同してきたミリーは涙が止まらず震えるしかなかった。
だが、ここで意識を手放せば、目の前にいる愛する男がいなくなる事を恐れたもあって必死に耐えていた。
そんなミリーの様子にカイは冷徹な目で見ていたが、何かを期待するような視線もしていた。

そして、記憶の統合が終えたミリーは涙を流し続けながら、口を開いた。

「全部…思い出した…私は…あのミリアリスの複製…」
「…良かった。これで壊れる程度であったなら、私は君をおいて北に向かう予定だった」
「やはり、本体に会うつもりだったのね…その後は…!」
「安心してくれ、ミリー。今の君なら置いていくつもりはない。…前世ベルとの決着をつけないと」

カイのその言葉に、ミリーは掌に爪を食い込むほど力で握りしめながら、覚悟を決めていた。

もう一つの意識…ミリーという自我が見ていた夢の記憶と同じ答えならば、北に答えがあると。

ミリアリスの記憶と合わせるならば、本体達が作り上げた戦略人形ドールズ達の功罪と虚無と呼ばれた異形達がそこにいるのだと…
そして、強大な神の下僕である二大の悪魔がいることも…

「…いいわ。だけど、記憶が融合した貴方なら分かるでしょ。私は私で”カイ”の側にいるって…」
「分かってる。前みたいに猿モドキとか言って人間を嫌っている訳にも行かない。それも私の咎の一つだからだ」
「良かった…まだカイのままでいるつもりね」
「当たり前だ。それに…」
「それに…」
「奴…もしくは奴を引き継いだ者も北に向かうだろうな…」

カイの言葉に、奴…勇者であったセシル・アスモデを思い出した。
あれだけの攻撃を受け、半分異形化した奴もまた、動き出すのだろうと…



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