23 / 38
Take the devil 8
しおりを挟む「あのクソガキ!! 何してくれるんだ!」
男は怒気を発しながらも空に舞い上がり飛んだ。
ライザの後を追いかけるがなかなか距離は縮まなかった。
「ガキのクセに速いな! さすがヘルザイムの娘といったところか」
リーンリーン!
男の胸に入れてある携帯電話が鳴った。
取り出し折りたたみ式の携帯電話を開くと、そこには小学校高学年くらいの子供が写っていた。
「お主! 妾じゃ。 何故? 反対方向へ戻っておるのじゃ?」
「ヘルザイムの娘が城の方へ逃げたんだ」
「何をやってるんじゃ! まぁ、良いのじゃ!
それより、シーカーとシンクロさせた水晶に面白い物が写っていたぞ。
お主の前方に200くらいの魔物の一団がおるぞ!」
「ヘルザイムの残党か?」
「かもしれんが敗残兵としては士気が高そうに見えたのじゃ。注意しておくにこした事はないぞ」
「ありがとう。おばば」
(面倒な事になりそうだな・・・・)
男はライザに追いつくためにさらにスピードを上げた。
目の前100mほど前を飛ぶライザが急に地上へ向け降下を始めた。
ライザが地上に降りた先には見た事が無い一人の魔族が右手で左肩を押さえ地面に蹲っていた。
ライザはその魔族を気遣うように近寄り痛めている箇所に手をかざし回復魔法を掛けている様子だった。
男は二人の側に静かに着地した。
傷ついた魔族は、頭部に2本上に伸びた赤い角に少し浅黒い肌で、これまたエロイ・・・・いや露出の激しい革のような素材で作られたビキニにマントを羽織っていた。
「ガーベラ! 大丈夫?」
ライザは膝をつきエロイ、いや、露出の激しい女魔族に声を掛けた。
(ガーベラ? どこかで聞いた記憶が・・・・・あっ!!ヘルザイムの言っていた魔法を得意とする奴か!)
「ガーベラ、どうしたの?誰にやられたの? 人間?
パパはどうしたの?」
「魔王様は・・・・・・」
「パパは!!!???」
「ま、魔王様は・・・・・ペンザにやられました」
「エッ? ペンザが!! 嘘!! ペンザがパパにそんなことするわけ無いじゃない!」
「ほ、本当です! ペンザが裏切りました! 勇者たちと内通していたようです」
「うそ! うそ!! ペンザは私が小さいころから・・・ずっとずっと仕えていたのよ!」
ライザは子供のころに遊んだ多くのことを思い出していた。
「勇者と対峙している時、魔王様を後ろからグサッと一突きに・・・・・・
そして、私も・・・・不覚です」
「まさかペンザが! ペンザは聖騎士なのよ!!」
(ペンザってあの先代の四天王のペンゴの息子だったよな。巨大なペンギンのクセに親父は聖騎士の職に付いていたからな・・・・・・息子も騎士道がなんちゃらとか言っていたよな~)
とペンゴとペンザのことを思い出した。
治療が終わるとガーベラは立ち上がりライザに声を掛けた。
「ライザ様! 私と一緒にゼンセン城へお戻りください。そして軍を建て直しペンザと勇者に復讐を!」
「分かってる! 私もパパのお城に戻るところだったの」
「では、私と一緒に!」
「ハーーイ! ちょっと待った! エロイ格好のお姉さん!!
俺はヘルザイムからこの我がままお姫様を魔族領へ連れて行ってくれと頼まれているんで、ハイそうですか!とライザを行かせるつもりは無い」
男はライザとガーベラの会話に割り込んだ。
「何だ!人間!! お前は関係無い! 殺されたくなければ失せろ!」
ガーベラが目を見開き睨みつける。
「エロイ姉ちゃん! そう言われてもヘルザイムとの契約だからな! ライザを渡すわけにはいかない!」
「黙れ!人間!! ライザ様、こちらへ」
ライザは一瞬、迷ったがガーベラの方へ歩いていった。
「ライザ! 俺はヘルザイムとの約束があるので、こっちにきてもらう」
ライザの手を掴もうとしたとき、ガーベラが虚空庫から小型のステッキを取り出し男の手を遮った。
「人間! ライザ様の意思だ! お前の用は済んだ! すぐに立ち去れば命だけは助けてやる」
「そうはいかない! ライザを連れて行きたければ俺が魔族領に送ってから連れ出せ!
一度、魔族領にさえ送ればヘルザイムとの約束は果たされる」
「それでは時間が掛かりすぎる。今すぐ報復する!!」
男は頭をかきながら言った。
「お前はペンザが裏切ったと言ったが俺にはあの脳筋ペンギンが裏切るとは思えない。
これでもアイツの親父とは何度かやりあったことがあってな」
「ペンゴ殿は50年以上前に前線から降り魔族界におられる!
貴様はどう見ても20歳そこそこでは無いか! お前こそが嘘をついている!!」
「こう見えても楽に1万歳は越えているんだよ。
お前のような小娘なぞより遙か年上なんだよ」
というとガーベラは一瞬目を拡げて驚いた。
「ペンゴほど正々堂々とした戦いをする奴は見た事が無い。
そんな親父に育てられた息子が後から主君を刺す姿が想像つかないんだが?」
「私が嘘をついているとでも?」
「まぁ~そうなるな。で、お前は一人で逃げてきたのか?」
「そうだ! ペンザの奇襲を喰らって私の部隊もほぼ全滅だ! ペンザめ! 許さない」
目の前でビキニにローブというサービス満点の女魔族が拳を握った。
「じゃ、お前の後方にいる部隊はお前とは関係無いんだな! ヘルフレイム!!」
と言い終わらないうちに左手を前に突き出すと袖の中から灼熱の火の玉が飛び出し、男の前方、ガーベラの後方4,500mに飛んで行く、そして、着弾した瞬間に火柱が上がった。
火柱とともに魔物が吹き飛んだのが見えた。
「止めろ!!」
ガーベラが叫ぶ。
「おいおい、何故止める? お前が知らないと言うことはペンザの追っ手じゃないのか?
その傷はペンザにやられたんじゃないのか? 放置しておくと、お前は殺されるんじゃないのか?
じゃ、止めにもう一発! 今度はもっと大きいヘルフレイムでも!」
と左手を男の前方に伸ばしたとき
「サンダーアロー!」
ガーベラは魔法を撃ってきたが、魔法は袖の下へと吸収された。
「おいおい、ガーベラさん! 何故、俺に攻撃をかける?
お前を助けるためにヘルフレイムを撃とうとしたんだけどな~
どういうことか説明してくれないか? それともお前の子分達か?」
ガーベラは何も答えず再度サンダーアローを撃ってきた。
男は左手を前の出し袖の下に仕込んであるマジックバッグが何事も無かったように吸収した。
「図星かい?」
と言うと口元が嫌味たらしく笑った。
「フン!」
それを見てガーベラも一瞬、眉間にシワを寄せながら鼻で笑った。
「ウインドアロー」
「はーーい! ゴチになります!!」
と左手を突き出しマジックバッグが魔法を吸い込んだ。
相手から見ると吸い込むというより、あまりの速さに左手の平で対消滅したように見える。
「エロっぽい姉ちゃん、俺に魔法は効かないぜ!」
「ならこうするまで!」
虚空庫から片手サイズの両派の剣を取り出した。
その剣は怪しい色を放っており一目見て魔剣のたぐいであると言うことがわかった。
「おお、なんか怪しそうな剣だな」
「フフフ、分かるか? うぐ!」
ブサ!
男はどこからとも無くナイフを呼び出しガーベラ目掛け投げつけた。
ガーベラは足から崩れるように静かに倒れた。
男が投げたナイフはサックブラッド・ナイフといって刺さった瞬間に大量の血を吸うアイテムだった。
このナイフは男が始めて異世界へ召喚されたときに、女神さまから授けられたチートアイテムだった。
「ガーベラ!!」
ライザはガーベラの下に駆け寄った。
「ガーベラ! ガーベラ!!」
もう二度とガーベラが動く事は無かった。
「殺すこと無いじゃない!! 人でなし!!」
「魔族に人でなしと言われる日が来るとはな~」
男は苦笑いをした。
ドダドダドダ
けたたましい音をたてへフレイムを撃ち込んだ方向から砂煙を上げなら集団が近づいてきた。
50を超える魔族たちが男の目の前に現れた。
(おお、けっこう生き残っていたな)
「ガッ ガーベラ様!!」
「ガーベラ様!!」
トラや豚、ゴリラのような魔族が倒れているガーベラの下に駆け寄る。
そいつらは全員、角が生えていた。
「貴様か! 貴様がガーベラ様をやったのか?」
「俺の邪魔をするので消えてもらった」
「貴様! 許さん!」
トラの魔族が拳を振り上げ殴りかかってきたが男はスッと身を切り返し足を引っ掛けトラの魔族を躓かせた。
「おいおい、止めておけ! お前らの主を瞬殺したんだぜ。
子飼いのお前らが敵うわけないだろう?」
「死ねーー! 人間!!」
今度は豚の魔族が棍棒を振り上げながら迫ってきた。
「チッ! 面倒だな。 バースト・ネガティブ!!」
男はバックステップでかわし左手を前に突き出した。
自分の前方にいるすべての魔族に対し魔法を掛けた。
「「「うわーーーー」」」
「「「ウグッ!!」」」
「「ギャーーー!」」
ある者は仰向けになって倒れ
ある者は膝を屈しうごけなくなり
ある者は地面をのた打ち回る
ある者は奇声を発し続けた。
「おぉぉ~ 効果てき面! まさか魔族にもこんなに効くとはな~
ガーリのしたり顔が浮かぶぜ!」
この魔法は悪魔のガーリが編み出した拠点を無力化する魔法だった。
相手に負の感情を増大させ戦う気力を奪い取る魔法だった。
男は人間相手に町などを無力化するときに使っていた。
が、魔族など対魔耐性のある者に使った事は今まで無かった。
だいたい魔族相手には殲滅系の魔法を行使することが多かった。
なぜなら魔族に対する人間は魔族の殲滅を望むことが多かったからだ。
「止めろ人間!! あいつらは私の同胞だ!」
「お前の親父殺しの犯人の部下でも止めるのか?」
「そ、それでもだ!」
ライザは男を睨みつけながら強く言った。
「安心しろ!2、3時間もしたら魔法は解ける。さぁ~行くぞ!」
「止めろ!!」
と男の手を払うが男はライザにお構いなく荷物のように担ぎ空を飛んだ。
0
あなたにおすすめの小説
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる