迷子の僕の異世界生活

クローナ

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危険な魔法

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  クラウスの話  王都編 ⑮
 


「あれ?私のは治らないんだな───と、なんだ外すと治癒も止まってしまうのか。悪かった返すよ。」

動かない左腕に再びトウヤの飾り紐が戻ると瞬く間に痛みがひいていく。口内に溜まった血を吐き出し、痛みも薄れた所で大きく息を吸い込めば全身に血が巡るのが分かった。
もう欠片も痛みを感じない。再び深呼吸して、視界を塞いでいた血を腕で拭えばユリウスともうひとりの近衛騎士、第一皇子が俺を見下ろしていた。

「……あの、起きます。」

あまりにも間近にしゃがんだままの第一皇子に声を掛け上体を起こした。

「肋が何本かイッてただろう、それに左肩、左脚。───頭の傷はどこにあったのも分からないな。」

ユリウスが俺の怪我をしていた部分を確認していく。おかげで自分がどんな状態だったか知ることになったが同時に入ったと思った渾身の一撃はユリウスの胸の部分を布一枚切り裂いただけだったことがわかった。もう少し渡り合えるかと考えていただけに悔しかった。

「そう気を落とすな、私だって加減できなかったんだ。随分と強くなったな。」

「───ありがとうございます。」

実力差があるのは承知の上とはいえ慰めの言葉がかえって胸に痛い。

「なんだ、弟に頼られたって喜んでた割には他人行儀だな。もっと素直に悔しがれユリウス。───クラウス、兄の言葉じゃ納得できないようだな。感心したぞ、ユリウス相手にこれだけやるとはな。それに近衛騎士の騎士服にはお前達の騎士服より強靭な防御魔法が掛けてある。それに傷を入れたんだ充分誇っていいぞ。今度私ともやろうな。」

「はい。──ありがとうございます。アルフレッド様。」

俺の横にしゃがんだまま放たれた第一皇子の言葉。まさかそんな言葉を掛けてもらえるとも思ってなくて目頭が熱くなる。

「それで、手合わせは終わりだが話というのはその魔道具の事か?随分高位の治癒魔法が組み込まれているようだ、もう一度みせろ。」

再び飾り紐に指を掛けられ不敬だとわかってはいるけれど慌てて拳を握った。不可抗力とは言えさっきのように簡単にこの腕から奪われるわけにはいかなかった。

「せっかく誉めてやったのに抵抗するのか?無理やり奪ってもいいんだぞ?」

「この飾り紐は切れれば効果を失います。できれば順に説明をさせて下さい。」

「そうか、でも私は切るのはお前の腕の方でも構わないけどな。」

飾り紐に指を掛けたまま口元だけ笑うその人は現フランディール最強だと言われている。それは間違いなくこの世界で最強ということだ。その人がそうだと言ったら逆らうことなんて出来ない。でもここで引くわけにはいかない。上手く立ち回らなければまたトウヤを泣かせてしまうのだから。

だがこの場で皇子の雰囲気に圧倒されていたのは俺だけだったのかも知れない。

「アルフレッド様、いつまでそうして私の﹅﹅弟で遊んでいらっしゃるのですか?クラウスも大丈夫なら立ちなさい、話すのなら場所を移しましょう。」

少し乱暴にユリウスに腕を掴まれ立たされた。

「やれやれ、お前の兄は嫉妬深くて敵わんな。別にいいだろうはとこ﹅﹅﹅なんだから。なぁクラウス?」

そんな事言われたってなんと返事をしたらいいのかわからない。希薄となった血脈も兄の友人として遊んで貰っていた頃とも年齢や立場が大きく違ってしまったのだから。

案内されるまま後に続く。闘技場の奥の扉をくぐりしばらく歩くと立派な装飾の扉の前に出た。その前には城の衛兵も立っていて第一王子の顔を見ると扉を開けた。

城内だ。

そんなところへ案内されるとも思っていなかった。トウヤのおかげで傷は治っているとは言っても血で汚れてしまった状態でその先へ入っていいものなのかと迷ってしまった。

足を止めた俺に後ろから付いて来ていた近衛騎士が気にするなと声を掛けてくれたので戸惑いながらも扉の先へ入れば血で固まっていた髪が解けた。
どうやら浄化魔法がかかっているようで頭部からの出血で汚れていた訓練服もすっかり綺麗になっていた。
そのまま人の気配の少ない廊下をしばらく歩いて通された一室は近衛騎士に使用を許された応接室だそうで部屋の中には俺と第一皇子とユリウスだけになった。

第一皇子の座る向かい側に促され腰を掛けるけれどユリウスは近衛騎士として皇子の後ろに立った。

「さあ、3人きりだ。何から話してくれるんだ?」

組んだ脚に肘を付いた第一皇子が口火を切る。
交渉相手が兄から本命の第一皇子に替わったのは闘技場に姿があった時に予想していた。ユリウスから伝えて貰いたいと思っていた事を直接伝える事が出来るのだから臆することは許されない。

左腕にあるトウヤの色の飾り紐を撫で勇気を分けてもらった。

「この飾り紐を作成した者は類稀な高位の治癒魔法を使うことができます。私はその者を保護して頂きたいと考えております。」






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