モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの？【完結】

7

「お前…」

「知っていて当たり前でしょう。お祖父様が私の為に使う様にお金を送っていたのも自分の家を継ぐ孫だからでしょう。実際はシャーロットやマリア義母様へ使っていたようですが」

再婚するまで平民として暮らす2人へ生活費として渡していたのは帳簿を見れば明らかだ

税金と違いお祖父様の個人資産の受け渡しは国に提出する書類に記載義務が無いから表沙汰にならなかっただけで。

「【返して】貰いますよ。父様」

にこりと微笑む私は王家の紋章が入った手紙をポケットから出した

薔薇の華紋を見た瞬間、空気が止まった

シャーロットだけ呑気に綺麗、私も欲しい！と言っていたが、流石に義母が止める。

欲しかったら王家の方に言わないとだものね、流石にそれは何でも無い一介の男爵夫人では出来ないわね

父が震える手で中を改めてると涙目で謝罪して来る。この場に伯爵様が居るのも忘れて何とか許して欲しいと。

「ヒナタにも、謝るから」

母へやっと謝罪を口にしたが、それも居座る為だけ。上辺だけの言葉だ

「18になるのを待つには環境が劣悪過ぎるので申し訳有りませんが、【ご家族】ごと出て行って下さいませね」

薔薇に金は国王陛下直々の通知だ

父の実家は1代限りの準男爵家、元の家は既に平民になって父方の祖父も祖母も既にこの世から離れたので父はまさに身一つでの再出発になる

父の経営手腕で赤字ではあるが生活には困らない程、遺産を残した母方のこの家でぬくぬく男爵様と丁重に扱われていたのにご愁傷様です

ここに来て旗色悪くなったのを感じたメイド頭が媚るように話し掛けるが強く睨み返した

「義母様のご友人だったから雇われたようですが、本来使用人が家主に遠慮無く声掛けは無礼ですよ。まして今は伯爵様がいらっしゃるのです、貴女は貴族の家へ仕えるには先ず礼儀作法を習う所から始めなさい」

うちは貴族でも男爵家、それも貧乏男爵家なのでそれ程、敷居は高くないが、されど国王陛下から認められた貴族家だ。

馬鹿にされて滑られっぱなしでは面目も丸潰れ。強く気高く、例え中身が心底、庶民だとしても私、リアラも15年この世界で生きているのです

「父様は仮男爵の地位を没収されました、貴女方も本日付けで出て行って下さいな」

泣いて追い縋る父を伯爵様が憐れみを感じたのか父を無理矢理立たせ伯爵領へ連れ出してくれた。

シャーロットは事態が良く分からないのか久しぶりに伯爵領へ行けるので楽しそうに着いて行く。
義母は私の個人資産返金義務の話辺りから青醒めて大人しく父に着いて行った。

そして、昔の使用人にこっそり連絡取り合っていた私は彼らを呼び戻し、義母の腹心とも呼べる今の使用人を解雇した

皆、懇願したり泣き落としをしようとしていたけれど、ずっとメイド服を着て食事を作るまだ小さな少女を誰1人護らなかったのだからバッサリ切りますわ