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iiyori.07
07.
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「んむ??」
ていうか。
お化けじゃないの?
確かにさっき、この人私のこと触ったけど。見る限りでは、そこにいるような肉体の存在感もあるし、なんなら息遣いも感じるけど。
だがしかし。
実際お化けに会ったことがないから、リアリティがあるだけでやっぱりお化けって説もあり得ないとは言い切れない。
「問題はそこではない」
お雛様幽霊は、苛立ちを隠そうともせず、手に持っている扇をパシパシと振った。それで起こった風を頬に感じる。実体感が半端ない。
「妾が穂月様の正妻、三姫であるということじゃ!」
お雛様幽霊はついに焦れたように叫ぶ。気が短いらしい。
「…はんひへ?」
てか。ものすごい主張してくるけど、この人が、三姫? 穂月の正妻?
「ホホホホ、そうじゃ。妾が三姫。正妻じゃ、正妻!! どうじゃ? 良いであろう? 羨ましかろう、悔しかろう、ほ~れほれほれ、もっと悔し涙をこぼすが良い!!」
超絶美人な三姫が超絶立派なお着物を着て、檜扇をひらひらさせながら、舞うような仕草で煽ってくる。
確か穂月には、晴信が志田家勢力拡大のために迎えた正室と側室の姫君がいる。でもお世継ぎが生まれずに晴信がイライラしているらしいし、
『城におわすご正室にも大層冷酷なお振る舞いをなさって』
『未だ一度もお渡りがなく泣き暮らしておられるとか』
多分、あんまり構ってもらえてないっぽい。
なので、か弱く憔悴したお姫様を想像していたけど、目の前のこの姫は意外と元気っぽい。
「ホホホホホ、お前など、所詮誰にも紹介してもらえぬ名もなき石。路傍の石ころ。ただ踏みつけにされ捨て置かれるだけの汚らしく忌まわしい石ころじゃ!!」
扇をひらひらさせていた三姫は、だんだん熱が入ってきたのか、大仰にバッサバッサと振り始め、強風を起こして疲れるのか、息が荒く、鼻の穴も大きくなってきた。可愛らしい見た目に反して、意外と根性があるらしい。
「ほれ、石ころ、早う泣け。喚け。妾を称えよ。褒めよ。跪け。命乞いをせよ。ほ~れほれほれ、…うっ、目が回る、…」
三姫は強風を起こしながら立ち上がり、更に気分が乗ってきたのか、独特の振りでくるくる回り始めた挙句、目を回してしゃがみこんだ。
「…さり、水。水を持て、…」
牢屋に水なんてあるまいに。愉快な人だな。
と、意外と愉快な三姫一人パフォーマンスを見終わって気づいた。
この人、誰かに似てると思ってたけど。
「…はんのひやはん」
三宮さんだ。
完璧美少女で、都内有名お嬢様学校桜百合学園高校の可愛い制服がよく似合う、三宮なえさん。穂月の運命の相手は自分だって証明するために時切丸で切ってみろって言いだして、…結果、私がここに飛ばされたという、そもそもの原因の人なんだけど。
え―――、三宮さん、三姫に繋がるんだ――――――
「水をもろうてくるゆえ、しばし待て」
衝撃の事実に慄いていたら、三姫が煙のようにふうっと余韻を残して消えた。
「む~~!?」
ええ―――、三宮さん、変幻自在――――――
…で。水飲んで戻ってくるんだ??
ていうか。
お化けじゃないの?
確かにさっき、この人私のこと触ったけど。見る限りでは、そこにいるような肉体の存在感もあるし、なんなら息遣いも感じるけど。
だがしかし。
実際お化けに会ったことがないから、リアリティがあるだけでやっぱりお化けって説もあり得ないとは言い切れない。
「問題はそこではない」
お雛様幽霊は、苛立ちを隠そうともせず、手に持っている扇をパシパシと振った。それで起こった風を頬に感じる。実体感が半端ない。
「妾が穂月様の正妻、三姫であるということじゃ!」
お雛様幽霊はついに焦れたように叫ぶ。気が短いらしい。
「…はんひへ?」
てか。ものすごい主張してくるけど、この人が、三姫? 穂月の正妻?
「ホホホホ、そうじゃ。妾が三姫。正妻じゃ、正妻!! どうじゃ? 良いであろう? 羨ましかろう、悔しかろう、ほ~れほれほれ、もっと悔し涙をこぼすが良い!!」
超絶美人な三姫が超絶立派なお着物を着て、檜扇をひらひらさせながら、舞うような仕草で煽ってくる。
確か穂月には、晴信が志田家勢力拡大のために迎えた正室と側室の姫君がいる。でもお世継ぎが生まれずに晴信がイライラしているらしいし、
『城におわすご正室にも大層冷酷なお振る舞いをなさって』
『未だ一度もお渡りがなく泣き暮らしておられるとか』
多分、あんまり構ってもらえてないっぽい。
なので、か弱く憔悴したお姫様を想像していたけど、目の前のこの姫は意外と元気っぽい。
「ホホホホホ、お前など、所詮誰にも紹介してもらえぬ名もなき石。路傍の石ころ。ただ踏みつけにされ捨て置かれるだけの汚らしく忌まわしい石ころじゃ!!」
扇をひらひらさせていた三姫は、だんだん熱が入ってきたのか、大仰にバッサバッサと振り始め、強風を起こして疲れるのか、息が荒く、鼻の穴も大きくなってきた。可愛らしい見た目に反して、意外と根性があるらしい。
「ほれ、石ころ、早う泣け。喚け。妾を称えよ。褒めよ。跪け。命乞いをせよ。ほ~れほれほれ、…うっ、目が回る、…」
三姫は強風を起こしながら立ち上がり、更に気分が乗ってきたのか、独特の振りでくるくる回り始めた挙句、目を回してしゃがみこんだ。
「…さり、水。水を持て、…」
牢屋に水なんてあるまいに。愉快な人だな。
と、意外と愉快な三姫一人パフォーマンスを見終わって気づいた。
この人、誰かに似てると思ってたけど。
「…はんのひやはん」
三宮さんだ。
完璧美少女で、都内有名お嬢様学校桜百合学園高校の可愛い制服がよく似合う、三宮なえさん。穂月の運命の相手は自分だって証明するために時切丸で切ってみろって言いだして、…結果、私がここに飛ばされたという、そもそもの原因の人なんだけど。
え―――、三宮さん、三姫に繋がるんだ――――――
「水をもろうてくるゆえ、しばし待て」
衝撃の事実に慄いていたら、三姫が煙のようにふうっと余韻を残して消えた。
「む~~!?」
ええ―――、三宮さん、変幻自在――――――
…で。水飲んで戻ってくるんだ??
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