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本編
10:逆ハーエンドのまさに裏
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謎のフラグが立ったわ……
さて、自分に好意を持っていない男性との距離感と、好意を持っていると認識した男性との距離感、これについて考えて見ましょう。
答えはイコールではないよ!
つまり、先ほどまでなんの問題なかったこの距離は、いまや身の危険を感じる距離に変わっていると言うことね。
だって、どう見ても下心ありでしょ!?
そんな私の心の内を知らない殿下の立ち位置はさっきよりもグイグイと来ていて、なんだかいちいち近いわ。
お願いだから私のプライベートスペースにこれ以上入ってこないで~と、少し泣きたいわね。
馬車から降りる時、スッと先に降りて私へ手を差し出す殿下。
……その手、取らないと駄目かしら?
玄関へ歩く際に、これ見よがしに腕を差し出してくる殿下。
つまり手を掛けろと、そう仰るのだろう。
学園帰りのいまは歩きにくいドレス姿でもないのに、それをどうしろと……?
もはや呆れ~じゃ無くて、諦めた私はレディらしく、男性のエスコートを甘んじて受けることにしたわ。
なぜならそうした方が角が立たないからよ。
夜の訪問にも関わらず礼儀正しく迎えられた屋敷に入り、私は始めてそこが誰の屋敷だったのかを知った。
出迎えた壮年の紳士はボードレール公爵閣下、つまりミリッツァ様のお父様だわ。
「ボードレール公爵、夜分遅くに申し訳ない。学園から参上したのでこんな時間になってしまった」
「いえいえ殿下お気になさらず、娘も殿下にお会いできて嬉しく思うでしょう。
そして、アルテュセール侯爵令嬢。
貴女も来てくれて感謝するよ」
そう言って力ない笑みを見せる公爵閣下。
私たちはミリッツァ様にお会いすることになり、案内を受けた。
と、その前に。
「申し訳ございませんが、こちらの服にお着替えください」
執事が差し出してきたのは、質の良いワンピースだったわ。
確かに少し汚れているかしら? と思って受け取るが、私は本当の意味を理解せぬままに学園の制服から差し出された服に着替えることになった。
その後、執事の案内で私たちはミリッツァ様の私室へと案内されたわ。
年頃の女性の部屋に同年代の男が入って良いのかと少々心配したが、ミリッツァ様が起きられないそうなので仕方が無いらしい。
学園を追われてからずっと体調を崩していたと聞き、私はとても驚いたわ。
部屋の中は少し薄暗く、執事によってすぐにランプが灯される。
ミリッツァ様はベッドから半身を起こして、儚げな笑顔で私たちを出迎えてくれた。
「久しぶりねジルダ様、フェルナン殿下もありがとうございます」
本当に力ない言葉だったわ。
どういった病なのかと思って心配したのだが、私はすぐにそれに気づくことになった。
聡明で凛としていたミリッツァ様の面影は無く、ときおり、呆けたように虚空を見つめている。そんな時に声を掛けると決まって、
「ごめんなさい、ちょっとぼぅとしていたわ」と、力なく笑うのだった。
このときになって私は、学園の制服を脱いだ理由を理解した。
全校生徒の前で、攻略対象全員から糾弾されて学園を追い出されたミリッツァ様。その時の傷はどれほどのものだっただろうか。
見れば嫌でも思い出す学園の制服。それをあえて脱いだのだから、学園の話は間違いなくタブーだわ。
私は当たり障りの無い最近の流行のドレスやスイーツの話を振るように努めた。
ランプの明かりがやや暗いくて解り難いが、ミリッツァ様の顔色はとても悪い。
糾弾されたときの心の傷がこれほど酷いものだったとは、ゲームの中で悪役令嬢ザマァと小気味良く思っていた前世の自分を叱り付けたい。
時間にすればほんの十分も無かっただろう。
私と殿下は執事に促されて、ミリッツァ様の部屋を後にした。
話を聞けば、ミリッツァ様はこれでも随分と良くなったと言う。糾弾された当初は、例え父親とは言えど、男性を見ると怯えて頭を抱えて泣き喚いそうだから。
部屋を出ると公爵家の食卓に呼ばれ、自分が本日はここに泊まると言う話になっていたことを始めて知った。そして泊まるからには、翌日の学園には行けないことを意味している。
と言うわけで、学園には明日の休みの届けが既にされていると言う話だった。
なおこの件について、お父様は最初から最後まで了承済みだと聞かされたわ。
戻ったら、無視三週間と言うところかしらね?
食事の席にはミリッツァ様は居なくて、公爵閣下とフェルナン殿下の二人と一緒に取る事になったの。
大きなテーブルに席は三つ、誕生日席は公爵閣下が座り、その左側にフェルナン殿下そして、何故か私がその隣に座っているわ。
なぜ公爵閣下の右側じゃないのか?
食事が始まる前にフェルナン殿下が私を今の席へとエスコートしたからよ……
エスコートされたところにフォークやナイフは無く、慌てて給仕が移動していたのを申し訳なく思ったわね。
バランスが悪いったらないわよね!?
食事が始まると公爵閣下の言葉から、おのずとミリッツァ様とフェルナン殿下の繋がりを知ることになったわ。
以前より王太子の婚約者候補だったミリッツァ様は、幼い頃より王宮でよくフェルナン殿下ともお会いして遊んでいたそうだ。つまり三人は幼馴染と言うことになるのね。
だから本日、私を連れてミリッツァ様のお見舞いを兼ねて訪ねたのだとか。
なぜ私なのかというのは愚問、これが殿下より依頼された話に関わることに違いない。
「俺はね、いまのミリッツァ姉さんが可哀相でならないんだ。
だからあの馬鹿兄貴に思い知らしてやりたいと思ってる。たとえその結果が王位簒奪を意味したとしてもね」
ミリッツァ様は春を待って隣国へ嫁ぐそうだ。王太子の婚約者筆頭だった彼女は、この国ではその立場を持て余し、きっと婚礼に至らないだろうと言うことから決めたらしい。
幼馴染の女の子をそんな状況に追い込んだ兄を彼は許さないと、彼は予想以上に低い声で言ったわ。
その時の彼の瞳はここではないどこか遠くのほうを見つめていた。
ここまで聞いてしまうと、私も流石に決断をする必要があったのよ。
だから洗いざらい、私は話すことにしたわ。
アントナン殿下から受けたハーレム状態を破壊する依頼と、そしてオディロン殿下から受けたケヴィン先生への報復の話をね!
さて、自分に好意を持っていない男性との距離感と、好意を持っていると認識した男性との距離感、これについて考えて見ましょう。
答えはイコールではないよ!
つまり、先ほどまでなんの問題なかったこの距離は、いまや身の危険を感じる距離に変わっていると言うことね。
だって、どう見ても下心ありでしょ!?
そんな私の心の内を知らない殿下の立ち位置はさっきよりもグイグイと来ていて、なんだかいちいち近いわ。
お願いだから私のプライベートスペースにこれ以上入ってこないで~と、少し泣きたいわね。
馬車から降りる時、スッと先に降りて私へ手を差し出す殿下。
……その手、取らないと駄目かしら?
玄関へ歩く際に、これ見よがしに腕を差し出してくる殿下。
つまり手を掛けろと、そう仰るのだろう。
学園帰りのいまは歩きにくいドレス姿でもないのに、それをどうしろと……?
もはや呆れ~じゃ無くて、諦めた私はレディらしく、男性のエスコートを甘んじて受けることにしたわ。
なぜならそうした方が角が立たないからよ。
夜の訪問にも関わらず礼儀正しく迎えられた屋敷に入り、私は始めてそこが誰の屋敷だったのかを知った。
出迎えた壮年の紳士はボードレール公爵閣下、つまりミリッツァ様のお父様だわ。
「ボードレール公爵、夜分遅くに申し訳ない。学園から参上したのでこんな時間になってしまった」
「いえいえ殿下お気になさらず、娘も殿下にお会いできて嬉しく思うでしょう。
そして、アルテュセール侯爵令嬢。
貴女も来てくれて感謝するよ」
そう言って力ない笑みを見せる公爵閣下。
私たちはミリッツァ様にお会いすることになり、案内を受けた。
と、その前に。
「申し訳ございませんが、こちらの服にお着替えください」
執事が差し出してきたのは、質の良いワンピースだったわ。
確かに少し汚れているかしら? と思って受け取るが、私は本当の意味を理解せぬままに学園の制服から差し出された服に着替えることになった。
その後、執事の案内で私たちはミリッツァ様の私室へと案内されたわ。
年頃の女性の部屋に同年代の男が入って良いのかと少々心配したが、ミリッツァ様が起きられないそうなので仕方が無いらしい。
学園を追われてからずっと体調を崩していたと聞き、私はとても驚いたわ。
部屋の中は少し薄暗く、執事によってすぐにランプが灯される。
ミリッツァ様はベッドから半身を起こして、儚げな笑顔で私たちを出迎えてくれた。
「久しぶりねジルダ様、フェルナン殿下もありがとうございます」
本当に力ない言葉だったわ。
どういった病なのかと思って心配したのだが、私はすぐにそれに気づくことになった。
聡明で凛としていたミリッツァ様の面影は無く、ときおり、呆けたように虚空を見つめている。そんな時に声を掛けると決まって、
「ごめんなさい、ちょっとぼぅとしていたわ」と、力なく笑うのだった。
このときになって私は、学園の制服を脱いだ理由を理解した。
全校生徒の前で、攻略対象全員から糾弾されて学園を追い出されたミリッツァ様。その時の傷はどれほどのものだっただろうか。
見れば嫌でも思い出す学園の制服。それをあえて脱いだのだから、学園の話は間違いなくタブーだわ。
私は当たり障りの無い最近の流行のドレスやスイーツの話を振るように努めた。
ランプの明かりがやや暗いくて解り難いが、ミリッツァ様の顔色はとても悪い。
糾弾されたときの心の傷がこれほど酷いものだったとは、ゲームの中で悪役令嬢ザマァと小気味良く思っていた前世の自分を叱り付けたい。
時間にすればほんの十分も無かっただろう。
私と殿下は執事に促されて、ミリッツァ様の部屋を後にした。
話を聞けば、ミリッツァ様はこれでも随分と良くなったと言う。糾弾された当初は、例え父親とは言えど、男性を見ると怯えて頭を抱えて泣き喚いそうだから。
部屋を出ると公爵家の食卓に呼ばれ、自分が本日はここに泊まると言う話になっていたことを始めて知った。そして泊まるからには、翌日の学園には行けないことを意味している。
と言うわけで、学園には明日の休みの届けが既にされていると言う話だった。
なおこの件について、お父様は最初から最後まで了承済みだと聞かされたわ。
戻ったら、無視三週間と言うところかしらね?
食事の席にはミリッツァ様は居なくて、公爵閣下とフェルナン殿下の二人と一緒に取る事になったの。
大きなテーブルに席は三つ、誕生日席は公爵閣下が座り、その左側にフェルナン殿下そして、何故か私がその隣に座っているわ。
なぜ公爵閣下の右側じゃないのか?
食事が始まる前にフェルナン殿下が私を今の席へとエスコートしたからよ……
エスコートされたところにフォークやナイフは無く、慌てて給仕が移動していたのを申し訳なく思ったわね。
バランスが悪いったらないわよね!?
食事が始まると公爵閣下の言葉から、おのずとミリッツァ様とフェルナン殿下の繋がりを知ることになったわ。
以前より王太子の婚約者候補だったミリッツァ様は、幼い頃より王宮でよくフェルナン殿下ともお会いして遊んでいたそうだ。つまり三人は幼馴染と言うことになるのね。
だから本日、私を連れてミリッツァ様のお見舞いを兼ねて訪ねたのだとか。
なぜ私なのかというのは愚問、これが殿下より依頼された話に関わることに違いない。
「俺はね、いまのミリッツァ姉さんが可哀相でならないんだ。
だからあの馬鹿兄貴に思い知らしてやりたいと思ってる。たとえその結果が王位簒奪を意味したとしてもね」
ミリッツァ様は春を待って隣国へ嫁ぐそうだ。王太子の婚約者筆頭だった彼女は、この国ではその立場を持て余し、きっと婚礼に至らないだろうと言うことから決めたらしい。
幼馴染の女の子をそんな状況に追い込んだ兄を彼は許さないと、彼は予想以上に低い声で言ったわ。
その時の彼の瞳はここではないどこか遠くのほうを見つめていた。
ここまで聞いてしまうと、私も流石に決断をする必要があったのよ。
だから洗いざらい、私は話すことにしたわ。
アントナン殿下から受けたハーレム状態を破壊する依頼と、そしてオディロン殿下から受けたケヴィン先生への報復の話をね!
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