迷子の僕の異世界生活

クローナ

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第2部 『華胥の国の願い姫』

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気持ちもすっかり整った俺はクラウスと一緒に洗い上がった子供達の服を洗濯物を片付けてから台所を覗くとハンナさんが夕食の準備を始める所だった。

「手伝います。」

「あらトウヤ様、夕食までお休みになってくださればよろしいのに。」

「いえ充分休ませて頂きました。」

「そうですか?ふふ、確かにお顔の色はよくなりましたね。ではこちらは私ひとりで間に合いますのでお子様達の方をお願いできますか?」

「はい。」

やんわりと追い出された廊下でハンナさんに言われたことをクラウスに聞いてみた。

「確かに元気があるようには見えなかったな。気付いたのは職業柄相手の機微に聡いのもあるだろう。」

そっか、自分では普通にしてたつもりなのに気づかれちゃうなんて最近上手くいかないな。でもハンナさんはあのリシュリューさんちの人だから余計に鋭いのかも知れない。

「わかりやすいって事はそれだけ相手に気を許してるって事だ。」

クラウスが優しい顔で頭をくしゃりと撫でて、それは悪いことではないんだと教えてくれているみたいだ。

「そっか。」

だからクラウスはすぐに気付いちゃうのかな。

信頼する人達の前で自分の感情が隠せない代わりに人を頼らず生きようとしていた頃の気持ちも忘れてしまった事に気づけばなんだか心がふわふわする。
足を踏み入れたプレイルームで子供達の歓迎を受ければそのふわふわしたのはもっと大きくなった。

ロイとライに両手を引かれマットレスに腰を掛けると机でサーシャと絵を描いていたディノがトコトコと近寄ってきた。

「とうやちゃいろいのもうおしまい?」

「うん、茶色いほうが良かった?」

お守りを左腕に戻して今はすっかり地味な黒色に戻った俺の膝によじ登るとディノは内緒話をするみたいに耳元で囁いた。

「あのねぇでぃのはこっちのがすき。」

そう言って俺の頰にキスをするとへにゃりと蕩けた顔で笑ってそれからぎゅうっと抱きついてきた。
これは殺し文句と言うやつだ。

「ふふ、ありがとう。」

「ロイもすき。」

「ライも。」

お返しにディノのほっぺにキスしたら双子もマットレスに登って可愛いほっぺを差し出してきた。
そしてサーシャも描きあげたばかりの自信作を持って近寄ってきた。

「みてみてじょうずにかけたよ。」

それはお揃いの服を着たみんなと色とりどりの綿菓子を食べてるところ、その真ん中は黒髪の俺だった。

「本当だ、とっても上手に描けたね。」

「へへ~。」

うちの子達はどの子もみんな最高に可愛くて最高に優しい。

差し出されたほっぺにちゃっかりちゅうをしてついでにくるくると空中に花マルを描くとサーシャは誇らしげににこぉって笑って力作の展示をクラウスにせがんだ。だって誰よりも高い場所に貼ることが出来るからね。

だけどその位置は天上付近から徐々に降下して行く。

「もうちょっと、ううんやっぱりもうちょっとしたがいい。」

どうやら一番上では眺めるのに首が辛い様で結局はすでに展示されたお絵かきギャラリー付近に追加された。

「あれ、これも描いたの?」

「うん!」

サーシャは絵を描くのが好きでしかも年齢の割に上手だ、その新しい絵は赤い騎士服に紺色の髪のセオが大きな焦げ茶の袋を引きずっている……いや、袋の入り口のオレンジのチョンチョンは模様かと思ったけどこれもしかしてロウかな?

「ほぅこれは素晴らしい作品だね。」

「ノートンさん!」

「セオを描いたのかい?」

「うん、あのねセオすごくカッコよかったの!」

こうしてこうやって!とロウを取り押さえたシーンを子供達が身振り手振りで再現をするのをノートンさんはにこにこして見ていたけれど不意にくるりとこちらを向いた。

「魔法を無効化したんだね、薄茶の瞳も似合ってたけどやっぱり今の方がトウヤ君らしいよ。」

「ありがとうございます。」

子供達に向けたのと同じ笑顔のまま黒に戻ったのを褒められて嬉しいけれどやっぱり少し複雑だ。
黒髪を探すロウが来た時ノートンさんはどう思ったんだろう、俺はクラウスがちゃんと教えてくれたからもう怖いことはないと思えるけれどノートンさんもあの時の俺みたいに危険だと思ったのならやっぱり迷惑に思うんじゃないだろうか。

「あのっ……あの時はお騒がせしてすみませんでした。」

答えを聞くのは怖いけれどやっぱり今しかないと思った。

「いやいやトウヤ君こそ驚いたろう?でもあれは駄目だね、この先が思いやられるよ。」

困った顔で言われたら「ああそうか」と受け入れるしかない。

「心配なのはセオの事だよトウヤ君。困った子だ、そんな顔をしてまた自分が悪いと誤解してるのかい?大丈夫だと何度も言ってるのにキミはうちの子の中で一番聞き分けが悪いね。」

直前にうなだれてしまった頭をぽんぽんとされて首を持ち上げたらノートンさんの金色の瞳が眼鏡の奥で笑っていた。

困った子だなんて。

「えっと、その……セオさんですか?」

それとも俺が?

「ああそうだよルシウス君の鈴の反応で冒険者の彼に悪意がないのはわかってたのに突然掴みかかったりしてあの騒ぎだ。昔からあの子は時々妙な所でそそっかしいんだ、どうだろうクラウス君セオはあの調子で赤の騎士としてやっていけるだろうか。」

「大切な人を護る為に即断即決は必要な資質です、それが間違いであっても二の足を踏んで後悔するより遥かにいい。セオなら経験を積めば必ず頼もしい騎士になります。」

「ふふ、随分嬉しいことを言ってくれるね。」

クラウスが真面目な顔で話す褒め言葉にノートンさんが今日一番嬉しそうに笑うのを見たらなんだか俺も嬉しくなってしまった。

「あ、そう言えば夕飯が準備出来たと伝えに来たんだった、食べてまた遊ぼうか。」

「「「は~い!」」」

いつだっていい子達だけど遊ぶためとなったら一段と聞き分けが良くなる、簡単に片付けを済ますとみんなで食堂へ向かった。

「ねえ俺って聞き分けが悪い?」

「ああそうだな、しかも『うちの子の中で一番困った子』らしいな、俺も同感だ。」

「えへへっ。」

「褒められてないぞ?」

「知ってるよ。ふふ、ごめんねクラウス二人暮しはやっぱりもう少し待っててね。」

「知ってる。」

クスクスと笑ってるクラウスの声が呆れてるのはわかってるけれどみんなの後ろを歩く俺の顔はしばらくゆるんだままだった。








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