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怪奇!顎チンコ男!
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本業で食べていけたらどれだけいい事か……。
私は叶いそうにない願いを胸に毎日仕事に行っている。
私の副業は斜陽のホラー雑誌の編集部だ。最近はこれが本業になりつつあるけれど、それでも副業だと言い切りたい。言わせて欲しい。
私が「とある企画」の記事を書いていると、編集長が直々に声をかけてきた。
「ルミさん。次回は貴女にこの企画の記事を書いてもらいたいんだけど」
渡された企画書のタイトルは、今、私が記事を書いているものと同じだった。
この企画の記事はそもそも編集長が書いていた物だったのに、いつのまにか私が書くようになっていた。
私が本業に打ち込めないのはこのせいもあった。
「そう言いつつまたじゃないですか」
「売れない官能小説を書いてるくせに、誰が君に仕事をあげてると思ってるんだ?」
咎めるような私の言葉に、編集長は痛いところを突いてくる。
私は駆け出しの売れない官能小説家だ。仕事がなくて食べるのに困った私を編集長が拾ってくれたのだ。
しかし、今考えると私に記事を書かせるつもりで声をかけたような気がしてならない。
「書いてくれたら今月もお給料に謝礼をつけようかなぁ」
やはり、背に腹はかえられなくて、私はもみ手すり手で編集長に笑顔を向けた。
「わっ、この企画楽しみだなぁ」
私は残飯を漁る野良犬のような気分で編集長から企画書を受け取った。
企画書のサブタイトルはこう記されていた。
『怪奇!顎チンコ男は最高のテクニシャン!?』
「顎チンコ男……」
編集長が考えたのか、あまりのパワーワードに目がチカチカした。
このタイトルでどうやって着地させる気なのよ!
あまりの無茶振りに私は頭を抱えた。
「ま、頑張ってね。『ムフフ』な所をもっと期待してるから」
編集長はそう言って自分のデスクへと戻っていった。
私が、というよりも編集長が手がけている企画の名前は『ムフフ企画』だ。
ホラー雑誌なのに、なぜ、そんな企画があるのかというと深い理由がある。
それは、5年前の創刊号の時の話だ。
やる気満々だった編集長はページ数をミスった。
あと、印刷をする段階で1ページだけ足りなかったのだ。
そこで、本来ならページ数を減らせばいいものを、編集長は何をとち狂ったのか思いつきで捏造記事を書き上げたのだ。
内容は、企画で幽霊が出るラブホに彼氏と共に行った。部屋に入っても霊はでなかったが、ムラムラしてそのまま彼氏とエッチをしてたら、幽霊が現れて鑑賞されて興奮した。お尻の穴を冷たい舌で舐められた。
という、なかなかアレな物だった。
よく、こんなもん書いたな。そして、読者さんは怒らずによく読んだな。と、話を聞いた時に私は思ったのだが、『記者:編集長(女子大生)よしこ』と書かれてあったからなのか、エッチシーンが思いがけず読者ウケが良く。次回から設けられることになったのだ。
人生ってどう転ぶのか本当によくわからない。
ちなみに、編集長は女子大生でもなければ女性でもない。ただのハゲたおっさんだ。加齢臭も追加されている。
しかし、読者のみんなは、ピチピチの女子大生の編集長が書いた物だと信じているようだ。
実態はハゲたおっさんなのに、彼宛にお洒落なシャンプーやリンスが届くのだ。ハゲているのに。使い道なんてないのに。
真っ赤なTバックが贈られた時、編集長は『ムフフ企画』にそれを登場させた。
実際には飛行機に乗る時にマスクがなくて、編集長がマスク代わりにそれをつけたのだけれど。
もう、夢が壊れるのでよしこの話は置いておいておこう。
私は今月分の『ムフフ企画』の記事を書き上げることに集中した。
「はー、終わった」
今月分の『ムフフ企画』を書き上げると、不安材料の宝庫である来月分の企画書に目を通した。
『ムフフ企画』は基本的に捏造なのだが、たまに実話をベースに書くこともある。
今回も完全に捏造になりそうな予感がするが。
「でも、読んでみようかな。なになに?『バーに現れたマスクイケメンに隠された秘密。それは……』」
どうやら、バーに行って行きずりの関係を持った男の顎に陰茎が付いていた。と、書いて欲しいようだ。
ちなみに、よしこは定期的に彼氏が変わっていて今はフリーだ。
「あれ?でも、目撃情報がある」
どうやら、都内の寂れたバーに出没するらしい。
「これは、行くしかないかな」
適当に記事を書いてもいいのだが、目撃情報があるのならいかないといけない。
記事は捏造は承知ではあるけれど、真実も必要だから。
私は企画書に書いてあったバーに向かった。
「バーボンを」
バーテンダーに私はお酒を注文した。
バーに行ったらバーボンだこれは、セックスにコンドームくらいの必須品だと私は思っている。
バーにボン!だからバーボンではない。
「くぅー!」
私はバーボンを一気に煽る。そして、空になったクラスをテーブルに叩きつけた。
直後になって襲いかかってきたのは激しい目眩。
そういえば、私、お酒弱かったわ。
「ブヘッ!グハッ!」
「だ、大丈夫ですか?」
咳き込んでいる私に声をかけてきたのは、黒マスクをつけたイケメンだ。
「これ、よかったら」
差し出されたハンカチを私は迷わず受け取り、口元を拭く。
「なんか、モーレツに眠たい」
私がナンパよろしく、そういうと、青年は私の背中に黒色のジャケットをかけた。そして……。
「二人きりで休めるところに行こうか」
バーボンのグラスはライトに照らされて妖しく光っていた。
「つ……」
月明かりに照らされた部屋で私は裸体を晒して、恥ずかしい場所をマスク男に見せていた。
「脚開くの恥ずかしい?そこを指で広げて見せて」
男に言われるままに、私は陰唇を指で広げて見せた。
男はマスクをずらして唇を露にする。そして、私の陰唇に口づけを落とした。
「あっ、あぁ」
男の舌は男体生物のように、私の中に沈み込んでいく。
「気持ちいい?」
男は私の中から舌を引き抜くとニヤリと笑った。
「うん、」
私はその笑顔に背筋がぞくりとした。
「やっ、あぁ!あん!あん!」
男の舌がしつこいぐらいに花芽に絡みつき。私は何度目かの絶頂を迎えた。
「じゃあ、そろそろ」
男は言うなりマスクを外すと、そこにあったのは勃起した陰茎だ。
「え、うそ」
私はあまりの光景に、言葉を失った。
しかし、男はそんな事など気にした様子もなく、陰茎を私の花弁にあてがった。
そして、顔を振動させてゆっくりと中に沈み込んでいった。
「やっ、ああ」
男の顎振動は絶妙で出し入れを繰り返されるたびに、私のそこはひくひくと震えて陰茎を締め付ける。
そこに。
「顎にチンコがついてるといい事があるんだ。ほら、同時にこんなことも出来るんだよ。ほら、イッてごらん」
男は言うなり私の花芽に舌を絡めた。
「あ、あぁ!あん!」
もう、訳がわからない。
何度目かの絶頂に私はうっとりと男を見つめた。気持ちいいことは大好きだから。
あとは、好きなだけお互いを貪るだけだ。
いつのまにか私は意識を手放した。
翌朝、私は朝日の眩しさで目が覚めた。
「朝?誰もいない」
私が寝ていたのは部屋のベッドだった。しかし、なぜか全裸だ。
その上。
「これって、あの人が私にかけてくれたジャケットじゃない」
私は何故か黒色のジャケットを持っていたのだ。
「こんな感じでいいかな」
私は、ムフフ企画の記事を書き上げた。
現実ではあり得ない内容なので、夢オチにしたけれど着地点としてはまとまっていると思う。
私は確かに「顎チンコ男」が出没するというバーに向かったが、結局会うことは出来ず。飲めもしないバーボンを飲んで潰れて家に帰ったのだ。
ジャケットはその時、介抱してくれたマスクイケメンから借りたもので未だに返す事ができていない。
この話をネタに記事を書き上げた。
その記事は大ウケ。
よしこ宛には、瓶詰めされた精液が大量に届き。
それが、トラウマになったらしく「二度と書かないでくれ」と言われて身代わりのゴーストライター生活は終わった。
記事を書かなくなると、仕事での拘束時間が短くなる。
ようやく執筆時間に割けるようになったのだ。
「さあ、今日も書きますか」
私はいつものように仕事を終えて家に帰り、ノート型パソコンに向き合うと呼び鈴が鳴った。
もしかしたら、頼んでいた資料が届いたのかもしれない。
「はい」
私は返事をしてドアを開けると、黒いマスクをしてる男がそこにいた。
どう見ても配達員ではなさそうな青年に私は戸惑った。
「あの?」
「よくも、記事を書いてくれたな……!」
男は眦を吊り上げてマスクを外す。その顎には萎えた状態の陰茎がぶら下がっていた。
「えっ……!?」
その信じられない光景に、私は固まって動けない。
「……お前……!お前のせいだ!」
男は突然手を振り上げた。
次の瞬間、目の前が暗闇に染まった。
私は叶いそうにない願いを胸に毎日仕事に行っている。
私の副業は斜陽のホラー雑誌の編集部だ。最近はこれが本業になりつつあるけれど、それでも副業だと言い切りたい。言わせて欲しい。
私が「とある企画」の記事を書いていると、編集長が直々に声をかけてきた。
「ルミさん。次回は貴女にこの企画の記事を書いてもらいたいんだけど」
渡された企画書のタイトルは、今、私が記事を書いているものと同じだった。
この企画の記事はそもそも編集長が書いていた物だったのに、いつのまにか私が書くようになっていた。
私が本業に打ち込めないのはこのせいもあった。
「そう言いつつまたじゃないですか」
「売れない官能小説を書いてるくせに、誰が君に仕事をあげてると思ってるんだ?」
咎めるような私の言葉に、編集長は痛いところを突いてくる。
私は駆け出しの売れない官能小説家だ。仕事がなくて食べるのに困った私を編集長が拾ってくれたのだ。
しかし、今考えると私に記事を書かせるつもりで声をかけたような気がしてならない。
「書いてくれたら今月もお給料に謝礼をつけようかなぁ」
やはり、背に腹はかえられなくて、私はもみ手すり手で編集長に笑顔を向けた。
「わっ、この企画楽しみだなぁ」
私は残飯を漁る野良犬のような気分で編集長から企画書を受け取った。
企画書のサブタイトルはこう記されていた。
『怪奇!顎チンコ男は最高のテクニシャン!?』
「顎チンコ男……」
編集長が考えたのか、あまりのパワーワードに目がチカチカした。
このタイトルでどうやって着地させる気なのよ!
あまりの無茶振りに私は頭を抱えた。
「ま、頑張ってね。『ムフフ』な所をもっと期待してるから」
編集長はそう言って自分のデスクへと戻っていった。
私が、というよりも編集長が手がけている企画の名前は『ムフフ企画』だ。
ホラー雑誌なのに、なぜ、そんな企画があるのかというと深い理由がある。
それは、5年前の創刊号の時の話だ。
やる気満々だった編集長はページ数をミスった。
あと、印刷をする段階で1ページだけ足りなかったのだ。
そこで、本来ならページ数を減らせばいいものを、編集長は何をとち狂ったのか思いつきで捏造記事を書き上げたのだ。
内容は、企画で幽霊が出るラブホに彼氏と共に行った。部屋に入っても霊はでなかったが、ムラムラしてそのまま彼氏とエッチをしてたら、幽霊が現れて鑑賞されて興奮した。お尻の穴を冷たい舌で舐められた。
という、なかなかアレな物だった。
よく、こんなもん書いたな。そして、読者さんは怒らずによく読んだな。と、話を聞いた時に私は思ったのだが、『記者:編集長(女子大生)よしこ』と書かれてあったからなのか、エッチシーンが思いがけず読者ウケが良く。次回から設けられることになったのだ。
人生ってどう転ぶのか本当によくわからない。
ちなみに、編集長は女子大生でもなければ女性でもない。ただのハゲたおっさんだ。加齢臭も追加されている。
しかし、読者のみんなは、ピチピチの女子大生の編集長が書いた物だと信じているようだ。
実態はハゲたおっさんなのに、彼宛にお洒落なシャンプーやリンスが届くのだ。ハゲているのに。使い道なんてないのに。
真っ赤なTバックが贈られた時、編集長は『ムフフ企画』にそれを登場させた。
実際には飛行機に乗る時にマスクがなくて、編集長がマスク代わりにそれをつけたのだけれど。
もう、夢が壊れるのでよしこの話は置いておいておこう。
私は今月分の『ムフフ企画』の記事を書き上げることに集中した。
「はー、終わった」
今月分の『ムフフ企画』を書き上げると、不安材料の宝庫である来月分の企画書に目を通した。
『ムフフ企画』は基本的に捏造なのだが、たまに実話をベースに書くこともある。
今回も完全に捏造になりそうな予感がするが。
「でも、読んでみようかな。なになに?『バーに現れたマスクイケメンに隠された秘密。それは……』」
どうやら、バーに行って行きずりの関係を持った男の顎に陰茎が付いていた。と、書いて欲しいようだ。
ちなみに、よしこは定期的に彼氏が変わっていて今はフリーだ。
「あれ?でも、目撃情報がある」
どうやら、都内の寂れたバーに出没するらしい。
「これは、行くしかないかな」
適当に記事を書いてもいいのだが、目撃情報があるのならいかないといけない。
記事は捏造は承知ではあるけれど、真実も必要だから。
私は企画書に書いてあったバーに向かった。
「バーボンを」
バーテンダーに私はお酒を注文した。
バーに行ったらバーボンだこれは、セックスにコンドームくらいの必須品だと私は思っている。
バーにボン!だからバーボンではない。
「くぅー!」
私はバーボンを一気に煽る。そして、空になったクラスをテーブルに叩きつけた。
直後になって襲いかかってきたのは激しい目眩。
そういえば、私、お酒弱かったわ。
「ブヘッ!グハッ!」
「だ、大丈夫ですか?」
咳き込んでいる私に声をかけてきたのは、黒マスクをつけたイケメンだ。
「これ、よかったら」
差し出されたハンカチを私は迷わず受け取り、口元を拭く。
「なんか、モーレツに眠たい」
私がナンパよろしく、そういうと、青年は私の背中に黒色のジャケットをかけた。そして……。
「二人きりで休めるところに行こうか」
バーボンのグラスはライトに照らされて妖しく光っていた。
「つ……」
月明かりに照らされた部屋で私は裸体を晒して、恥ずかしい場所をマスク男に見せていた。
「脚開くの恥ずかしい?そこを指で広げて見せて」
男に言われるままに、私は陰唇を指で広げて見せた。
男はマスクをずらして唇を露にする。そして、私の陰唇に口づけを落とした。
「あっ、あぁ」
男の舌は男体生物のように、私の中に沈み込んでいく。
「気持ちいい?」
男は私の中から舌を引き抜くとニヤリと笑った。
「うん、」
私はその笑顔に背筋がぞくりとした。
「やっ、あぁ!あん!あん!」
男の舌がしつこいぐらいに花芽に絡みつき。私は何度目かの絶頂を迎えた。
「じゃあ、そろそろ」
男は言うなりマスクを外すと、そこにあったのは勃起した陰茎だ。
「え、うそ」
私はあまりの光景に、言葉を失った。
しかし、男はそんな事など気にした様子もなく、陰茎を私の花弁にあてがった。
そして、顔を振動させてゆっくりと中に沈み込んでいった。
「やっ、ああ」
男の顎振動は絶妙で出し入れを繰り返されるたびに、私のそこはひくひくと震えて陰茎を締め付ける。
そこに。
「顎にチンコがついてるといい事があるんだ。ほら、同時にこんなことも出来るんだよ。ほら、イッてごらん」
男は言うなり私の花芽に舌を絡めた。
「あ、あぁ!あん!」
もう、訳がわからない。
何度目かの絶頂に私はうっとりと男を見つめた。気持ちいいことは大好きだから。
あとは、好きなだけお互いを貪るだけだ。
いつのまにか私は意識を手放した。
翌朝、私は朝日の眩しさで目が覚めた。
「朝?誰もいない」
私が寝ていたのは部屋のベッドだった。しかし、なぜか全裸だ。
その上。
「これって、あの人が私にかけてくれたジャケットじゃない」
私は何故か黒色のジャケットを持っていたのだ。
「こんな感じでいいかな」
私は、ムフフ企画の記事を書き上げた。
現実ではあり得ない内容なので、夢オチにしたけれど着地点としてはまとまっていると思う。
私は確かに「顎チンコ男」が出没するというバーに向かったが、結局会うことは出来ず。飲めもしないバーボンを飲んで潰れて家に帰ったのだ。
ジャケットはその時、介抱してくれたマスクイケメンから借りたもので未だに返す事ができていない。
この話をネタに記事を書き上げた。
その記事は大ウケ。
よしこ宛には、瓶詰めされた精液が大量に届き。
それが、トラウマになったらしく「二度と書かないでくれ」と言われて身代わりのゴーストライター生活は終わった。
記事を書かなくなると、仕事での拘束時間が短くなる。
ようやく執筆時間に割けるようになったのだ。
「さあ、今日も書きますか」
私はいつものように仕事を終えて家に帰り、ノート型パソコンに向き合うと呼び鈴が鳴った。
もしかしたら、頼んでいた資料が届いたのかもしれない。
「はい」
私は返事をしてドアを開けると、黒いマスクをしてる男がそこにいた。
どう見ても配達員ではなさそうな青年に私は戸惑った。
「あの?」
「よくも、記事を書いてくれたな……!」
男は眦を吊り上げてマスクを外す。その顎には萎えた状態の陰茎がぶら下がっていた。
「えっ……!?」
その信じられない光景に、私は固まって動けない。
「……お前……!お前のせいだ!」
男は突然手を振り上げた。
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