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10章.犯人の濡れ衣を着せられる
10.
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「俺がそんな面倒臭いことするか」
「…いてっ」
正面切ってはたかれた。
「お前と無理やり交わってから食い殺して終わりだ」
エイトリアンは俺の顎をつかんで顔を近づけると、フンと尊大に鼻で笑った。
…ですよねー。
エイトリアンが茶葉に毒を仕込むとか、そんな回りくどいことをするとは思えない。エイトリアンは短気だし、猪突猛進って感じだし、既に強い力を持っているから人間なんて簡単にどうにでもできる。
エイトリアンが言う通り、無理やりにでも俺と交わればジョシュアの力を上回って、人類を滅亡させることだって不可能じゃないかもしれない。
でも。
エイトリアンはそれをしない。
エイトリアンを見上げると、もう一度はたかれた。
「…痛えな⁉」
「しけた顔してんじゃねえよ。お前、ジョシュアを諦めんのか?」
え。
美しい地球色の瞳が真っすぐに俺を射抜く。
ジョシュアと同じ澄んだ虹色の瞳。
「そんな簡単に諦められるなら、さっさと俺に落ちてこい」
その美しい瞳の奥に怒りの炎が見えた。エイトリアンは怒っている。
そうだ。
ジョシュアとの結婚式を台無しにされて、毒殺犯の疑いをかけられて、部屋に閉じ籠って、孤立無援とか嘆いて、…俺は一体何をしているんだ。このままここで大人しく用無しの烙印を押されるのを待っているのか。待っていれば、誰かが何とかしてくれるのか。
本当に欲しいものは。
全力で取りに行け。
俺は今まで一度だけ、柊羽を育てたい一心でがむしゃらに頑張ったことがある。どうしても諦めたくなかった。あらゆる手を尽くした。諦めるのは、出来ることを全てやり尽くしてからだ。
「…ごめん、エイト」
エイトリアンの瞳を見つめ返した。
「俺はやってない。茶葉に毒なんか入れてない。ネメシスさんに嫉妬したのは本当だけど、でも、だからってそんなことはしない」
「…ふん? それで?」
エイトリアンは顎をつかんだまま俺の唇を親指で撫でる。
「俺を信じてくれて有難う。俺、ジョシュアを諦めたくない。無実を証明してジョシュアと一緒にこの国で暮らしたい」
じっと、虹色の瞳が俺を見つめている。俺の本気度合いを測ってる。絶対に目を逸らさない。
と、思っていたら、唇に柔らかいものが触れた。
「な、…⁉」
「依頼料は先払いだ。お前が真実を暴くのに協力してやるよ」
至近距離で、唇に触れたまま、エイトリアンがニヤリと笑った。
この人、…じゃなくて、この手の早すぎる獣人の兄さんに協力を仰ぐなんて無謀だっただろうか。と、思わないでもないけれど、訳が分からないうちに疑いをかけられて暗く落ち込んでいた気持ちがいつの間にか救われていた。
何だかすっきりした気分だった。
「嫉妬なあ、まあネメシスは昔っからジョシュアに惚れてたからなぁ」
って、またモヤモヤさせんなよっ
「…いてっ」
正面切ってはたかれた。
「お前と無理やり交わってから食い殺して終わりだ」
エイトリアンは俺の顎をつかんで顔を近づけると、フンと尊大に鼻で笑った。
…ですよねー。
エイトリアンが茶葉に毒を仕込むとか、そんな回りくどいことをするとは思えない。エイトリアンは短気だし、猪突猛進って感じだし、既に強い力を持っているから人間なんて簡単にどうにでもできる。
エイトリアンが言う通り、無理やりにでも俺と交わればジョシュアの力を上回って、人類を滅亡させることだって不可能じゃないかもしれない。
でも。
エイトリアンはそれをしない。
エイトリアンを見上げると、もう一度はたかれた。
「…痛えな⁉」
「しけた顔してんじゃねえよ。お前、ジョシュアを諦めんのか?」
え。
美しい地球色の瞳が真っすぐに俺を射抜く。
ジョシュアと同じ澄んだ虹色の瞳。
「そんな簡単に諦められるなら、さっさと俺に落ちてこい」
その美しい瞳の奥に怒りの炎が見えた。エイトリアンは怒っている。
そうだ。
ジョシュアとの結婚式を台無しにされて、毒殺犯の疑いをかけられて、部屋に閉じ籠って、孤立無援とか嘆いて、…俺は一体何をしているんだ。このままここで大人しく用無しの烙印を押されるのを待っているのか。待っていれば、誰かが何とかしてくれるのか。
本当に欲しいものは。
全力で取りに行け。
俺は今まで一度だけ、柊羽を育てたい一心でがむしゃらに頑張ったことがある。どうしても諦めたくなかった。あらゆる手を尽くした。諦めるのは、出来ることを全てやり尽くしてからだ。
「…ごめん、エイト」
エイトリアンの瞳を見つめ返した。
「俺はやってない。茶葉に毒なんか入れてない。ネメシスさんに嫉妬したのは本当だけど、でも、だからってそんなことはしない」
「…ふん? それで?」
エイトリアンは顎をつかんだまま俺の唇を親指で撫でる。
「俺を信じてくれて有難う。俺、ジョシュアを諦めたくない。無実を証明してジョシュアと一緒にこの国で暮らしたい」
じっと、虹色の瞳が俺を見つめている。俺の本気度合いを測ってる。絶対に目を逸らさない。
と、思っていたら、唇に柔らかいものが触れた。
「な、…⁉」
「依頼料は先払いだ。お前が真実を暴くのに協力してやるよ」
至近距離で、唇に触れたまま、エイトリアンがニヤリと笑った。
この人、…じゃなくて、この手の早すぎる獣人の兄さんに協力を仰ぐなんて無謀だっただろうか。と、思わないでもないけれど、訳が分からないうちに疑いをかけられて暗く落ち込んでいた気持ちがいつの間にか救われていた。
何だかすっきりした気分だった。
「嫉妬なあ、まあネメシスは昔っからジョシュアに惚れてたからなぁ」
って、またモヤモヤさせんなよっ
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