伯爵閣下の褒賞品(あ)

夏菜しの

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24:ある朝の一コマ

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 朝食を終えて玄関へ。
 ベリーはコートを手に玄関までやってくる。

 今日も、いつも通りベリーが玄関まで見送ってくれた。しかしいつも通りなのはそこまでで、ベリーは手に持ったコートを渡してくれない。
「ベリー、コートを」
 呆けている様子はないんだが、不思議に思って声を掛ける。
 すると彼女は恥ずかしそうに、だがはっきりと、「今日から朝晩キスをしましょう」と言った。
「は?」
「な、仲の良い夫婦ならこれくらい当然です」
 それに関しては、否定も反論は非常にし辛いので流すとしてだ。
「当然か……」
「ええ、当然です」
 言っている本人も恥ずかしいのだろう、顔がやや赤く、こちらを見上げるアーモンド形の瞳もちょっと揺れている。

「行ってくる」
 耳元でそう囁きつつ頬に口づけをした。
 これで良いだろうとコートに手を伸ばしたが、なぜかベリーはひょいと避けた。
「ベリーコートを」
「あ、あのっ少し屈んでください」
 言われるままに屈むが、もっととさらに要求が、なんだろうとさらに屈み、もう少しとさらに一声。結局半分くらい腰を曲げたところでベリーが首に手を回してきて頬に柔らかいものが触れた。
 押し付けるようにコートが手渡されて、
「行ってらっしゃい」と押し出される。
「あ、ああ」
 俺は満足そうな笑みを見せるベリーに見送られて家を出た。

 この日以来、我が家では〝行ってらっしゃい〟と〝おかえりなさい〟の口づけが習慣となった。
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