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穂月、…
『今夜も来いよ』
朝まで誰よりもそばにいたのに。
なんで今はこんなところに閉じ込められてるんだろう。
会いたいよ、穂月。
こんな空恐ろしいところで処刑される夜明けを待つなんて嫌だ。
穂月に会いたい、…
「泣いても無駄よ」
地下牢で一人ぼっち。
ろくに動くことも涙を拭くこともできず、抜け出す手立ても思い浮かばず、絶望に飲み込まれそうになっていたら、ふいにどこからか声が聞こえた。
「んむっ!?」
誰!? 誰か人がいる気配なんて全くなかったけど。
幽霊? 亡霊? やめてよ、こんな不気味な地下牢で。場にそぐわし過ぎるっていうか、似合い過ぎて洒落にならんっていうか??
「フフフ、ハハハ、…ああ愉快」
やめて欲しいのに、声は止まない。
耳障りな女性の甲高い嘲笑が、地下にこだまする。
「愉快、愉快。そうやってお前も若君に会えぬ夜を過ごすが良い。涙に濡れて夜明けを迎えるが良い。朝にはその仕打ちを怨むのだ。魂が抜けるほどに恨みわぶのだ。フフフ、ハハハ、…ああ愉快、愉快、…っ」
暗く閉ざされた地下牢に女性の声が反響して、あっちからもこっちからも聞こえてくる。まるで周りをとり囲まれて、大勢の人に嘲り笑われているような気がする。
「んぬ~~~、んぬぬむむっ!」
最初は不気味極まりなく、耳を塞いで身を隠したい気分だったけど、だんだん腹立たしくなってきた。
耳は塞げないし、こっちが身動き出来ないのをいいことに、隠れて嘲笑うなんて最低じゃん!? 正体見せろやっっ
と、見えない相手にすごんでみたら、
「ホホホホ、活きがいいこと」
目の前がぼんやり明るくなって、それが徐々に人の形を取り始めた。
「んん~っ!? んぬ~っ!? んぬぬ~~~っっ」
正体見せろとは思ったけど、リアルお化けはやっぱり怖い。
いや――っ、い――や―――っ、見たくな―――いっ!!
「…これ」
顔を背けて目をつむると、ツンツンと肩を突かれる。
「んぎ、いんんんんん――――――っっ」
悲鳴を上げることもままならないけど、肩に触れた冷たい手の感触がリアルで、卒倒しそうになる。
出たっ、出たぁ――っっ、お化けええええっっ!!
「妾はお化けではない。若君穂月様の正室、三姫である」
え、…
目を開けると、狭い牢屋にまるでそぐわない、それはそれは美しい容貌で、煌びやかな着物姿のお雛様も真っ青みたいな女性が鎮座していた。
「ん~、うむむ~~」
わぁ、綺麗。という感嘆の声を上げてしまうのも致し方ない。
十二単とかなのかな? 皇族の方がご成婚の時に着るやつみたいな着物。こんな間近で見たことない。すごく綺麗。豪華。おまけに着ている人も、もの凄い美人。
写真撮りたーい、とポケットのスマホに手を伸ばしかけ、手は動かせないし、スマホもないという自分の置かれている惨めな状況を思い出した。
お雛様幽霊の出現にテンション上げてる場合じゃなかった。
『今夜も来いよ』
朝まで誰よりもそばにいたのに。
なんで今はこんなところに閉じ込められてるんだろう。
会いたいよ、穂月。
こんな空恐ろしいところで処刑される夜明けを待つなんて嫌だ。
穂月に会いたい、…
「泣いても無駄よ」
地下牢で一人ぼっち。
ろくに動くことも涙を拭くこともできず、抜け出す手立ても思い浮かばず、絶望に飲み込まれそうになっていたら、ふいにどこからか声が聞こえた。
「んむっ!?」
誰!? 誰か人がいる気配なんて全くなかったけど。
幽霊? 亡霊? やめてよ、こんな不気味な地下牢で。場にそぐわし過ぎるっていうか、似合い過ぎて洒落にならんっていうか??
「フフフ、ハハハ、…ああ愉快」
やめて欲しいのに、声は止まない。
耳障りな女性の甲高い嘲笑が、地下にこだまする。
「愉快、愉快。そうやってお前も若君に会えぬ夜を過ごすが良い。涙に濡れて夜明けを迎えるが良い。朝にはその仕打ちを怨むのだ。魂が抜けるほどに恨みわぶのだ。フフフ、ハハハ、…ああ愉快、愉快、…っ」
暗く閉ざされた地下牢に女性の声が反響して、あっちからもこっちからも聞こえてくる。まるで周りをとり囲まれて、大勢の人に嘲り笑われているような気がする。
「んぬ~~~、んぬぬむむっ!」
最初は不気味極まりなく、耳を塞いで身を隠したい気分だったけど、だんだん腹立たしくなってきた。
耳は塞げないし、こっちが身動き出来ないのをいいことに、隠れて嘲笑うなんて最低じゃん!? 正体見せろやっっ
と、見えない相手にすごんでみたら、
「ホホホホ、活きがいいこと」
目の前がぼんやり明るくなって、それが徐々に人の形を取り始めた。
「んん~っ!? んぬ~っ!? んぬぬ~~~っっ」
正体見せろとは思ったけど、リアルお化けはやっぱり怖い。
いや――っ、い――や―――っ、見たくな―――いっ!!
「…これ」
顔を背けて目をつむると、ツンツンと肩を突かれる。
「んぎ、いんんんんん――――――っっ」
悲鳴を上げることもままならないけど、肩に触れた冷たい手の感触がリアルで、卒倒しそうになる。
出たっ、出たぁ――っっ、お化けええええっっ!!
「妾はお化けではない。若君穂月様の正室、三姫である」
え、…
目を開けると、狭い牢屋にまるでそぐわない、それはそれは美しい容貌で、煌びやかな着物姿のお雛様も真っ青みたいな女性が鎮座していた。
「ん~、うむむ~~」
わぁ、綺麗。という感嘆の声を上げてしまうのも致し方ない。
十二単とかなのかな? 皇族の方がご成婚の時に着るやつみたいな着物。こんな間近で見たことない。すごく綺麗。豪華。おまけに着ている人も、もの凄い美人。
写真撮りたーい、とポケットのスマホに手を伸ばしかけ、手は動かせないし、スマホもないという自分の置かれている惨めな状況を思い出した。
お雛様幽霊の出現にテンション上げてる場合じゃなかった。
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