Desperado~エピローグから始まる異世界放浪紀

ダメ人間共同体

文字の大きさ
21 / 38

Take the devil 6

しおりを挟む

「パパ・・・・・」

ライザは与えられた部屋のベッドに横たわり窓から外を眺めた。
が、見えるのは土で出来た壁だけだった。
この部屋はかつて男の妹が使っていた部屋で暖色で統一され、縫いぐるみなどを初め女の子らしいファンシーグッズが多数置いてあった。
ライザにとってすべてが珍しい物だった。が・・・・
それを一つ一つ確かめる気にはなれなかった。
そして、天井を見ながらヘルザイムとの思い出が思い出される。
ライザの母はヘルザイムと同じ悪魔族だと聞いた。
ライザを産んだとき母は亡くなったそうだ。
甘やかしに甘やかすことしか出来なかったがヘルザイムは男で一つでライザを育てた。
我が侭ではあるが母に似たのか周りの者を労わる気持ちに溢れ、優しく思いやりがある子だった。
お付きの魔族たちからも愛され大切にされていた。

「パパもいない・・・・・周りの人たちはどうなったのかな」

とポツリと呟いた。

「眠れない」

体を起こしベッドから降りドアノブを握り回すと扉が開いた。

「鍵が掛かってない・・・・閉じ込める気は無いのかしら」

廊下を出ると隣の部屋から

「グーピーーーー!! グーピーーーーー!!」

とイビキが聞こえてくる。

「うるさいわね! 下品!!」

階段を降り一階へ向かうとリビングから話し声が聞こえてくる。
太った男と痩せた男が談笑しながら見たことの無い酒を飲んでいた。
食事のときにあの男が紹介してくれた悪魔だった。
普段は人間の格好をしているが、あの人間曰く

「二人ともヘルザイムより強いぞ!」

ということらしいがパパより強いなんて有り得ない。
魔族界でも歴史上最強の強さを誇るパパより強いなんて有り得ない!
そんな強い魔族が弱い人間なんかに付き従うわけが無い。
痩せた男が気がつくと

「ヘルザイムの娘、どうした?」

それに続き太った男が

「眠れねーのか? こっちへ来い! ココアでも炒れてやるぜ!」

と言うと太った男は立ち上がりキッチンへ行った。

「ここに座って待っていろ」

痩せた男・・・確かガーリがテーブルを指しながら言う。
テーブルには椅子が4脚ありその一つを引いて座る。
テーブルの上には色々な見たことのないオードブルらしきものが多数、並んでいる。

「お前も喰え! アニキが作ったものだから格別だぞ」

「『お前』じゃない。ライザ! ライザと呼べ!」

「おおそうか、ライザ、食え喰え! 見たことのない珍しい料理ばかりだろう! アニキの料理を喰えるときに食っておいたほうがいいぞ!」

確かにどれも見たことのない料理ばかりだった。

「俺たちは色々な世界を巡っているから、ライザの知らない料理だらけだと思うぞ」

ガーリが小皿に色々取って目の前に置いてくれる。
食べようと思うがフォークが無い。
あるのは2本の細い棒だけだった。
あの男とこの男たちは器用に2本の棒を使って挟んでいたが私にはそんな真似は出来ない。
それに気がついたガーリは

「おい、フォークを寄こせ!」

太った男に言うと太った男は背中を向けながら右手首だけでピュッ!という感じでフォークをガーリに向け投げる。
それをいつものことという表情でガーリは受けると私の前に置いた。
少し水分を含んだピンク色の柔らかい物をフォークで刺し口の中に入れた。

(魚類?)

口の中に燻された風味が広がる。
肉質はどこまでも柔らかく噛むごとにまろやかな味と燻された風味が広がる。

「それはスモーク・リバイアサンだ」

え!リバイアサンって海の支配者と言われる巨大な魚の魔物!

「こうやって、ドリアードの実の酢漬けを中に入れて喰うと旨いぞ!」

というと種を入れた後、2本の棒で綺麗にスモーク・リバイアサンを丸めて小皿に取り分けてくれた。
それを口の中に入れるとさっきの味にすっぱさと辛味が加わりより一層複雑な味になる。

「おいしい」

思わず口に手を当てて言ってしまった。
さぞマヌケな顔をしていたことだろう。

「だろ!?」

ガーリがしたり顔をする。

「お前たちはリバイアサンをどうやって手に入れたのだ?」

「どうやてって、狩ったにきまってるだろ。
 色々な世界を回ってもリバイアサンなんて、簡単に売っているわけないだろ!」

「このリバイアサンは海にいる巨大な化け物だろ!」

「お前は何を言っているんだ! 小さかったり、陸にいればリバイアサンとは言わないだろ」

「お前たちは、海にいる巨大なリバイアサンを狩ったのか?」

「そうだが、まぁ正確に言えばアニキ一人でほぼすべてのリバイアサンを狩ったけどな」

「そうそう、俺とガーリじゃ水中は分が悪いからな。 
 あのときは100匹くらい狩ったんじゃないか?」

デブーがココアを持って戻ってくると私の前にそっと置いてくれた。

「100匹もいる世界があるのか?」

「なんつったかな? アクリー? アークなんとか」

「アクアリーだ。人魚達からの依頼だ」

「そうそう、一面、水の世界でな。俺たちは水中戦は得意じゃないから大変だったぜ!
 空からアニキの援護していた方が多かったけどな」

「一応、俺たちも単独で数匹退治したけどな」

「あの男、そんなに強いの?」

「強いと言えば強いのかもしれないなが・・・」

ガーリが答えると

「アニキの強さって殴る蹴るとかの強さじゃないからな、判断が難しい。
 が、死ぬことは無いから・・・・・最終的には勝つというのが正解かもな。
 死ななければ何度もリベンジ出きるだろ。
 最強の剣士でも数千回戦っていれば疲れるだろ。
 最高の魔道師でも何れはMPが尽きるだろ。
 そのときを狙ってグサッと!」

「まぁ~物ぐさのアニキのことだから、その前に即死魔法・デスクリムゾンを使うだろうが」

「デスクリムゾンって竜騎士がいきなり倒れた魔法?」

「なんだ、ライザは見たのか」

「デスクリムゾンって言ったら竜騎士とドラゴンがいきなり倒れたのよ」

「アニキと竜騎士は剣の打ち合いはしなかったのか?」


「いきなり魔法を撃ったわ」

デブーの問いにライザが答える。

「珍しいな、最近、アニキはデスクリムゾンをあまり使わないのだがな」

「あの竜騎士がパパを侮辱するような事を言ったのよ」

「あぁ~なるほど、アニキはそれで頭に来たんだろうな。
 アニキはヘルザイムの事を高く評価していたからな。
 ヘルザイムを馬鹿にされて不快だったんだろうな」

「パパの事をよく知っているみたいだけど、何故?」

「兄貴から聞いてないのか? 俺たちは2,300年くらい前に、この世界に来たことがあるんだ。
 そのときの四天王と八大将軍を始め、主だったヘルザイムの配下をあの世に送ったんだよ」

「いや、一人だけ見逃したはずだ! ペンギンみたいなヤツを」

「ペンゴ?」

ガーリの問いにライザが答えると

「あぁ~~そんな名前のヤツだ!
 アニキが戦い方が騎士道だか武士道精神に溢れてとか言ってと止めを刺さなかったはずだ。
 あのペンギンは今どうしている?」

「引退して魔属領に戻っているわ。今は息子のペンザが後をついで四天王の一人になっている」

「ほーーあのペンギンにも息子はいたのか」



「ねぇ~さっき、あの男が死なないって言ったけど、どういう意味よ!」

デブーの答えによく分からないという表情で疑問を呈した。

「その言葉の通りだ。アニキは死なないんだよ。
 より正確に言うなら『死ねない』というのが正しいんだがな」

「死ねない?!」

ライザは思わず呟いた。

「え!?どういうこと?」

「そのままの意味だ。詳しい事はアニキに聞いてみればいい。

デブーが答えるとガーリが続けて

「それで、アクアリーの話しには続きがあってな・・・・・悲惨な結末を迎えたんだよ」

「悲惨!?」

「そう。さっきも話したがアクアリーというのは陸地がほとんど無い一面水の世界だったのさ。
 そこに住む人魚たちはリバイアサンに食べられ数を減らしていったのさ。
 人魚の女王が俺たちにリバイアサンを1匹残らず退治してくれと依頼されたんだ。
 が、アニキは全部殺すと生態系が崩れすぎて何かしらの環境破壊を起こすかもしれないから数匹は残しておけと忠告したのだが女王はアニキの話を一切聞き入れずに一掃が条件でな・・・・アニキは根絶だけは止めておけと何度も忠告したんだがな~」

「あの女王が人魚たちがリバイアサンを憎むのも分かるんだけどな・・・・
 アニキは依頼どおり一掃してな・・・・・その、数百年後くらいにアクアリーへ行ったら・・・・・
 アクアリーは砂漠の星になっていたんだ」

「砂漠! 水の星が?」

ライザは驚いた。

「そうだ。砂漠になっていた。
 リバイアサンが水を司る精霊の役目をしていたのかもしれない。
 他に何か原因があったのかもしれないがリバイアサンが100匹もいるなんて普通じゃないだろ。
 まぁ、俺たちには関係の無い話だ。
 アニキは忠告したし、依頼どおり全滅させたのだからアニキが気に病むことは無い」

「俺たち悪魔から見ると言われたとおりの事をしただけだが、アニキは残念がっていたけどな」


「「根は優しい人なんだ」」

と二人の悪魔は声を揃えて言った。

「根が優しすぎてな。優しすぎて、やさぐれちまったんだよ!ハハハハハ」

「あれでもアニキはデリケートだからな!」

「デリケートで優しい人だが『善」じゃないわな~」

「俺たちに影響されて『悪』になったのかも。ハハハハハハ」

「いやいや、昔から『悪」だぜ!」

「今は『超~極悪』だけどな!」

「「ハハハハハ」」

と二人の悪魔はマジメに聞いているライザをそっちのけ無責任に笑った。


「あんたたちは何故、あの男に付き従っているの? 使役されているの?」

「違う、違う。俺たちの意思だ」

ガーリが答えると続けてデブーが

「アニキは寂しがりやなんだよ、ハハハハハ。
 俺たちがいないと寂しくて泣いちゃうんだよ、ハハハハハ」

「そうそう、俺たちの慈善事業だな。ハハハハ!」

と二人は再度無責任に笑うとテーブルの上に用意された肴をつまみに酒を飲んだ。
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...