恋の終わらせ方

毛蟹

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席に着くと、一番最初に聞かれるであろう言葉を高梨は言った。協力するにしても理由くらい誰でも知りたいだろう。
私もそうだ。

「付き合いは長いんだけど、幼なじみなんだ。ズルズルと付き合いがあって……」

言いたくない事を口にしないと、それ以上の事が言えない。
あとは、なんと言えばいいだろうか。言葉を紡ごうにも、正己との関係が歪な物だと改めて気付かされてしまう。

「ふーん。言ったらあれだけど、由寿さんが長く付き合うタイプの人には見えないんだよね」

今回の件で何かを察した高梨は、困ったように今まで思いつきもしなかった事を言い出す。

「どういう事?」
「いや、だって自分の事しか考えてないでしょ?」
「それは、私も同じ」
「そう?相手の都合や気持ち無視して、誰か紹介してやるとか、この日に会おう。とか、社会人としてありえないよ。友達として甘えていい領域は越えてる」

言われてみればその通りだ。もしも、友達が私と同じような相談をしてきたら『別れろ』と間違いなく言うだろう。
それくらいの事を彼は私にしているんだ。
考えもしなかった。
けれど、私は正己に確かに助けられたんだ。

「いいところもあるんだけど」
「いつから好きなの?」

グサリと高梨は痛いところを突いてくる。

「そ、そんなんじゃない」
「教えてくれないと、助けてあげない」

そう言って、子供っぽくそっぽを向く。言わない事には、協力してくれない気がした。
けれど、その為には、自分のコンプレックスを彼に言わないといかない。
傷ついた記憶を、未だに解決しない事を誰かに言わないといけないのは辛い。
だけど、高梨ならそれを馬鹿にしたりはしないだろう。

「中学の時、私、ほら太ってるでしょ?だから虐められて庇ってもらったから」

「……」

しばらくの沈黙。それがとても痛い。馬鹿にされても仕方ないと思われているんじゃないだろうか。
高梨はなぜか、目を見開いて硬直している。

「太ってる?由寿さんが?」

暫しの間の後、高梨はようやく自分を取り戻したように呟いた。

「いや、だってシャツがジャストサイズを着ようとするとパツパツだし」

胸の辺りがとてもきついのだ、中学で馬鹿にされた時も、シャツのボタンが弾けてしまったせいだ。

「……体型の事を、あまり言いたくないんだけど、太っているなんて事はないよ。そもそも、その通りだったとしてそれを馬鹿にするのはおかしい」

「ありがとう」

高梨なりのフォローのつもりだろうか、私は嬉しくなっていた。

「由寿さんの場合は、なんていうか、出ている所がちゃんと出ているだけで、ウエストはすごく細い……。これ以上言ったらセクハラになるな」
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