モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき

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「ただいま~あーお腹空いたわ!」

玄関から賑やかな声で張り詰めていた空気が弾けた

「兄さん、ただいま!」

「あっああ。お帰り」

難しい考え事から解放され、あからさまにホッとするジョージ様、シャーロットは私の隣に座ってメイド達にお茶やお菓子を要求する。

今日は朝から私が自作ケーキやクッキーを用意していたのを知っているから興奮気味である

一応、ジョージ様に茶菓子は出して有ったし、夕飯にもチキンを下味付けて、具沢山のシチューや発酵したパン、サラダも有る。

食後のプリンも作って有るし、伯爵家の方々が遊びに来た日は何時もより豪華だ

土産の玉ねぎでオニオンコンソメスープと合わせても後、一時間ぐらいで完成出来る

ホストをシャーロットに任せ、私は夕飯作りの為に立ち上がった

料理は嫌いじゃないのよ、前世で普通に作っていたからね

お菓子作りも嫌いじゃないが材料費が嵩むのとまだ少女の私やシャーロットに食べ過ぎは良く無いからなるべく、身体に良いきな粉を使って簡易なおやつを作るようにしているわ。
元平民のシャーロットは甘いものに目が無くてきな粉とみりんを捏ねたきな粉棒でも嬉しそうだけど、やはりケーキは特別に好きなよう。

せがまれても誕生日と来客時だけのお楽しみだから余計に伯爵様がお越しになるのを心待ちにしているのは可愛いと思う

前世持ちとしてはフルーツは欠かせないけれどフルーツは高い。うちの領地に生えるユスラウメなら梅雨の季節なら採れるから映えて良いのだけど。

「もっといっぱいよそって!」

元気なシャーロットの声は嬉しそうで余り心配は無いようだ

扉越しに楽し気な笑い声が響いた

「おい!」

「…マイセン様?」

突如、廊下に響く怒鳴り声に振り向くとシャーロットと一緒に居たはずのマイセン様が立っていた

「僕はお前みたいな意地悪な姉と結婚なんてごめんだからな!」

「意地悪、ですか?」

何かしただろうかと首を傾げれば人差し指を突きつけられた

「シャーロットに意地悪な事をいっぱい言うって聞いたからな!」

「例えば?」

「お、お菓子の量が少ないとか!」

「有るだけ有難いと思って貰わねば。我が家はシャーロットの散財で食材を買うので精一杯ですの」

「好きな服も買わせて貰え無いともッ」

「シャーロットが買いまくったドレス代の請求が毎月、大量に来て返す宛も無いからもう領地の洋品店からお断りされてますわ。全額とは言いませんけれど半額返すまでは信用が置けませんと、当然ですわね?」

ツケ払いするにしても毎月、高額商品を購入して入れば終わる事の無い借金生活である

これでも領地内かつ領主家だから待って貰えているのだ

シャーロットはとにかく買うが、古いドレスも手離しはしないからリサイクルに私の元ドレスすら売らない。
装飾品も然り、リボンの一つすら絶対に譲らないのだ。

良くしてくれる使用人の子に分け与える、なんて事も無い

それは執着、とも言える程だった
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