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王都には3週間で到着した。
初めてシズリーに旅に出た時以上に楽しかった。
きっと、憧れていた家族旅行というのもは、こういった感じなのだと思った。
「無事、王都に到着しましたし、英気を養って、2日後のお披露目を無事終わらせましょう」
マリカの一言と共にホテルの部屋へと向かった。
ホテルの部屋は広くて、つい先ほどまではみんなと一緒にいたのせいもあって急に寂しく感じた。
ギレット家にいる時もいつも一人で寂しかった。
今も一人なのに、不思議と寂しくない。
ぼんやりとしていると、ノック音と共にナイジェルの声が聞こえた。
「少しいいか?」
「どうぞ」
私が部屋に入るように促すと、ナイジェルは少しだけギクシャクとした動きで入ってきた。
「何だか緊張して」
2日後の、お披露目の事を気にしているのだろうか。
「大丈夫ですか?」
そういえばナイジェルと二人きりになる事があまりなかった気がする。
いつも、マリカが付き添っていた。
今日は、本当に珍しく一人で来てくれたようだ。
「ああ、アストラにはどうしても伝えておきたい大切な事があって」
伝えたい事とは何だろう。
ナイジェルは優しくて誠実だ。婚約したてのフレディもそうだった。
しかし、ナイジェルのそれは、婚約者としての義務としての優しさではなく純粋な好意が強い気がする。
大切な話とはもしかしたら……。
好きって言われてしまう!?
私はドキドキしながら返事をした。
「……はい」
「魔獣用の結界の事だ」
少し拍子抜けした。
何だかとても残念な気持ちになりながらも、私は続きの言葉を待つ。
「お披露目の場で発表する事なる予定だ。だから、その」
「……はい」
「セルドリスが腹を立てて君に危害を加えてくるかも知れない。お披露目の間は私がそばにいる。それ以外ではマリカを側につけるから可能な限り一人で行動することはしないでほしい」
そういえば、ナイジェルはずっとこの事を気にしていた。
彼に余計な心配をかけないように気をつけなければ。
「わかりました」
心配をしてくれているのに、なんだか寂しさを感じながらも私はこくりと頷く。
「こんな形だけど、私は君の夫になれてとても嬉しい」
不意打ちに、私の心臓が高鳴るのがわかった。
「ナイジェル様、私は離れません。絶対に」
ナイジェルが私に優しかったから好きになったんじゃない。
この想いはフレディに持っていたものとは全く違う。
「アストラ、おやすみ」
ナイジェルの手が私の頬に触れる。
顔が近づき口付けされると思ったら、温かな感触を頬に感じた。
ナイジェルの方を見ると、顔を真っ赤にさせている。
「ごめん。合意なくこういう事をしてしまって」
申し訳なく謝るナイジェルの様子がおかしくて、私は声を出して笑ってしまった。
そして、2日後。
私たちは、デビュタントのお披露目の場にいた。
「……」
私をエスコートするナイジェルの表情は少しだけ硬く。緊張しているのがわかる。
しかし、そのおかげなのかどことなく威厳が漂っている。
レオナルドは、そつなくマリカのエスコートをしていた。
「あれが、辺境伯とその婚約者の……」
ひそひそと聞こえてくる声、私はどんな事を言われようとそれに取り合うつもりはなかった。
ただ、今すぐ隣にいるナイジェルを見ていようと思う。
彼さえそばにいれば私は何があっても大丈夫だから。
王都には3週間で到着した。
初めてシズリーに旅に出た時以上に楽しかった。
きっと、憧れていた家族旅行というのもは、こういった感じなのだと思った。
「無事、王都に到着しましたし、英気を養って、2日後のお披露目を無事終わらせましょう」
マリカの一言と共にホテルの部屋へと向かった。
ホテルの部屋は広くて、つい先ほどまではみんなと一緒にいたのせいもあって急に寂しく感じた。
ギレット家にいる時もいつも一人で寂しかった。
今も一人なのに、不思議と寂しくない。
ぼんやりとしていると、ノック音と共にナイジェルの声が聞こえた。
「少しいいか?」
「どうぞ」
私が部屋に入るように促すと、ナイジェルは少しだけギクシャクとした動きで入ってきた。
「何だか緊張して」
2日後の、お披露目の事を気にしているのだろうか。
「大丈夫ですか?」
そういえばナイジェルと二人きりになる事があまりなかった気がする。
いつも、マリカが付き添っていた。
今日は、本当に珍しく一人で来てくれたようだ。
「ああ、アストラにはどうしても伝えておきたい大切な事があって」
伝えたい事とは何だろう。
ナイジェルは優しくて誠実だ。婚約したてのフレディもそうだった。
しかし、ナイジェルのそれは、婚約者としての義務としての優しさではなく純粋な好意が強い気がする。
大切な話とはもしかしたら……。
好きって言われてしまう!?
私はドキドキしながら返事をした。
「……はい」
「魔獣用の結界の事だ」
少し拍子抜けした。
何だかとても残念な気持ちになりながらも、私は続きの言葉を待つ。
「お披露目の場で発表する事なる予定だ。だから、その」
「……はい」
「セルドリスが腹を立てて君に危害を加えてくるかも知れない。お披露目の間は私がそばにいる。それ以外ではマリカを側につけるから可能な限り一人で行動することはしないでほしい」
そういえば、ナイジェルはずっとこの事を気にしていた。
彼に余計な心配をかけないように気をつけなければ。
「わかりました」
心配をしてくれているのに、なんだか寂しさを感じながらも私はこくりと頷く。
「こんな形だけど、私は君の夫になれてとても嬉しい」
不意打ちに、私の心臓が高鳴るのがわかった。
「ナイジェル様、私は離れません。絶対に」
ナイジェルが私に優しかったから好きになったんじゃない。
この想いはフレディに持っていたものとは全く違う。
「アストラ、おやすみ」
ナイジェルの手が私の頬に触れる。
顔が近づき口付けされると思ったら、温かな感触を頬に感じた。
ナイジェルの方を見ると、顔を真っ赤にさせている。
「ごめん。合意なくこういう事をしてしまって」
申し訳なく謝るナイジェルの様子がおかしくて、私は声を出して笑ってしまった。
そして、2日後。
私たちは、デビュタントのお披露目の場にいた。
「……」
私をエスコートするナイジェルの表情は少しだけ硬く。緊張しているのがわかる。
しかし、そのおかげなのかどことなく威厳が漂っている。
レオナルドは、そつなくマリカのエスコートをしていた。
「あれが、辺境伯とその婚約者の……」
ひそひそと聞こえてくる声、私はどんな事を言われようとそれに取り合うつもりはなかった。
ただ、今すぐ隣にいるナイジェルを見ていようと思う。
彼さえそばにいれば私は何があっても大丈夫だから。
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