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10章.犯人の濡れ衣を着せられる
05.
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結婚披露パーティ当日は、爽やかに晴れ渡った。
ローズレッド、レモングラス、オレンジピール、オレンジフラワー、リンデンフラワー、…「花嫁らしい」とトーニ爺さんと薬師さんたちにお勧めされたブレンドハーブに、桃のコンポートを浮かべ、桃のフルーツハーブティを作ってみた。
癖がなく爽やかな飲み口のハーブに桃の甘さが溶ける。
俺らしいかと言われると気恥ずかしくなる甘さではあるが、心やわらぎほんのり幸せが香る。花嫁とか結婚とか幸福とか、そういうイメージはある程度表現出来たような気もする。
「ジョシュア様、ラピスラズリ姫さま、おめでとうございます」
「人界と死界に末永く幸ありますことを」
「デドフロンティア王国、万歳―――――っ‼」
高く澄んだ青空。まばゆく広がる緑なす大地。
獣人と人間が一堂に会し、共に甦らせた王都で朗らかに祝杯を挙げる姿は、相容れない異種族同士を融合へ一歩近づけたと言ってもいいように見えた。美しい王宮の庭園に芳しく香る色とりどりの料理が運ばれ、集った多くの観衆たちに笑顔が溢れる。
「よう、元気そうだな」
人間嫌いのエイトリアンが、美しい金色の角と翼を持つ一角獣の姿で王宮の城壁に降り立つ。気性の荒いジョシュアの双子は、この姿が一番穏やかなんじゃないかと思う。麗しい一角獣に遅れて、死森の城砦から従ってきたらしいハヤブサ獣人たちも次々に降りてくるのが見えた。
「エイトリアン、…っ」
久しぶりの再会と、なんだかんだ言ってもジョシュアを気にかけてる感じが嬉しくて、バルコニーから飛び出した。走り寄って、厳かに揺れる金のたてがみに抱きつこうとしたら、後ろから伸びてきたしなやかな腕に留められた。
「エイトがお前に触るとろくなことにならない」
紺のタキシード姿のジョシュアが皮肉げな表情で俺をつかまえている。ジョシュアはどんな姿でも、人でも獣でも最高にカッコいいけど、深い海と空、水をもたらす龍の象徴みたいな今日のジョシュアは、死ぬほどカッコいい。
鼻血出る、…
「…余裕ないな、ジョシュア。狭量な男は嫌われるぞ」
鼻で笑ったエイトリアンは、金髪がまばゆく揺れるジョシュアに似た人間の姿になると、俺の前に跪き、手を取って、
「会いたかったよ、ラズリ」
手の甲に柔らかく口づけた。
うお。普段粗野なくせに紳士然とした振る舞いが似合うなんてずるい。さすが双子だけあって完璧な美貌を分け合っているし、やっぱりジョシュアに似てる、…
「…おい。何ボケっとしてんだ。防御はどうした、防御は」
思わず見とれていたら、背後からいやに低い声が聞こえて、ジョシュアに小突かれた。
だって、ジョシュアに似てんだもん。カッコ良すぎるだろ。…てか、火花、チリっとも散りませんでしたね、…
「運命の番は俺だっていいわけだからな。ラズリはお前のつまんねえプレイに飽きたら、俺んとこに来るんだよ」
立ち上がったエイトリアンは俺の手をつかんだまま、ジョシュアに顔を近づけて、傲慢に鼻先で笑った。
…お兄さん。なんてこと言うんすかっ
ジョシュアは野外だったり風呂だったり温室だったり、意外と大胆っつーか、あけすけっつーか、果てがないっつーかね、…ってそこじゃない‼︎
ローズレッド、レモングラス、オレンジピール、オレンジフラワー、リンデンフラワー、…「花嫁らしい」とトーニ爺さんと薬師さんたちにお勧めされたブレンドハーブに、桃のコンポートを浮かべ、桃のフルーツハーブティを作ってみた。
癖がなく爽やかな飲み口のハーブに桃の甘さが溶ける。
俺らしいかと言われると気恥ずかしくなる甘さではあるが、心やわらぎほんのり幸せが香る。花嫁とか結婚とか幸福とか、そういうイメージはある程度表現出来たような気もする。
「ジョシュア様、ラピスラズリ姫さま、おめでとうございます」
「人界と死界に末永く幸ありますことを」
「デドフロンティア王国、万歳―――――っ‼」
高く澄んだ青空。まばゆく広がる緑なす大地。
獣人と人間が一堂に会し、共に甦らせた王都で朗らかに祝杯を挙げる姿は、相容れない異種族同士を融合へ一歩近づけたと言ってもいいように見えた。美しい王宮の庭園に芳しく香る色とりどりの料理が運ばれ、集った多くの観衆たちに笑顔が溢れる。
「よう、元気そうだな」
人間嫌いのエイトリアンが、美しい金色の角と翼を持つ一角獣の姿で王宮の城壁に降り立つ。気性の荒いジョシュアの双子は、この姿が一番穏やかなんじゃないかと思う。麗しい一角獣に遅れて、死森の城砦から従ってきたらしいハヤブサ獣人たちも次々に降りてくるのが見えた。
「エイトリアン、…っ」
久しぶりの再会と、なんだかんだ言ってもジョシュアを気にかけてる感じが嬉しくて、バルコニーから飛び出した。走り寄って、厳かに揺れる金のたてがみに抱きつこうとしたら、後ろから伸びてきたしなやかな腕に留められた。
「エイトがお前に触るとろくなことにならない」
紺のタキシード姿のジョシュアが皮肉げな表情で俺をつかまえている。ジョシュアはどんな姿でも、人でも獣でも最高にカッコいいけど、深い海と空、水をもたらす龍の象徴みたいな今日のジョシュアは、死ぬほどカッコいい。
鼻血出る、…
「…余裕ないな、ジョシュア。狭量な男は嫌われるぞ」
鼻で笑ったエイトリアンは、金髪がまばゆく揺れるジョシュアに似た人間の姿になると、俺の前に跪き、手を取って、
「会いたかったよ、ラズリ」
手の甲に柔らかく口づけた。
うお。普段粗野なくせに紳士然とした振る舞いが似合うなんてずるい。さすが双子だけあって完璧な美貌を分け合っているし、やっぱりジョシュアに似てる、…
「…おい。何ボケっとしてんだ。防御はどうした、防御は」
思わず見とれていたら、背後からいやに低い声が聞こえて、ジョシュアに小突かれた。
だって、ジョシュアに似てんだもん。カッコ良すぎるだろ。…てか、火花、チリっとも散りませんでしたね、…
「運命の番は俺だっていいわけだからな。ラズリはお前のつまんねえプレイに飽きたら、俺んとこに来るんだよ」
立ち上がったエイトリアンは俺の手をつかんだまま、ジョシュアに顔を近づけて、傲慢に鼻先で笑った。
…お兄さん。なんてこと言うんすかっ
ジョシュアは野外だったり風呂だったり温室だったり、意外と大胆っつーか、あけすけっつーか、果てがないっつーかね、…ってそこじゃない‼︎
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