扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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アリスと一郎との出会い

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「姉上、戻っていたんですか」
 アルファードが城に戻ってきたらアリスが離宮から帰ってきていた。
「あら、帰ってきたら何か都合が悪かった。

「そんなことはありません」
アリスの顔を見て彼は嬉しそうな顔になった。
「でも、何で離宮から戻ってこられたのですか」

「そりゃ、貴方が大学を卒業したと聞いたから」
「卒業式があったのはこないだですよ。母上がお祝いの席を設けるとおっしゃられていました」

「だから、戻ってきたのよ。貴方の晴れ舞台ですものね」
 にっこりとほほ笑むアリスを見てアルファードは嬉しくてたまらなかった。

「そういえば、姉上。扉の向こうからイチロウも来てくれるんですよ」
「シンクおじ様の孫という人ね。向こうの世界は日本という国だったわね」

「姉上も興味があるのですか」
「そうね。あちらの国のことがとても興味があるわ」
「そうですね。アイリアは扉をくぐってあちらの世界に行きましたが。なかなか、面白かったそうですよ」
「私たちはあちらに行けるのかしら」

「あちらの世界に興味があるのですか」
「そうねぇ、交易とかできたら面白いんじゃない」
「それはどうでしょう。こちらとは随分、違うと思うんですが」
「魔道具がないから。だけど、向こうでは魔法がなくても便利な道具があるのよ」
「えっ、」

 アルファードはアリスの顔を見て「姉上、なんでそんなことを知っているのですか。今まで、離宮に引きこもっていたはずですよね」
「えっ、」アリスはしまったという顔になったが、
「アイリアに聞いたのよ。あの子、イチロウと仲がいいんでしょ」
「イチロウ、」
 呼び捨てなのか、アルファードのこめかみはひくひくと動いていた。

「それにしても盛大だなぁ」
 イチロウはため息をついて周囲を見回していた。
 考えてみたらアルファードが大学を卒業しただけなのだ。

「どうしたの、イチロウ」
「いや、アルファードがさつきからこっちを凄い顔でにらんでいるんだけど」
「そういえば、」

 さすがにパーティーの主役だけあって、アルファードの周囲には沢山の女の子が取り巻いていた。
 あいつも一国の王子だから女の子が集まるのは当然だろう。
 モテモテなんだから少しは嬉しそうな顔をすればいいのに、何故か僕を凄い目でにらみつけている。

「僕、何かしたんだろうか」
 アイリアに聞いてみたが、「さぁ、お兄様が何を考えているのか私には分からないわ」

「貴方がイチロウね」
「えっ、」
 声をかけられて振り向いたら、アイリアに似た女性が立っていた。

「初めまして、私はアリス・デニー・ファン・アイドリア。アイドリアの第一王女です」
 僕に優雅なお辞儀を見せる彼女。
 そうか、彼女がアイリアが言っていた引きこもりのお姉さんなのか。

 アイリアから何かと聞いているし、僕より2歳年上とはいえとても20歳越えには見えないほど若々しい。
 どちらかといえば、アイリアと二卵性の双子と言ってもおかしくないくらいだ。

 しかも、齢2で弟の面倒を何もかもみてきたというのは賞賛に値する。

「こちらこそ。榊一郎といいます」
「日本という国の人なのよね」
「そうですよ」

 なんだろう。日本という言葉に彼女は引っかかっているみたいに思える。
 なんだか、そんな気がするけど向こうの世界に興味があるのかな。

 だけど、あっちの世界に行ったのは僕の爺さんとアイリアとフルフラだ。フルフラは精霊だし、爺さんとアイリアも魔力を持っている。
 誰でもお互いの世界を行き来できるのだろうか。

 試してみるべきなんだろうか。といっても、扉は二つの世界をつなげているだけ。
 確かにそれだけでも大変なことだけど。

「あの、僕の顔に何かついていますか」
「あっ、ごめんなさいね。黒髪、黒目の人に会うのは久しぶりだから」


「アイドリアにも黒髪、黒目の人がいるんですか」
 何度もこの世界にきているけど、黒い髪の人は見たことがない。といっても、こちらの世界もアイドリア以外の国があるんだから他国人なら黒髪の人もいるかもしれない。

「そうね。アイドリアには黒髪の人は少ないわ。私もここでは見たことがないから」

 ?
 ここで僕は妙な気分になった。確か、この人は離宮に引きこもっていたんだよな。
「どこで黒髪の人を見たんですか」

「気になる」
「いや、別に」
 ジー。

 なんだか、背中に視線を感じる。振り向くと、アルファードとばっちり目があった。
(アイリアがアルファードはシスコンだと言っていたが。これはかなり重症じゃないか)
 
 と言っても、僕は一人っ子みたいな環境だったので兄弟がいるという感覚が良く分からない。
 一応、一つ違いの弟がいるがあいつは僕のことを兄と思っていない。
 
 何が言いたいかというと、僕には兄弟同士の心境がイマイチ、分からないのだ。作家として、これはかなり致命傷ではないだろうか。
「それより、向こうとこちらはどう違っているんでしょう。
 
「それより、向こうとこちらはどう違っているんでしょう」
「と言われても、僕は比べるほどこちらの世界に来ていないんです。そうですね。移動手段は車や電車、バスなどになります」

「日本は戦争で滅茶苦茶になったのに車や電車が走るようになったのね」
「えっ、」
 一郎は驚いてアリスを見た。

「確かに日本で戦争があったけど、アリスさんは何でそんなことを知っているんですか」
「えっ、」
 アリスはしまったという顔になった。

「僕、アイリアにもそのことを言ったことがないんだけど。というか、戦争があったのは80年近く昔の話です。もう復興しているんだけど、」
「あの、その、」

 アリスは困ったように、「そういえば、私、お母様に用があったのだわ。イチロウさん、これからもアイリアと仲良くね」
 そそくさと立ち去るのであった。
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