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レオナルド4
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レオナルド4
最後にレオナルドがしたのは、屋敷中の侍女からの聞き取りだ。
屋敷にいる執事にしたところで、脅しても何も答えない気がしたからだ。
こういった末端の人間ならポロリと重要なことを漏らすことが多い。
「アストラの事について話してくれ」
「……」
侍女達は何も言わずに黙り込む。
「今すぐに荷物をまとめろ」
レオナルドが、出ていけ。と、言うと侍女たちは慌て出す。
「っ、それは、横暴です!」
「だったら、ちゃんと話すんだ」
「申し訳ありません!」
侍女達は全員揃えたように謝り出した。
だが、今更だ。
「私たち、アストラ様とさほど関わった事がないんです。いつも、痩せぎすで、クラリスがよく癇癪を起こして食事を食べないと話していて……。それに、ライザお嬢様に意地悪をするので」
突然出たクラリスの名前に、レオナルドの額の血管が再び浮き出た。
アストラを守れと言ったのに、あの女は何をしている。
「それで?」
「クラリスが盗んだアストラ様の誕生日ケーキを食べました。その、いつもライザお嬢様に意地悪をしたから、その仕返しのつもりでしました。少しは傷付けばいいと思って、それに、ケーキだってライザ様の誕生日に出るものよりもずっと手が込んでて腹が立ったんです」
自分たちの行動は間違っていたかもしれないが、許されるものだと言わんばかりの侍女達に、レオナルドは冷たい目を向けた。
それと同時に、アストラがどれだけ軽く扱われているのかすぐに理解した。
「……なるほど、教えてくれてありがとう」
レオナルドはにっこりと笑うとお礼を言った。
侍女達は、これで見逃してもらえると安堵したが、すぐにそれは裏切られた。
「さっさと荷物をまとめるんだな」
「ま、待ってください。ちゃんと話したじゃないですか。確かにお世話はしませんでしたけど、酷い事なんてしていません」
侍女達は、途端に慌て出した。
だったら、アストラを軽く扱うのをしなければよかったのだ。
「クラリスがアストラに何をしたのか調べろ。追い出すかどうかそれで考えてやる」
あくまで考えてやるだけだ。
もちろん、レオナルドは利用するだけ利用したら、紹介状もなしに追い出すつもりだった。
「本当にですね」
我が身が可愛い様子のメイド達を見たレオナルドは、この国の全貴族の家に彼女達のした所業を書いた用紙を配ろうと思った。
「ああ。考えてやる。一番役に立った奴だけを残してやる」
レオナルドは、ライザによく似た天使のような微笑みを浮かべてそう言った。
「ところで、クラリスは?」
「ずっと、裏方の仕事をしています」
クラリスは、図々しくもまだ屋敷に居座っていたようだ。
ただ、今出て行かれても困るので、何とか、引き留めて置きたい。
「クラリスをライザの侍女につけろ。逃げられないように見張をしておけ。逃がしたらどうなるかわかっているよな?」
侍女達は、青ざめた顔でこくりと頷いた。
我が身が可愛ければ、クラリスを逃すという愚かなことはしないはずだ。
色々としたい事があるけれど、まずはアストラを探し出す事が先決だ。
レオナルドは、一番近くの街に降りて、しらみつぶしに辻馬車に声をかけて回った。
レオナルドの記憶の中のアストラなら、調べた上で慎重に立ち回っているはずだ。
辺境伯夫人が失踪したというのに、ロシェルの落ち着きようは無事を確信しているかのようだった。
もしかしたら、まだアストラは近くにいるかもしれない。
そう思いながら話を聞いて回るが、情報は掴めない。
当然だ。辻馬車の御者はアストラの事を「お嬢様」ではなくて「老婆」だと思い込んでいたので「知らない」としか答えられなかった。
アストラがいなくなってすでに三日が経っていた。
数日後、ギレット家宛にナイジェルから手紙が届いた。
手紙は封を切られずに捨てられており。両親共に読んでいない様子だった。
そこには、アストラを保護した事。虐待の痕跡がある。護衛はつけない。馬車もなし。旅費は銀貨30枚で出したそうだな。どういう事なのか説明しろ。とても丁寧に記されていた。
レオナルドは、その手紙を読み怒りで目の前が真っ赤になった。
アストラが酷い仕打ちを受けてきたというのに、知らなかった自分自身への怒りで頭がどうにかなりそうだった。
「やった事への償いは絶対にさせる」
馬鹿面と生き恥を晒して、屋敷で幸せそうに過ごす両親とライザをどうしてやろうか。
そもそも、ギレット侯爵家は、領地といっても屋敷しかなく。領民もいない。先祖達の商才で成り上がり資産がある家だった。
父には商才が全くなく。そういった仕事はレオナルドが城に一緒に連れて行った執事とほぼやっていた。
レオナルドは、忙しくて投資関連ばかりしていたが。
父親に渡していた仕事は判子を押すだけの簡単なものだけだった。
仕送りもレオナルドがしており、一言で説明するなら、両親とライザは穀潰しだった。
「今までは、居ないよりマシだと思って、父に侯爵で居てもらっていたが、立場を譲ってもらおうか」
そろそろ、研究は大詰めの状態でその結果が出れば、ようやく手が空く。
レオナルドは、とりあえず全員を泳がせて少しずつ追い詰めていくことにした。
~~~
お読みくださりありがとうございます
とりあえずレオナルド編は終わり本編に戻ります
感想の返事にネタバレをしてしまいそうなので、ありがとうございます。という返事だけ返していきます
それでも感想もらえるととても嬉しいです!
お気に入り登録、エール、ありがとうございます
更新頑張ります!
最後にレオナルドがしたのは、屋敷中の侍女からの聞き取りだ。
屋敷にいる執事にしたところで、脅しても何も答えない気がしたからだ。
こういった末端の人間ならポロリと重要なことを漏らすことが多い。
「アストラの事について話してくれ」
「……」
侍女達は何も言わずに黙り込む。
「今すぐに荷物をまとめろ」
レオナルドが、出ていけ。と、言うと侍女たちは慌て出す。
「っ、それは、横暴です!」
「だったら、ちゃんと話すんだ」
「申し訳ありません!」
侍女達は全員揃えたように謝り出した。
だが、今更だ。
「私たち、アストラ様とさほど関わった事がないんです。いつも、痩せぎすで、クラリスがよく癇癪を起こして食事を食べないと話していて……。それに、ライザお嬢様に意地悪をするので」
突然出たクラリスの名前に、レオナルドの額の血管が再び浮き出た。
アストラを守れと言ったのに、あの女は何をしている。
「それで?」
「クラリスが盗んだアストラ様の誕生日ケーキを食べました。その、いつもライザお嬢様に意地悪をしたから、その仕返しのつもりでしました。少しは傷付けばいいと思って、それに、ケーキだってライザ様の誕生日に出るものよりもずっと手が込んでて腹が立ったんです」
自分たちの行動は間違っていたかもしれないが、許されるものだと言わんばかりの侍女達に、レオナルドは冷たい目を向けた。
それと同時に、アストラがどれだけ軽く扱われているのかすぐに理解した。
「……なるほど、教えてくれてありがとう」
レオナルドはにっこりと笑うとお礼を言った。
侍女達は、これで見逃してもらえると安堵したが、すぐにそれは裏切られた。
「さっさと荷物をまとめるんだな」
「ま、待ってください。ちゃんと話したじゃないですか。確かにお世話はしませんでしたけど、酷い事なんてしていません」
侍女達は、途端に慌て出した。
だったら、アストラを軽く扱うのをしなければよかったのだ。
「クラリスがアストラに何をしたのか調べろ。追い出すかどうかそれで考えてやる」
あくまで考えてやるだけだ。
もちろん、レオナルドは利用するだけ利用したら、紹介状もなしに追い出すつもりだった。
「本当にですね」
我が身が可愛い様子のメイド達を見たレオナルドは、この国の全貴族の家に彼女達のした所業を書いた用紙を配ろうと思った。
「ああ。考えてやる。一番役に立った奴だけを残してやる」
レオナルドは、ライザによく似た天使のような微笑みを浮かべてそう言った。
「ところで、クラリスは?」
「ずっと、裏方の仕事をしています」
クラリスは、図々しくもまだ屋敷に居座っていたようだ。
ただ、今出て行かれても困るので、何とか、引き留めて置きたい。
「クラリスをライザの侍女につけろ。逃げられないように見張をしておけ。逃がしたらどうなるかわかっているよな?」
侍女達は、青ざめた顔でこくりと頷いた。
我が身が可愛ければ、クラリスを逃すという愚かなことはしないはずだ。
色々としたい事があるけれど、まずはアストラを探し出す事が先決だ。
レオナルドは、一番近くの街に降りて、しらみつぶしに辻馬車に声をかけて回った。
レオナルドの記憶の中のアストラなら、調べた上で慎重に立ち回っているはずだ。
辺境伯夫人が失踪したというのに、ロシェルの落ち着きようは無事を確信しているかのようだった。
もしかしたら、まだアストラは近くにいるかもしれない。
そう思いながら話を聞いて回るが、情報は掴めない。
当然だ。辻馬車の御者はアストラの事を「お嬢様」ではなくて「老婆」だと思い込んでいたので「知らない」としか答えられなかった。
アストラがいなくなってすでに三日が経っていた。
数日後、ギレット家宛にナイジェルから手紙が届いた。
手紙は封を切られずに捨てられており。両親共に読んでいない様子だった。
そこには、アストラを保護した事。虐待の痕跡がある。護衛はつけない。馬車もなし。旅費は銀貨30枚で出したそうだな。どういう事なのか説明しろ。とても丁寧に記されていた。
レオナルドは、その手紙を読み怒りで目の前が真っ赤になった。
アストラが酷い仕打ちを受けてきたというのに、知らなかった自分自身への怒りで頭がどうにかなりそうだった。
「やった事への償いは絶対にさせる」
馬鹿面と生き恥を晒して、屋敷で幸せそうに過ごす両親とライザをどうしてやろうか。
そもそも、ギレット侯爵家は、領地といっても屋敷しかなく。領民もいない。先祖達の商才で成り上がり資産がある家だった。
父には商才が全くなく。そういった仕事はレオナルドが城に一緒に連れて行った執事とほぼやっていた。
レオナルドは、忙しくて投資関連ばかりしていたが。
父親に渡していた仕事は判子を押すだけの簡単なものだけだった。
仕送りもレオナルドがしており、一言で説明するなら、両親とライザは穀潰しだった。
「今までは、居ないよりマシだと思って、父に侯爵で居てもらっていたが、立場を譲ってもらおうか」
そろそろ、研究は大詰めの状態でその結果が出れば、ようやく手が空く。
レオナルドは、とりあえず全員を泳がせて少しずつ追い詰めていくことにした。
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お読みくださりありがとうございます
とりあえずレオナルド編は終わり本編に戻ります
感想の返事にネタバレをしてしまいそうなので、ありがとうございます。という返事だけ返していきます
それでも感想もらえるととても嬉しいです!
お気に入り登録、エール、ありがとうございます
更新頑張ります!
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