可愛いあの子を囲い込むには ~召喚された運命の番~

まつぼっくり

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1巻

1-3

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 まぁ俺は基本、魔獣駆除メインだからサクッと祈ってパッと現地におもむいてガッと魔法をぶっ放して駆除。
 神に祈り? むしろシズカのほうが向いていそうだ。
 シズカには魔法の才能がある。祈りというより願ったことがそのまま魔法となるのだろう。神への祈りだけで全てが解決できるのなら、そいつが神だ。
 だから俺の祈りはパフォーマンス。何かをしたいなら、自分でやったほうが確実で早い。
 この時間の神殿は俺だけのはずなのに。
 エルフ大好きな神官たちがオロオロとしている。あの新しい神官長が聖女を入れてしまったのか。

「エルフさんっ、こんにちは! この時間にお祈りなんて偶然ですね?」

 偶然も何も、ここで治癒魔法を使いまくって善人アピールだろ。面倒くせぇ女。
 やはりと言うかなんと言うか、髪にはでかいエメラルドがごろごろとついた髪飾り。

「あ、これですか? 綺麗だなって見てただけなのにロイドがプレゼントしてくれて……分不相応だからって言ったんですけど……」

 ふわりと微笑ほほえんだ俺は、女を気にせずに膝をついて祈る。
 あぁ、神様。人の国の神には今まで何もしてこなかったが、これからは真面目に祈ろう。だから……こいつらうぜぇ。消してくれ。
 雑音はどうでも良い。さて、そろそろ行くかと立ち上がると、魔法を見ろと言ってくるくそおんな。後ろの王子にもいい加減飽きてきた。本当に使えない。
 だが、横を通り抜けようとした時にかかった声に思わず足を止める。

「エルフ様、こんにちは。ご機嫌いかがでしょうか。聖女様、私も拝見してもよろしいですか?」

 それに嬉しそうにうなずく聖女。第一王子は嫌な顔。更にロイド王子のライバルが増えんのか?
 声の主は第二王子だ。彼はマシだったはずだが。

「エルフ様、一緒に魔法を見せていただきましょう?」

 周りの視線に彼が一度うなずくと、すぐに数人の怪我人が運び込まれる。
 聖女は一瞬ではないにしろ、訓練でついたという下級騎士の腕の切り傷と頬の火傷やけどを治した。
 汗ばみ、呼吸を乱す女へ早く魔力の供給をしなくては、と第一王子が女を抱き上げて運ぶ。「エルフさんっ、どうでしたか?」との声は、聞こえないフリをした。
 バタバタと祈りの間からうるさいのが消える。神に感謝しつつ、何か俺に会いに来た理由があるだろう第二王子と場所を移して、そこに防音をほどこした。

「エルフ様、どう思われますか?」
「どうって、何がです?」
「聖女の魔法です」
「そうですね……まだ治癒魔法を覚えたばかりでしょうし、見た感じ外傷を治せるのがやっとでしょう。これから、できることが増えていくのではないですか?」

 考え込む、マトモだと言われている第二王子。あんなのが兄で可哀想だな。

「あれだけ魔力の供給を受けて、あれだけ騎士たちを傷つけて、治せるのは外傷だけ。それもあとが残る者もいます。犯罪者を使った魔法の練習後は兄上たちと部屋にこもって出てこない。……エルフ様……それに……」

 なるほど。上手くなったら騎士にほどこすけど、そこまでは犯罪者で練習しまくってんのか。それでアレとかないな。

「私は幼い頃から聖女や女神の伝説や文献が好きでした。そんな私が読んだものには、聖女の祈りの魔法は淡く光って幻想的だとあります。あの聖女――マイカさんの魔法は……至って普通の魔法に見えます。治癒魔法自体が珍しいので、なんとも言えませんが……エルフ様、一緒に召喚された彼は、魔法が使えますか?」
「あの子はかなりまどっていて、やっと食事や睡眠をきちんととれるようになったばかりで。魔法を教えられる状況にありませんね……」

 馬鹿は嫌いだが、下手に頭のキレる奴も好きじゃない。
 空気が変わったのに気付いたのか第二王子がうかがうようにこちらを見るが、俺には関係なかった。

「……最後に一つだけ、良いですか?」
「なんでしょう?」
「もし、私が王位を継いだら……エルフ様は彼と一緒にこの国に残っていただけますか?」

 この王子には、もう微笑ほほえみはいらないだろう。

「私は任期が終了次第、この国を出るでしょう。ですので、任期中に貴方が王になれば期間内はここにいます。……申し訳ありませんが、御家騒動はご勝手になさってくださればよろしいかと」
「……そうですか」
「こちらからも最後に一つだけよろしいですか?」

 不安げにこちらを見詰めるその瞳には、まだ幼さが残っている。

「私とあの子、どちらか一人だけをここに残せるとしたらどちらを残しますか?」

 聡明な彼はきっと気付いているのだろう。

「……そんなの、そんなの貴方に決まっているじゃないですか。王族として、エルフ様と何もできないただの人間では考えるまでもありません」
「そうですか。良い答えですね?」

 空気を読める者は好ましい。


   ○ ○ ○


「メルさん、白い花びらと赤い花びらはどっちが美味おいしいですか?」
『ムイッ』
「わ、黄色ですか……! 覚えておきますね?」
『ムイッ!』
「本には葉っぱも書いてあったので、この緑の葉っぱも食べてみてくださいね」
『ムムー』
「ふふ。好き嫌いですか? メルさん可愛いです」
「――ハイハイ、お前が可愛い」

 ショリショリとシズカの手の上の花弁をんではチラリとシズカを見詰め、また小さな葉もかじるメルロ。それを「すごいですメルさん!」とべた褒めするシズカが可愛い。

「リオ! お帰りなさい。今日は早かったね?」

 俺はシズカをハグしてキスして、抱き上げる。

「昼、食った?」

 シズカがいつでも食事をとれるように、時間停止された食事は手つかずのままだ。

「あのね、朝食美味おいしくて、食べすぎちゃったみたいで……」

 焚き火でパンやチーズをあぶっただけの朝食。シズカのいてくれたりんがデザート。

「普段の倍は食べてたもんなぁ」
「……美味おいしかったの」

 ぷくりとわずかに頬をふくらませるのは無意識か。可愛すぎるな。

「シズカは今朝みたいなのが好き?」
「……うん。いつもいただいてるのもすっごく美味おいしいけど……僕には少し重いみたい。ごめんなさい」

 可哀想なくらい細っこくて、それをシズカ本人も気にしているので、カロリー多めを用意していたのだが、運動もしていないし、それもそうだな。

「いや、気が付かなくて悪かった。謝らないでくれ、これから沢山色んなことを話して好きなものとかを知っていきたい。……んじゃ、ちょっと軽めに作るか」
「あの! それなんだけど……」
「ん?」

 何か意見を言おうとしてモジモジとするシズカにもだえる。あのくそおんなとやっていることは一緒なのに、ここまで違うとは。

「あの、僕ね、自分で簡単なものならお料理できるから……、作りたい」
「シズカが? 自分で?」
「駄目じゃなければだけど……」
「俺のも?」
「え? いつもの食事のほうが美味おいしいと思うから……リオはそっちのほうが良いんじゃないかなぁ」
「俺のも?」
「う、リオが嫌じゃなければ」

 嫌なわけあるものか。しかし、キッチンをこの部屋に作るか、どうしたものか。
 そろそろ部屋の外へ出るのも良いかもしれない。鍵はあったほうがシズカも安心できるだろうとつけているだけだし、結界はあるし、屋敷内は自由に動き回ってほしい。

「厨房、行ってみるか?」
「ん。行ってみたい。ここはお屋敷? だよね……人、沢山いる……?」
「いや、俺は大抵のことは一人でやれるし、ばーさんが一人いるだけ。んで、じーさんもいる。主に屋敷のこと担当」
「ごあいさつ、させてほしい」
「ん。行くか」
『ムイッ!』

 ぷるぷると震えながらも、一歩前にシズカが進めたことが誇らしかった。


 パタパタと動き回るこの家唯一のメイド。

「あらあらまぁまぁ、可愛らしい子だこと。ステラリオ様、どこから連れてきたんですか」
「神殿」
「あらぁ。神殿……! またお昼寝なさってたの?」
「ん。シズカ、このばーさんが唯一のメイドな? ばーさんの夫がここにいるじーさん。一応家令だけど、なんでもやってくれてる」
「シズカです。ずっとお世話になっていたのに、ごあいさつもできなくて……すみません。この肩にいる子はメルロのメルさんです」

 ばーさんは「いいのよ、いいのよ」と緊張でぶっ倒れそうなシズカをまわす。

「こいつら、妖精族だから、俺よりずっと年上。本当のじーさんばーさん。妖精族のくせして、か夫婦そろって俺に仕えてくれてる。小さい頃から知ってるんで、俺の本性知ってる数少ない人たちでもある」

 じーさんも手を伸ばして、シズカの頭をでてるし。気難しさはどこに置いてきた。

「そうよう。じーさんばーさんでも良いし、メイドさんでも良いし、名前のマリアとニコラスで呼んでくれても良いわぁ。かしこまるのは苦手で……シズカちゃん、許してちょうだいね?」
「はい……ありがとうございます。おじいちゃん、おばあちゃんと呼んでも良いですか? 僕にも優しくて明るいおばあちゃんがいて……マリアさん見ていたら思い出しちゃって……」
「あらあらっ、シズカちゃん、泣かないで? 大丈夫よ? 皆いるからね?」

 涙をエプロンでぬぐわれている姿に胸がえぐられる思いだ。それでも、シズカにも優しくしてくれる親族がいたことに心底ホッとした自分もいる。

「シズカは祖母と暮らしてたのか?」
「あ……ううん。ここに来る一年前くらいに亡くなってるんだけど、でも、それまでは本当に可愛がってくれてて」
「そうか。ほら、俺の腕の中で泣けたら百点満点」

 そう言うと、すぐに飛び込んでくる素直なシズカ。

「……ぎゅ」
「鼻血出そ」

 クスクスと笑うマリアの声を聞きながら、俺は天をあおいだ。
 マリアに厨房の説明をシズカへしてもらっている間に、ニコラスと話を詰める。

「……とまあ、こんな感じでめんどくせぇから、この屋敷全体を森に転移させて、ここには幻惑であたかも家があるようにしたい。感覚は繋いで、転移部屋でも作って、何かの時はしれっとここから出られるように。できるか?」

 そのうち確実にくそおんなの突撃訪問を受けるような気がする。あいつの視線は不快でねちっこくてぞわりとする。気持ちわりい。

「お前さんが屋敷を転移させて、幻惑出して、感覚繋いでくれたら、転移後の結界やらは私がやろう」
「ほぼ俺じゃねーか」
「幼い頃から魔力制御に苦しい思いをしていたのだから、思い切り解放できるじゃないか」

 にやりと笑ったニコラスが、転移部屋は知り合いのドワーフに頼むから金を出せと告げる。

「……良かったな」
「あ?」
「半身に出逢えて」
「じーさんばーさんのおかげ」
「素直だと気持ちわりぃ」

 俺の口の悪さはじーさんゆずりだと確信した。


 シズカがマリアからコンロなどの使い方を教わって作ったのはパンケーキとサラダ。俺用にローストチキン。あの二人にも同じものを渡して、俺たちは部屋へ戻る。

「うまい」
「……良かった!」

 素朴とも言えるシンプルで優しい味。
 ただ……

「シズカの少なすぎないか?」

 明らかに量が少ない。

「これでも、多めだよ? 朝も沢山食べちゃったし」
「少しずつ食べる量と運動量を増やしていこうな? 折れそうで怖い」

 折れるわけないじゃない、とほがらかに笑うシズカだが、全然笑えない。

「お昼に用意してくれてたのは夕食にいただくね」
「ん。一緒に食お」

 俺の答えにふんわり笑顔。近頃は本当に、穏やかな顔をするようになった。
 初日の緊張と絶望でこわった表情はもう一生見たくない。いつも笑っていてほしい。泣くのは嬉しい時と、ベッドの中だけで良い。
 ほんとく時、可愛いんだよな。いつも可愛いけど。

「リオ、考え事?」
「ん? いや、我ながらおっさんみたいなこと考えて笑えてきただけ」
「思い出し笑い? 思い出し笑いする人はえっちなんだよ」

 くふふと両手を口に当てて悪戯いたずらのような表情のシズカ。この表情は初めてだな。……たぎる。

「えっちってなんだ?」
「えぇ? えー」
「なんのこと? シズカ教えて?」

 思わず顔がにやけてしまう。

「あっ、リオ、わかってて聞いてるでしょう……! もー、んぐっ」

 ねたような口調になったシズカの口に、俺はカットした肉を放り込んだ。んぐんぐと小さな口でしゃくして呑み込んだシズカが、「もぉー」と眉を下げる。

「ちゃんと肉も食おうな?」
「ん。ありがとう」

 無理やり口に入れられたのにお礼を言ってしまうあたりが心配なのだが……
 それはメルロも一緒だったようで、テーブルの上の小皿に盛り付けられた黄色多めの花弁をショリショリしながら、シズカの腕をテシッと叩いた。


 食事を作ってくれたのだから、と洗い物をしようと流しに立つ俺を、シズカが慌てて追いかけてきた。

「座ってて良い。二人分なんてすぐだ」
「だめだよっ、僕の仕事だから……!」
「……仕事じゃないだろう? 食事を作ってくれたのは仕事だから? 義務的な気持ちだったか?何を思って料理した?」

 義務だなんて思っていないのは、もちろんわかっている。

「……ううん。リオに美味おいしいって。おじいちゃんおばあちゃんにも美味おいしいって思ってもらえたらいいなって思いながら作ったよ」
「そうだろう? 俺もうまい食事を作ってくれたシズカに感謝の意を込めて皿洗いしてる」
「……うん」
「仕事じゃない。ここでは自由にして良い」
「……うん」

 一緒にいてくれるだけで良い。

「暇なら洗ってる間、後ろからぎゅってしてて」
「……ぎゅ」
「素直さが可愛すぎて皿割りそう」
「……代わりに洗おうか?」

 急いで皿洗って手も洗って、濡れたてのひらで悪いと思いながら振り向いてその身体をいだいた。

「んんッ、あッ」

 いきなりキスされ舌までまれて驚いたのか、俺の服の裾を摘まむシズカの手を取り、首に回させる。
 シズカは甘い。どこもかしこも甘いのだ。
 歯列をめて、舌をからってしゃぶる。

「やあ、はぁ、りお、急にどうしたの?」
「悪い。可愛かったのと、ちゅーしたかったのと、可愛かったのと、魔力譲渡したかったから」

 ちゅ、ちゅ、と顔や耳をついばんでいると、こてりとシズカから力が抜けた。

「やりすぎた? 悪い」
「ばかばか。りおのばか」

 にらけている〝つもり〟なのだろう。うるうるな瞳と上気した頬。はぁ、可愛いでしかないな。
 ふと、そこに感じる違和感に気が付いて、悪い笑みが浮かぶ。

「やぁぁッ、だめ」
「んー? 駄目? 何が? 硬いの当たってるけど」
「さわっちゃ、だめぇ」
「いや触るだろう」

 服の上からでもピンとっているのがわかる。俺の片手に簡単に収まるサイズだけれど、しっかりと主張していた。

「んー、触ってっ、て言ってるけど?」

 下着の中へ手を差し入れると、そこはもうしっとりと濡れている。

「わあッ」

 ソファーまで少しの距離だったが、俺はシズカを抱き上げて移動し、そっと下ろした。

「ちょっと、全身めさせて?」
「……りおのばか。へんたい!」
「ははっ。言うようになったなぁ……でもシズカ、男は皆、変態だ」

 真っ赤な顔してパクパクと声にならない言葉を発しながらも、顔を近づけるとまぶたを閉じて口づけを待つ可愛い可愛いこの子は、俺の半身。
 唇は外さず、口づけに夢中にさせながらシャツをはだけさせる。二つの美味おいしそうな実を、ぷくりと赤く色付けたのは俺だ。

「いただきます」
「いやぁぁッ」

 ジュッと音が鳴るくらい強めに吸い付く。がしがしと甘噛みしながら、擦ってやろうとそこへ手を伸ばし――

「びっしゃびしゃ……さっきので、イッたの?」
「うぅ、りおの、りおのばか」
「悪い、可愛い」
「ぼく、からだ、へん」
「変じゃない。大丈夫だよ」

 ポンポンと頭をでて、べそをくシズカを落ち着かせた。
 今日はここらでやめとくか。可哀想だし。

「ぼく、ジュッて吸われて、痛いのに、気持ち良くて……気持ち良くて、こわ、い。まだおちんちん、硬いの……出したのになんで……こわい」

 さめざめ泣くシズカに欲情を止められる奴がいるのか。いるわけがない。

「シズカ、悪い」

 そっとシズカの手を取り、服の上から自分の性器を触らせる。

「……っ、大きい……」
「お前といるとこうなんの。好きだから、触りたいし、触られたら出したくなるし、怖くない」
「……いっしょ?」
「そう、一緒」

 乳首でイクなんてエロイ身体はシズカだからだろうけど。

「ちょっと、全身めさせて?」
「……へんたいぃ」

 午後は魔法の練習をする予定であったが変更することにした。とりあえず先に、こっちだ。
 あぁ。シズカは甘い。
 イキすぎて腹がぴくぴくとけいれんしているシズカ。やりすぎた、自覚は……ある。

「……りお」
「ん、水飲めるか?」

 変態と可愛くののしりながらも、どこもかしこも敏感で肌に触れる度にびくりと身体を跳ねさせてあえいでいたシズカも悪い。俺が全面的に悪いけど、シズカも少しだけ悪い。
 ぴったりと閉じた後ろをほぐす。
 初めてはどうしてもつらいだろうから、ゆっくりと時間をかけてほぐしていくしかないな。
 俺は自分の性器を見詰める。
 もう少し小さくても、いや、細くても良かったかもしれない。そうしたらシズカに入れるまでの時間が短くなったのに。そんな馬鹿みたいなことまで考えてしまう。
 くたりとしているシズカを支えて口移しで水を飲ませる。

「ん、んぅッ」

 はぁ、可愛い。
 まだしゅうしんが強いのか裸体を隠すように横向きに丸まるその姿は、後ろから見れば無防備で、ほぐすのに使った香油がももまで垂れて誘っている。

「シズカ、ちょっと待ってて」

 とりあえずシーツをかけてその場を離れようとすると、待ったがかかった。

「りお? どこかいっちゃうの?」
「行かないけど、抜いてくる。シズカの濡れた身体、見るだけでつ」

 これを見て平常心でいられたら、男じゃねぇ。本人は眠そうに微睡まどろんでいるのがまた可愛い。

「やあ」
「少しだけ待ってな? 終わったらいっしょに風呂入ろ」
「やぁ、置いていかないで……」
「置いてくわけねぇだろ?」

 はぁ、可愛すぎて心臓、止まりそう。
 眠りとのはざで幼くなっているのか、普段は聞き分けが良いのに。
 伸ばされた腕を取ってシーツごと抱き締める。

「シズカ、ちょっとだけ。たぶん、すぐだから」

 流石さすがに目の前で擦るのははばかられる。

「おいてっちゃ、いや」
「置いてくわけがない」

 少しでもシズカが不安になるならやめよう。シズカの可愛さには誰も勝てない。
 俺が応えると、驚くほどきつく抱き付いてきた。
 いつもシズカは口ではぎゅ、と言うけれど、手はほぼ添えるだけだ。そんなシズカが放すまいと俺の背に腕を回してぎゅうぎゅう締め付ける。
 それが嬉しすぎて、俺はその頬に吸い付いた。
 引っ付いていると自然に気付く、そこのふくらみ。シズカも例外ではなく、俺のそこをとろりとした顔で擦る。

「こらこらこら」
「だめ?」
「駄目なわけがない」

 この小悪魔め。これは、意識がハッキリとしたらしゅうで落ち込むかもなぁ。やめといたほうがいい。だが、こんな小悪魔なシズカを前にして引き下がれない。
 ふふっと笑うシズカは、シーツごと倒れ込んで、あろうことか俺の腰に掴まり――
 スヤスヤと寝息を立てるシズカに本気で天をあおいだ。

「小悪魔め……次は覚えてろよ?」

 長い前髪をぐしいて、頬を指でつつく。
 浄化の魔法で綺麗にしてから目に毒なシズカの裸体にもう一度シーツを巻き直し、大切に抱き締めて一緒に眠ることにした。眠れるかはわからねぇけど。


   ○ ○ ○


「――はよ。夜だけど」

 パチリとその目を開いてこちらを凝視するシズカ。次の瞬間、スッと視線を外して、わずかに下がってシーツへもぐり、また戻ってこちらをうかがる。自分が裸なことにも気が付いたのか、ぽぽぽっと音がしそうなほど赤面した。

「あぁ、可愛い」

 そのひたいに口づけをして、俺は彼の身体を引き上げる。

「おはよう、ございます……」
「ふは! なんで敬語?」
「リオ怒ってない……?」
「あんなんで怒らない。ってか、俺が怒られるべき。がっつきすぎた俺が全面的に悪い」

 ……シズカが可愛いってのにも責任はあるけど。

「寝ちゃってごめんね?」
「ちゅーしてぎゅーしてくれたら許す」
「……ぎゅ。……ちゅうは、して?」
「鼻血出そ」

 昼過ぎから触れ合って、今は夜。微妙な時間になってしまった。
 綺麗にはなっているが、気持ち的に風呂へ入る。もちろん今度は性的には触らずに。
 夕食は時間停止をかけていたものを一緒に摘まんだ。昼寝をしたシズカは、眠くないからと肩にいるメルロを時折でながらこの国の歴史書を読む。
 あの聖女は積極的に文字の勉強をしていると噂されていたが……シズカは初日から文字が読めた。今は昼間に書き取りも練習しているそうで、真面目で良い子すぎる態度に見ていて心配になる。
 読書が終わったのか、シズカは日課になったメルロについて書いてある本を手に取った。
 メルロについては解明されていないことも多くファンタジー仕様ではあるが、シズカはメルロを知ろうと必死なのだ。

「メルさん、メルさんはこのつきそうを食べると知恵が上がるって書いてあります……」
『ムイッ』
「やっぱりもうかなり頭良さそうだし、沢山食べたんですか?」
『ムムイッ』
美味おいしいんですか? 月見草……この本には月明かりを溜めて光る、別名こうそうって書いてありますけど……」

 夜光草――緑っぽく光る雑草か。

「眠くないなら見に行くか?」
「え?」

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