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フレディ1

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フレディ1

 フレディは、小さな領地を持つデンプシー伯爵家の嫡男だ。
 優秀な幼馴染のレオナルドとは、魔力の発現がした時に一緒に仕事をしよう。と、約束する程度には仲が良かった。
 このままでも、「友人」という関係性で彼の人生はある意味で安定した物が確定していた。

 しかし、レオナルドの願いから、妹のアストラとの婚約が決まり。
 フレディは勝ち組になった。

「僕の可愛い妹を大切にしてくれたら、将来的にフレディを仕事の右腕にしたいと思っている」

 そう言われて、フレディはアストラを大切にしようと思った。
 フレディは、最初はアストラに対して誠意を持って接していた。
 真っ白な髪の毛は雪のようで綺麗で、時折見せる微笑みも愛らしいとフレディは思っていた。
 しかし、面会の場にライザがやって来るようになると、彼の目はアストラには向けられなくなった。
 手入れされた艶やかな金色の髪の毛に比べると、アストラの傷んだ真っ白な髪の毛は見劣りして見えた。
 それでも、ライザの事は婚約者の妹として接していた。
 ただ、それも長くは続かなかった。

 アストラと面会するよりも先に、ライザがフレディに会いに来るようになったのだ。

 それが完全に壊れたのは、ライザが頬を赤く腫れさせてフレディに会いにきた時だった。

「っ、うっ」

 ライザはフレディの顔を見るなり俯いて、クリスタルのような涙を流し出した。

「ラ、ライザ嬢!?」

 フレディは泣き出したライザに、当然のように慌てて声をかけた
 
「……私、お姉さまに嫌われているみたいで」

 ライザは涙ながらにアストラにされた事をフレディに話した。
 両親から誕生日プレゼントに貰ったブローチをアストラが欲しがり、断ったから頬を強く叩かれたそうだ。
 フレディは、最初はそれが信じられなかった。
 少なくともアストラは、弱いものを虐めるような陰湿な性質を持っているようには見えなかったからだ。

 しかし、ライザと会う回数を重ねるごとに、アストラの悪い所を突きつけられるのだ。
 フレディは、最初は信じられなかったが、アストラの侍女から、アストラが癇癪を起こして部屋のものを壊し、食べる事を拒否する。という話を何度も聞かされると信じてしまうようになっていった。

 刷り込みというものは恐ろしい物だ。

 フレディは、アストラのことを「どうしようもない人間」だとは思っていなかった。しかし、悪意にまみれた言葉の積み重ねでとうとう信じてしまった。

 痩せたため陰鬱に見えるようになったせいで、フレディはアストラのことを忌み嫌うようになる。

 もちろん、言葉ではそれを表すことはしないが。態度では平気でアストラを蔑ろにし続けた。

 アストラにはプレゼントを贈ることなどしないが、ライザには当然のように贈る。

 そして、アストラのデビュタントのお披露目の日、フレディは当然のように彼女のことを裏切った。





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