恋の始め方がわからない

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熱に浮かされて

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熱に浮かされて

「濡れてる」

 姫川はそう呟いて、陰唇に指を這わせた。
 溢れ出たものを指で絡めて、陰核を優しく撫で始める。

「あぁっ」

 甘く痺れるような痛みに私は腰をしならせた。
 よくわからない感覚だ。気持ちがいいのに逃げたいようなそんな。
 なんだろうと答えを探してもわからず頭が回らない。

「痛くない?」

 姫川が耳元で囁く。
 その息遣いすらも、脳は気持ちがいい。と認識してしまう。

「んっ、だ、大丈夫」

 甘い声を漏らしながら、こくこくと頷くと、陰核に触れていない方の手で私の手を握りしめた。

「んっ、ふっ」

 また唇を塞がれた。絡んでくる舌に夢中になって私もそれに応じる。
 唇の端からこぼれ出る唾液はもはや誰のものかもわからない。

 まるで恋人にするような情の交わし方に、私の胸が少しだけ痛む。
 彼と「普通に恋」できる人が羨ましい。

 優しいのは今だけだとわかりきっているのに、姫川がもたらしてくれる快楽に私は夢中になっている。

「んっ、あっ」

 何かがおかしい。と思う頃には身体が浜辺に打ち上げられた魚のようにピクピクと震え始めていた。
 変だ。おかしい。自分の身体ではないような。そんな感じだ。
 胸を舐められた時も、はじめに陰核に触れられた時も、気持ち良さはあったが、それとは全く違う。

「あぁっ、な、なんか変、や、やだ」

 自分の身体が自分のものではないような。そんな恐怖を感じると、怖くなって姫川の指を陰核から離そうと手を掴む。
 しかし、その手はびくともせず。私を責め続ける。
 
「変じゃないよ」

 姫川は、薄笑いを浮かべて、私の胸の頂に歯を立てる。
 先ほどまでまで散々弄ばれたそこは、姫川の口の愛撫を悦ぶように硬度を増していた。
 キュウと。二つの頂を軽くつねりあげられて、私の腰は弓のようにしなる。
 その瞬間だった。
 私の意識は急に高いところへと飛ばされた。

「あぁっ!」
 
 制御の効かない身体は硬く強張りヒクヒクと震えて、徐々に弛緩していった。
 頭の中が真っ白になっていき、視界が滲んでいく。
 荒い呼吸を繰り返しながら、自分が泣いているのに気がつくのにさほど時間が掛からなかった。

「怖かった?」

 姫川が私の涙を舌で舐め取り、瞼に口付けを落とす。

「やめる?」

 ご機嫌を伺うように、頬や唇に口付けをされると、勘違いしてしまいそうになる。
 肉体関係から相手を好きになる話をよく聞くが、こんなふうにされたらそうなるのも良くわかる。

「……やめない」

 小さな声で答えると、姫川は「可愛いよ」と、社交辞令を言ってくる。

 ああ、本当に勘違いしてしまいそう。

 こんなにも優しくされて、気分を盛り上げるためだけの嘘ですら、私にとってはとても嬉しくて、姫川が好きになる女性がとても羨ましい。

 可愛くない私がそう思うなんて痛すぎる。

 私は「ありがとう」と返して、心の中で苦笑いした。

「続きしてもいい?」

「うん、」

 私の返事を聞くなり、姫川の指が濡れた場所に当てられた。
 姫川の指先が陰唇を撫でると、そこは待ち侘びたようにひくりと動く。

 ぬるぬるとしたそこは、姫川の指をゆっくりと飲み込んでいく。

「んっ、あっ」

 私の中に入り込んだ姫川の指は、中を確認するように動く。

「あぁっ」

 一度昂った身体はすぐに昂る。

「うっ、んっ」

 啜り泣くような声と共に何度目かの絶頂を迎えると、もはや何が起こっているのかよくわからなくなった。

「もういい?」と聞かれても、意味がわからずバカみたいに首を縦に振った。

 ずるり。と、私の中から姫川の指が抜け出た。

「あ、あ」

 先ほどまであったものが抜け出て、そこは何かを入れろと切なくひくつく。
 秘裂に、何か熱くて硬いものが当てられた。

 それが何か最初はわからなかった。

「……痛かったら、言って」

 強く抱きしめられて、余裕がなさそうな姫川の声と共に、それはゆっくりと私の中へと入り込んでいく。

 耳元で姫川の呼気が荒く。私は怖くて目を閉じた。
 姫川の剛直は太く長く、全てが入り込むまで微かな痛みと長い時間を感じた。

「入りましたよ」と姫川が私に声をかけて、目を開けると、その綺麗な顔が眼前にある。
 姫川は蕩けた笑みを浮かべていて、思わず目を見張る。
 大きな手が私の手を包み込み、ぎゅっと握りしめる。

 まるで恋人同士のようだ。

 私の中の姫川の剛直は熱くもう一つの心臓のように拍動していた。

「あ……ぁ」

 姫川の腰がゆっくりと動き出し、思わず声が出た。
姫川の唇が機嫌をとるように何度も私の顔や身体に落とされていく。

 身体を繋げることがこんなにも心地いいなんて思いもしなかった。

「ん、気持ちいい」

 私の口から出た素直な言葉に、姫川はくすりと笑みを漏らした。
 それを合図に腰の動きは次第に大きくなっていく。

「あぁっ!」

 先に絶頂を迎えたのは私の方で、それに追うように姫川の剛直の強い拍動を感じた。

「……好きだよ」

 姫川の囁く声が鼓膜に届く。
 きっと、絶頂の余韻から出た意味のない言葉だ。

「……私も。好き」

 ありがとう。と、お礼を言えばいいのに、絶頂による多幸感から姫川と同じ言葉を口にしていた。

「れいさん」

 理性の薄れた姫川の声が聞こえる。

 ああ、返事をしないと。

 それなのに、瞼は重く指一本も動かせなかった。
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