扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

文字の大きさ
5 / 49

扉をくぐってほしい理由がある その二

しおりを挟む
 それから私はうとうととしていた。
 大体、精霊と人間では時の流れが違う。それに周囲に魔力の強い人間がいなくなったからだ。

 アルテールの人間は大なり小なり魔力がある。
 精霊にとって魔力のある人間のそばはとても居心地がいい。

 その反面、魔力の少なくなるとどうしてもぼんやりとしてしまうのだ。
 といっても、アイドリア王家の人間は魔力の強い人間が生まれる確率が高いんだけど。
 なのに、シンクよりも魔力の強い者は王家から現れていない。

「王には王子二人、いたんだけどねぇ」
 愛の女神、ステラフィード様の力で王に後妻を迎えることが出来、跡継ぎを設けることもできた。

「大丈夫、王は妃をめとり、妃は王子を二人産む」
 愛の女神、ステラフィード様の言葉。

 その通り、間もなく王は妃をめとることができ、二人の王子を産んだ。
 だけど、ここで突っ込みが入る。
 なんで、王子が二人なの。実際、跡継ぎなら一人で十分なはずなのに。

 だけど、二人だったのには理由があった。
 シンクがいなくなったのに、魔王の呪いが残っていたからだ。
 第一王子は事故で亡くなり、王位は第二王子が継ぐことになった。

 正直、真面目だった第一王子が亡くなってチャラ男の第二王子が後継者になったのは私なりに不安を抱いた。
 だけど、第二王子は魔道の天才少女を妃に迎えた 

(その点は評価してもいいけれど…)
 シンクの弟たちには魔力が一切なかったからだ。
 アイドリアの王家には代々、魔力の強い人間が生まれていたのに。

 王子たちに魔力がなかったことに私はがっかりした。
 シンクの作り上げた異世界に通じる扉は魔力のない者には開けられない。

 それもかなり、レベルの高い魔力の持ち主ではいけない。
 何しろ、導師たちがあの後、扉に手をかけたけど、ぴくりとも動かなかった。

「はぁ、」
 扉の前でため息をついていたら。
 突然、シンクの魔力を感じた。

 ギィー。
 音をたてて扉が開いた。
「シンク、」

 私は躊躇なく扉の中に飛び込んだ。

「あの、」

 そこには一人の女性がいた。
「シンクはどこ、」
 彼女が何者かは知らないけど。今、一番大切なのはシンクの行方だ。
 あれからどのくらい、月日がたったのか分からない。それにアルテールとこの世界とでは時間の長さが違うかもしれない。

 実際、アルテールは数十年の月日がたっている。
 精霊の私は年をとらない。だけど、人間であるシンクは確実に年を取っているはすだ。
「フルフラさんね」
 扉の前で待っていた女性が私を見た。

「貴女は誰。シンクはどこにいるの」
 彼女が何者かなんて大体、検討がついている。そんなことより、シンクの無事を確認することが一番大切だ。
 今まで、彼の行方が気にかかっていたんだから。

「あの人は亡くなりました」
「嘘よ」

 私はむっとして彼女をにらみつけた。
 あのシンクが死ぬなんて考えられない。大体、シンクの造った扉はここにあるじゃない。
 彼が死んだのなら扉があるのは一体、どうして。

 いや、それは違う。

 アルテールでも月日が流れている。
 王は亡くなり、第二王子が跡を継いだ。
 こちらの世界の時間がアルテールと同じくらい流れているのならシンクが死んだのも納得できる。
 ただ、私が信じたくないだけなんだ。

「貴女は誰、」
 聞かなくても分かっている。
「私は信の妻です」
 分かっているけど。シンクはこちらの世界では信と名乗っていたのか。

 だけど。

 やっぱり、妻という言葉を聞くと複雑だなぁ。
 シンクと私はそもそも、種族が違う。だから、決して結ばれることはできない。
 分かっているけど。

「信から貴女のことは聞いています。この扉が開いたらきっと、貴女がこちらにやってくるだろうと聞いていました」

 そうか、もう話がついているのか。
 なら、安心して姿を現すことができる。
 実際、精霊の姿のまま話をするというのは都合の悪いこともある。

 ふわっ。
 私は人間の姿に変化した。

「それでシンクが亡くなったというのは。扉が開いたのは何故、」
「信からこれを預かっています」
 差し出されたの魔石。
 魔石には様々な種類がある。これは記憶の魔石。握りしめてしばらくすると頭に直接、記憶が流れ込んでくる。

 それはシンクがこちらの世界でどう過ごしたのか、私に伝えてくれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...