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っとベッドから抜け出すことにした。部屋を出る前に振り返ってみたものの起きる気配は全く無いようだ。これなら安心して出掛けられそうだなと思い玄関に向かったのだが、扉に手をかけた瞬間後ろから声をかけられたのである。振り返るとそこには寝ぼけ眼を擦りながら立っているリリィールの姿があったのだ。どうやら起こしてしまったみたいだなと思いながら謝罪の言葉を口にすることにした。「ごめんなさいね起こしてしまって……」そう言うと彼女は首を横に振りながら言った。「ううん大丈夫だよ気にしないで」そう言いながら微笑んでくれたのを見てホッとした気持ちになると同時に自然と笑みが溢れてくるのを感じた。そんなやり取りの後、改めて行ってきますと言って家を出る事にした私だったがまたしても声をかけられてしまう事になったのである。振り向くとそこにはやはりというかなんというかリリィールが立っていてこちらを見ていたのだがその表情はどこか不安そうな様子だった。どうかしたのだろうかと思っていると彼女は恐る恐るといった感じで話しかけてきた。「ねえ、セリア?ボクと一緒に旅に出ない?」
一瞬何を言っているのか理解できなかった私はポカンとしてしまったがすぐに正気に戻ると慌てて聞き返した。「えっ?今なんて言ったの?」そう聞き返すと彼女は先程と同じ言葉を口にした。それを聞いた私は戸惑いを隠しきれなかったが同時に嬉しさが込み上げてきたのも事実であった。なぜなら、これまで誰かと一緒にいたいと思ったことなど一度も無かったからだ。ましてや異性に対して好意を抱くなど以ての外である。だが、今は違う。目の前にいるこの女の子になら心を許せるかもしれないと思えるようになっていたからである。それにリリィールと一緒なら退屈しないで済むだろうと思ったという理由もあるけどね!そんなわけで二つ返事で了承することにした私だったのだが一つだけ問題があったことを思い出したので聞いてみることにする事にしたのだ。それは旅費についてのことだった。というのも今の私達には金が無いからである。一応、生活する分には困らない程度の蓄えはあるのだが贅沢はできない状態だったりするわけでどうしたものかと考えていると彼女は微笑みながらこう言ってきたのだ。「大丈夫、ボクに任せておいてよ」自信満々といった表情で言うものだから任せることにしたんだけど本当に大丈夫なのかなぁ……?心配だなぁと思いつつもその日の夜を迎えることになるわけだが、その翌日の出来事によってそんな考えは吹き飛んでしまう事になるのであった。
早朝、目が覚めると隣で寝ていたはずのリリィールの姿が見えない事に気づいた私は辺りを見回してみる事にしたのだがどこにも見当たらないようだ。一体どこに行ったのだろうと思って探していると外から声が聞こえてきたので外に出てみるとそこには信じられない光景が広がっていることに気づいた私であったがそれと同時に納得する部分もあったりするのよねコレがさ。何故ならそこにいたのは巨大なドラゴンの姿だったからだよ!しかもよく見ると背中に誰かが乗っているではないか!誰だろうと思って目を凝らしてみるとそこにいたのはリリィールだったのである!どうやら彼女は竜族だったようだ!道理で強いわけだよね!などと感心している場合ではないことを思い出して声をかける事にした。
するとこちらに気づいたらしい彼女が手を振ってきたのでそれに応えることにしたのだが次の瞬間、驚くべきことが起こった!何と彼女の背中から飛び降りたのである!そしてそのまま落下していく様子を眺めていることしかできなかった私に向かってこう言っ
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