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レオナルド3
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レオナルド3
レオナルドはアストラの件を聞き大急ぎで領地へと帰った。
そこで出迎えてくれたのは、両親と妹のライザだけで、アストラはいなかった。
行方不明になったことが事実なのだとレオナルドは思い知らされた。
「アストラは?」
「あの子は、シズリー領へ行きました」
レオナルドの質問に、母はにっこりと笑って答えた。
厄介払いできたと言わんばかりに。
「到着したと連絡は来ましたか?」
「……あの子は、もう他人だ」
父は連絡があったとは答えなかった。
レオナルドは、それに眉間に皺を寄せた。
「アストラが屋敷を出てから消息不明だ」
「そ、そんな事、私たちには関係ないわ」
言葉遣いすらレオナルドは取り繕う事をやめた。
彼の怒りを感じた母は、言い訳を始めた。
「本気でそれを言っているのか?辺境伯夫人が行方不明になっているのに、正気なのか?」
「……」
「わ、私が悪いんです。身体なんて壊したから」
黙り込む母親を庇ったのはライザだ。
母親は。それに感動したように瞳を潤した。
レオナルドは、だからなんだと思った。そもそも、ライザの体調不良の大半は仮病だ。
それに、ライザの調子が悪かったとして使用人が沢山いる中で、アストラになぜ心を砕こうとしないのかレオナルドは理解できなかった。
「……そうだな。お前が全て悪い。声を聞くだけで吐き気がするから黙れ。このバカが体調を崩したとして、アストラを放置していい理由なんてないでしょう?」
いつもの、悲劇のヒロインを始めたライザをレオナルドはばっさりと切り捨てた。
「どうしようもない人達だと思っていたけど、想像以上だ。無能の方がはるかにましだ。物を考える能力がないなら人をやめろ。蚊の方がまだ人の役に立つ」
3人とも何も言えずに黙り、青ざめていた。
レオナルドは恐ろしいほどに毒舌だった。
とくに両親とライザの事は、血縁関係だと思う事すら嫌で家族だとも思っていない。
「余計な事は言うなやるな。いい生活がしたいなら黙って馬鹿面を晒して呼吸でもして生きてろ。そんな生活も長く続くとは思うなよ。僕が家を継いだらどうなるか、皺のない脳みそで考えてろ」
レオナルドは、話すだけで無駄だと思いさっさとその場から去っていった。
次にレオナルドがしたのは、護衛と馬車の確認だ。
レオナルドは、屋敷にいる騎士たちを全員呼び出した。
「誰がアストラの護衛についたか話をしたい。それと、うちのどの馬車を使っているかも教えて欲しい」
「アストラお嬢様の護衛は……いません」
レオナルドの質問に答えたのは、アストラの護衛を断った騎士だった。
「は?」
その返事に、レオナルドの額の血管がぴくりと動いた。
「旦那様と奥様が辺境伯夫人になるのだから、護衛の件は一度は断るようにと言ってきたんです。……護衛は確保していました」
「一度は断るとは?」
レオナルドは、何を言っているのかわからなかった。
護衛は確保していたのに、断るとは何がしたいのか。
「つけあがらせないためにです」
どれだけここの屋敷にいる騎士達は偉い存在になったのだろうか。
「確保した護衛をつけなかった。つまり、結局お前達は何もしなかったという事だよな?」
「っ。それは、頭を下げにこなかったお嬢様が」
レオナルドの追及に護衛は慌てて言い訳をしようとした。
「……もしも、アストラに何かあったら、責任を取るつもりで一人で送り出したんだよな?」
レオナルドの口調はどんどん荒っぽくなっていく。
騎士達は、顔色をなくしていった。
「もしも、見つからなかったら、責任をとってもらう。お前達の家族にも」
もちろん、レオナルドは騎士達の家族に責任をとってもらうつもりは全くなかったが、脅しのつもりで言った。
どうせ解雇にするつもりだし、あながち間違ってはいないだろう。
「そんなっ……!」
「お前達に償いができるのか?」
騎士達は、とんでもない人を怒らせてしまったのだとようやく気がついた。
しかし、全てが遅かった。
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レオナルドはアストラの件を聞き大急ぎで領地へと帰った。
そこで出迎えてくれたのは、両親と妹のライザだけで、アストラはいなかった。
行方不明になったことが事実なのだとレオナルドは思い知らされた。
「アストラは?」
「あの子は、シズリー領へ行きました」
レオナルドの質問に、母はにっこりと笑って答えた。
厄介払いできたと言わんばかりに。
「到着したと連絡は来ましたか?」
「……あの子は、もう他人だ」
父は連絡があったとは答えなかった。
レオナルドは、それに眉間に皺を寄せた。
「アストラが屋敷を出てから消息不明だ」
「そ、そんな事、私たちには関係ないわ」
言葉遣いすらレオナルドは取り繕う事をやめた。
彼の怒りを感じた母は、言い訳を始めた。
「本気でそれを言っているのか?辺境伯夫人が行方不明になっているのに、正気なのか?」
「……」
「わ、私が悪いんです。身体なんて壊したから」
黙り込む母親を庇ったのはライザだ。
母親は。それに感動したように瞳を潤した。
レオナルドは、だからなんだと思った。そもそも、ライザの体調不良の大半は仮病だ。
それに、ライザの調子が悪かったとして使用人が沢山いる中で、アストラになぜ心を砕こうとしないのかレオナルドは理解できなかった。
「……そうだな。お前が全て悪い。声を聞くだけで吐き気がするから黙れ。このバカが体調を崩したとして、アストラを放置していい理由なんてないでしょう?」
いつもの、悲劇のヒロインを始めたライザをレオナルドはばっさりと切り捨てた。
「どうしようもない人達だと思っていたけど、想像以上だ。無能の方がはるかにましだ。物を考える能力がないなら人をやめろ。蚊の方がまだ人の役に立つ」
3人とも何も言えずに黙り、青ざめていた。
レオナルドは恐ろしいほどに毒舌だった。
とくに両親とライザの事は、血縁関係だと思う事すら嫌で家族だとも思っていない。
「余計な事は言うなやるな。いい生活がしたいなら黙って馬鹿面を晒して呼吸でもして生きてろ。そんな生活も長く続くとは思うなよ。僕が家を継いだらどうなるか、皺のない脳みそで考えてろ」
レオナルドは、話すだけで無駄だと思いさっさとその場から去っていった。
次にレオナルドがしたのは、護衛と馬車の確認だ。
レオナルドは、屋敷にいる騎士たちを全員呼び出した。
「誰がアストラの護衛についたか話をしたい。それと、うちのどの馬車を使っているかも教えて欲しい」
「アストラお嬢様の護衛は……いません」
レオナルドの質問に答えたのは、アストラの護衛を断った騎士だった。
「は?」
その返事に、レオナルドの額の血管がぴくりと動いた。
「旦那様と奥様が辺境伯夫人になるのだから、護衛の件は一度は断るようにと言ってきたんです。……護衛は確保していました」
「一度は断るとは?」
レオナルドは、何を言っているのかわからなかった。
護衛は確保していたのに、断るとは何がしたいのか。
「つけあがらせないためにです」
どれだけここの屋敷にいる騎士達は偉い存在になったのだろうか。
「確保した護衛をつけなかった。つまり、結局お前達は何もしなかったという事だよな?」
「っ。それは、頭を下げにこなかったお嬢様が」
レオナルドの追及に護衛は慌てて言い訳をしようとした。
「……もしも、アストラに何かあったら、責任を取るつもりで一人で送り出したんだよな?」
レオナルドの口調はどんどん荒っぽくなっていく。
騎士達は、顔色をなくしていった。
「もしも、見つからなかったら、責任をとってもらう。お前達の家族にも」
もちろん、レオナルドは騎士達の家族に責任をとってもらうつもりは全くなかったが、脅しのつもりで言った。
どうせ解雇にするつもりだし、あながち間違ってはいないだろう。
「そんなっ……!」
「お前達に償いができるのか?」
騎士達は、とんでもない人を怒らせてしまったのだとようやく気がついた。
しかし、全てが遅かった。
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