12 / 92
iiyori.02
03.
しおりを挟む
学校帰りに警察に寄って、行方不明者届が出されていないかどうか確認してみたけど、穂月や卯月に該当する人はいないようだった。
秘かに卒業生名簿も確認してみたけど、志田穂月の名前はない。偽名ってことも考えられるけど、穂月が元生徒なら、学校教職員か生徒か誰かしらは覚えていそうなもので、あんな新種発見みたいな騒ぎにはなるまい。
…つまり。だから。
いよいよこれは、時を超えた説が有効か??
「ちちうえ、このいちはたべものがほうふですね」
「下ごしらえが済んでいたり、凍っているものもあるな。便利なものだ」
食いぶちが増えたので、毎日コンビニ弁当というわけにもいかず、スーパーに寄ってみたのだが、思いのほか穂月と卯月が売り場を見て盛り上がっている。それが全部演技とも思えないし、ううーん、でもなぁ、…
その様子を見ながら内心首をひねってしまう。
百歩譲ってタイムトリップしたとしてもさ、卯月が私の子ってのはさすがに無理があるんじゃないかなあ。だって私は生まれてから29年間、ずっとここにいたわけだし。だから穂月が会いたがってた過去の私は本当は私じゃなくて、先祖とか前世とかそういう、…
なんかいろいろ考え始めたら急にもやもやした気分になって、胃の辺りがチクリと痛んだ。
「本当は、私じゃない、…」
「…って、あなたですよ、あなたっ! 菜苗さんっ!! こんばんは。奇遇ですね。今、お帰りですか?」
ふと目の前を縦よりも横に大きい人影に塞がれて、顔を上げると、どこかで見たことのある男の人が立っていた。
「…こんばんは。ええ、…っと、…」
どこ? どこだ? どこで会った?
学校関係? 保護者? 移動した先生? 卒業生?
え、もしかしてプライベート??
「ええ、…っと、…」
記憶の糸を端から手繰ってみるけどなかなかヒットせずに焦る。
「…奇遇ですね?」
とりあえず薄っぺらい笑いを張り付けてみるけど、全然記憶が出てこない。確か最近あった人だよな。誰だっけな、どこだっけな。
「菜苗さん、あの、もしかしたら僕のこと、…」
「いえいえホントそう、奇遇ですよね、うっほっほ」
「…うっほっほ、…??」
焦りに焦って思い出そうとしていると、
「…なえ。知り合いか?」
それに気づいた穂月が戻ってきて無意識に核心を突いた。
そこ―――っ、知り合いなんだけど、出てこないんだよ―――っ
張り付けた笑いが引き攣って冷や汗が流れる。
「どちらさまでござりまするか」
…詰んだ、と思っていたら、卯月のナイスアシストで、
「…えーっと、君たちこそ菜苗さんの知り合いなのかな。僕は東丸マモルと言って、菜苗さんの婚約者なんだけど」
雪だるまみたいに色白でぷっくりしたお兄さんの恐ろしい正体が判明した。
秘かに卒業生名簿も確認してみたけど、志田穂月の名前はない。偽名ってことも考えられるけど、穂月が元生徒なら、学校教職員か生徒か誰かしらは覚えていそうなもので、あんな新種発見みたいな騒ぎにはなるまい。
…つまり。だから。
いよいよこれは、時を超えた説が有効か??
「ちちうえ、このいちはたべものがほうふですね」
「下ごしらえが済んでいたり、凍っているものもあるな。便利なものだ」
食いぶちが増えたので、毎日コンビニ弁当というわけにもいかず、スーパーに寄ってみたのだが、思いのほか穂月と卯月が売り場を見て盛り上がっている。それが全部演技とも思えないし、ううーん、でもなぁ、…
その様子を見ながら内心首をひねってしまう。
百歩譲ってタイムトリップしたとしてもさ、卯月が私の子ってのはさすがに無理があるんじゃないかなあ。だって私は生まれてから29年間、ずっとここにいたわけだし。だから穂月が会いたがってた過去の私は本当は私じゃなくて、先祖とか前世とかそういう、…
なんかいろいろ考え始めたら急にもやもやした気分になって、胃の辺りがチクリと痛んだ。
「本当は、私じゃない、…」
「…って、あなたですよ、あなたっ! 菜苗さんっ!! こんばんは。奇遇ですね。今、お帰りですか?」
ふと目の前を縦よりも横に大きい人影に塞がれて、顔を上げると、どこかで見たことのある男の人が立っていた。
「…こんばんは。ええ、…っと、…」
どこ? どこだ? どこで会った?
学校関係? 保護者? 移動した先生? 卒業生?
え、もしかしてプライベート??
「ええ、…っと、…」
記憶の糸を端から手繰ってみるけどなかなかヒットせずに焦る。
「…奇遇ですね?」
とりあえず薄っぺらい笑いを張り付けてみるけど、全然記憶が出てこない。確か最近あった人だよな。誰だっけな、どこだっけな。
「菜苗さん、あの、もしかしたら僕のこと、…」
「いえいえホントそう、奇遇ですよね、うっほっほ」
「…うっほっほ、…??」
焦りに焦って思い出そうとしていると、
「…なえ。知り合いか?」
それに気づいた穂月が戻ってきて無意識に核心を突いた。
そこ―――っ、知り合いなんだけど、出てこないんだよ―――っ
張り付けた笑いが引き攣って冷や汗が流れる。
「どちらさまでござりまするか」
…詰んだ、と思っていたら、卯月のナイスアシストで、
「…えーっと、君たちこそ菜苗さんの知り合いなのかな。僕は東丸マモルと言って、菜苗さんの婚約者なんだけど」
雪だるまみたいに色白でぷっくりしたお兄さんの恐ろしい正体が判明した。
0
あなたにおすすめの小説
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる