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水津は話していた通り私の部屋にはやってこなかった。会うたびに貰っていた薔薇は枯れて、新しい花を生ける気もなかったので、匂いのない花を飾るようにした。
匂いのない花を見ながらあることに気がつく。
知らない間に水津は私の生活の一部になっていたみたいだ。寂しさは少しあるけれど、いつか訪れる別れのために慣れなければならない。
そして、気がつけば今日が仕事納めだ。クリスマスイブけれど予定はなく。いつものように一人で過ごすつもりだ。
私は早めに会社に行くと、ギリギリでようやくわかるものの予定の整理を始めた。
「おはようございます」
ある程度、予定の整理が終わるとまばらに社員が出社してきた。柏木もすぐにやってきて、目が合うとにっこりと笑ってくれた。
こちらに配属になってから、私は意図して彼と距離をとっていたけれど、いつのまにかそれもなくなったような気がする。
柏木のことを私を追い越していく部下だと思ってずっと警戒していた。けれど、最近ではそうなってもいいか。と、思うようになっていた。
彼が出世したら純粋に喜べそうな気がする。こんなふうに自分の考えが変わるなんて思いもしなかった。
人って変わるものなのね。
そんなことを考えていると、彼女の声が聞こえてきた。
「おはようございます」
進藤が機嫌良く、水津に腕を絡ませて出社してきた。
水津は今後どうするつもりなのだろう。私はそんなことをぼんやりと考えていた。
弾けんばかりの笑顔を浮かべる進藤と、それを困ったように見ている水津は初々しいカップルにしか見えない。
「おはようございます」
私が二人に挨拶を返すと。水津は無表情で俯き、進藤は挑発するように顔を上げて目を細めた。
あまり、いい気分はしなかった。もやもやしたまま今年最後の仕事を始めた。
「凛子いい?」
昼休憩の時間に柴多がやって来た。
今日はいつになく表情が険しく、どこか落ち着きがなかった。
本社に行く不安でもあるのだろうか?
相談をするにしては、どこか態度がおかしい。私は不思議に思いながらも、そこには触れないでおいた。
「うん、いいわよ」
「用意したんだ」
柴多は言うなりランチボックスを手に持ちにっこりと笑った。買ったものではなさそうなので、どうやら手作りみたいだ。
私も急いで弁当箱を取り出そうとした。そこで、あることに気がつく。
誰か私の鞄の中を触った……?
物の配置が微妙にずれてる。それに空のピルケースが無くなっていた。
いつもボーッとしている私でも、大切なピルケースをなくしたことはなんてない。
誰が?一体何のために?
真っ白な紙に真っ黒なインクが徐々に染みていくような不安を感じた。
誰かが私に何かしようとしている。それだけはわかる。
「凛子?」
柴多に訝しげに声をかけられて「何でもない」と笑って返した。
もしかしたら柴多が絡んでいて、私の困った反応が見たいからこんな事をしたのかもしれない。
いや、柴多はこんなことをしない。その考えを否定した。
私のデスクの上でそれぞれのお弁当を広げた。
「あのさ、凛子」
柴多が眉間にシワをよせて、とても言いにくそうに口を開いた。
「何?」
私はただならない雰囲気に一瞬だけ怖気付きそうになる。
しかし、すぐに自分を取り戻して何とでもなさそうな顔をした。
「水津くんと本当に付き合っていないの?」
「え……?」
柴多は、前に否定したことを再び問いかけてきた。
「進藤さん?だっけ?あの怖い子の同期が居るんだけど」
どうやら、前に話していたスピーカーの社員は進藤の同期のようだ。
「うん」
「水津くんが進藤さんと付き合っているのに、その、凛子に迫られ困っている。って言って回っているみたいで」
柴多の言いにくそうに内容をマイルドにして説明してくれた。言葉を選んでいるが私に悪意があるような事を言って回っているのだけはわかった。
「全くそんなことないんだけど、水津くんに凄く迷惑な話しじゃないのそれって」
噂話しを教えてくれる柴多は悪くないのに、思わず噛みつきそうな勢いで反論してしまう。
そんな噂されたら、水津に迷惑をかけてしまうじゃないか。
私は慣れているので今更だけど、水津が本社に戻る時に何か問題にならないか心配になる。
「そうだよな。やっぱり」
柴多は納得したように呟くが、私はその噂に納得なんてしていない。水津は大丈夫なのだろうか。
「それって噂?」
「うん、その、進藤さんが言いふらしているみたい」
あぁ、やっぱり。と私は思う。敵意を向けられていたというのに、なんで気が付かなかったんだろう。
でも、そんな噂を流したら水津にもダメージがあるではないか。本当に何を考えているのだろう。
「ちゃんと噂の内容を教えてくれる?」
「え、いいの?嫌な気分になると思うよ。俺は、信じてるけど」
柴多は私を気にするように問いかけるが、あんなことをしておいめなぜそんな事が言えるのだろう。
しかし、それは今言うことではない。
「いいから」
「凛子が水津くんをコピー室で誘惑して、彼は脅されて嫌々キスをした。って、彼女の進藤にそれを打ち明けた。ってその子は話してたけど」
それにしても尾びれが付きすぎではないか。息を吐くように嘘をつく進藤には私は恐怖を覚えた。
「ありえないわ。コピー室で二人で転んだ事はあったけど、彼にちゃんと謝ったわ」
血の気が引いていくのがわかる。もはや言ったもの勝ちではないか。
「わかってるよ。ごめん。嫌な気分になったよな」
柴多は私の顔色を伺うように謝る。彼は悪くないのに。
「教えてくれてありがとう。信じて貰えないかもしれないけど事実無根だから」
私は辛うじてそれだけを伝えると、柴多は「わかってる」と笑った。
でも、もしかして。と、私はある事を考えてしまう。
水津は私との関係を解消したくて、こんな噂を流すように進藤を唆したのではないだろうか?と。だが、いくらなんでも立場を悪くさせるような噂を流すなんてありえない。
鞄の中も弱味を握るために進藤に漁らせたのかもしれない。水津は私を切り捨てるつもりなのかもしれない。
もしかしたら、私を油断させてその隙に潰す為の算段をとっていたのではないのだろうか?
どうしたらいいのかわからない。私のしたことは事実でもあるのだから。
「大丈夫だよ。凛子が誠実で真面目なことはみんなが知ってる。何があっても味方になってくれる人の方が多いよ」
私のグルグルと回る思考を断ち切るように柴多が口を開いた。
その瞳は純粋に私を信じているように見える。動揺している私を心から心配そうに見ている。
この偽善者。と、柴多を罵りそうになって堪える。
信じると言っておきながら、あの時あんな事をしたのだろうか。私は柴多を責めたい気持ちを抑えて言葉を飲み込んだ。
「すぐに広まりそうな噂ね」
けれど、私はそれを隠して苦笑いを作る。柴多はそんな事なんて気が付きもしないで困ったような表情になった。
「誰も信じてないよ。俺も否定するし」
柴多がそんな事を言っても私は信用なんてできない。
「当事者が否定するのが一番だと思うけど、きっと誰も私には聞いてこないでしょうね。それに、当事者一人がどれだけ否定しても、もう一人がなんて言うかでどうなるか決まってくるでしょう?」
あの時もそうだった。
腫れ物のような存在にそんな事をわざわざ聞くような人間は、私の事がよほど嫌いなんだろう。
そう、柴多と同じように。
「俺は信じてる」
嘘つき。どうせ私をまた苦しめるつもりなのでしょう?
私はその言葉を飲み込んだ。昼食は砂を噛むように味がしなかった。
匂いのない花を見ながらあることに気がつく。
知らない間に水津は私の生活の一部になっていたみたいだ。寂しさは少しあるけれど、いつか訪れる別れのために慣れなければならない。
そして、気がつけば今日が仕事納めだ。クリスマスイブけれど予定はなく。いつものように一人で過ごすつもりだ。
私は早めに会社に行くと、ギリギリでようやくわかるものの予定の整理を始めた。
「おはようございます」
ある程度、予定の整理が終わるとまばらに社員が出社してきた。柏木もすぐにやってきて、目が合うとにっこりと笑ってくれた。
こちらに配属になってから、私は意図して彼と距離をとっていたけれど、いつのまにかそれもなくなったような気がする。
柏木のことを私を追い越していく部下だと思ってずっと警戒していた。けれど、最近ではそうなってもいいか。と、思うようになっていた。
彼が出世したら純粋に喜べそうな気がする。こんなふうに自分の考えが変わるなんて思いもしなかった。
人って変わるものなのね。
そんなことを考えていると、彼女の声が聞こえてきた。
「おはようございます」
進藤が機嫌良く、水津に腕を絡ませて出社してきた。
水津は今後どうするつもりなのだろう。私はそんなことをぼんやりと考えていた。
弾けんばかりの笑顔を浮かべる進藤と、それを困ったように見ている水津は初々しいカップルにしか見えない。
「おはようございます」
私が二人に挨拶を返すと。水津は無表情で俯き、進藤は挑発するように顔を上げて目を細めた。
あまり、いい気分はしなかった。もやもやしたまま今年最後の仕事を始めた。
「凛子いい?」
昼休憩の時間に柴多がやって来た。
今日はいつになく表情が険しく、どこか落ち着きがなかった。
本社に行く不安でもあるのだろうか?
相談をするにしては、どこか態度がおかしい。私は不思議に思いながらも、そこには触れないでおいた。
「うん、いいわよ」
「用意したんだ」
柴多は言うなりランチボックスを手に持ちにっこりと笑った。買ったものではなさそうなので、どうやら手作りみたいだ。
私も急いで弁当箱を取り出そうとした。そこで、あることに気がつく。
誰か私の鞄の中を触った……?
物の配置が微妙にずれてる。それに空のピルケースが無くなっていた。
いつもボーッとしている私でも、大切なピルケースをなくしたことはなんてない。
誰が?一体何のために?
真っ白な紙に真っ黒なインクが徐々に染みていくような不安を感じた。
誰かが私に何かしようとしている。それだけはわかる。
「凛子?」
柴多に訝しげに声をかけられて「何でもない」と笑って返した。
もしかしたら柴多が絡んでいて、私の困った反応が見たいからこんな事をしたのかもしれない。
いや、柴多はこんなことをしない。その考えを否定した。
私のデスクの上でそれぞれのお弁当を広げた。
「あのさ、凛子」
柴多が眉間にシワをよせて、とても言いにくそうに口を開いた。
「何?」
私はただならない雰囲気に一瞬だけ怖気付きそうになる。
しかし、すぐに自分を取り戻して何とでもなさそうな顔をした。
「水津くんと本当に付き合っていないの?」
「え……?」
柴多は、前に否定したことを再び問いかけてきた。
「進藤さん?だっけ?あの怖い子の同期が居るんだけど」
どうやら、前に話していたスピーカーの社員は進藤の同期のようだ。
「うん」
「水津くんが進藤さんと付き合っているのに、その、凛子に迫られ困っている。って言って回っているみたいで」
柴多の言いにくそうに内容をマイルドにして説明してくれた。言葉を選んでいるが私に悪意があるような事を言って回っているのだけはわかった。
「全くそんなことないんだけど、水津くんに凄く迷惑な話しじゃないのそれって」
噂話しを教えてくれる柴多は悪くないのに、思わず噛みつきそうな勢いで反論してしまう。
そんな噂されたら、水津に迷惑をかけてしまうじゃないか。
私は慣れているので今更だけど、水津が本社に戻る時に何か問題にならないか心配になる。
「そうだよな。やっぱり」
柴多は納得したように呟くが、私はその噂に納得なんてしていない。水津は大丈夫なのだろうか。
「それって噂?」
「うん、その、進藤さんが言いふらしているみたい」
あぁ、やっぱり。と私は思う。敵意を向けられていたというのに、なんで気が付かなかったんだろう。
でも、そんな噂を流したら水津にもダメージがあるではないか。本当に何を考えているのだろう。
「ちゃんと噂の内容を教えてくれる?」
「え、いいの?嫌な気分になると思うよ。俺は、信じてるけど」
柴多は私を気にするように問いかけるが、あんなことをしておいめなぜそんな事が言えるのだろう。
しかし、それは今言うことではない。
「いいから」
「凛子が水津くんをコピー室で誘惑して、彼は脅されて嫌々キスをした。って、彼女の進藤にそれを打ち明けた。ってその子は話してたけど」
それにしても尾びれが付きすぎではないか。息を吐くように嘘をつく進藤には私は恐怖を覚えた。
「ありえないわ。コピー室で二人で転んだ事はあったけど、彼にちゃんと謝ったわ」
血の気が引いていくのがわかる。もはや言ったもの勝ちではないか。
「わかってるよ。ごめん。嫌な気分になったよな」
柴多は私の顔色を伺うように謝る。彼は悪くないのに。
「教えてくれてありがとう。信じて貰えないかもしれないけど事実無根だから」
私は辛うじてそれだけを伝えると、柴多は「わかってる」と笑った。
でも、もしかして。と、私はある事を考えてしまう。
水津は私との関係を解消したくて、こんな噂を流すように進藤を唆したのではないだろうか?と。だが、いくらなんでも立場を悪くさせるような噂を流すなんてありえない。
鞄の中も弱味を握るために進藤に漁らせたのかもしれない。水津は私を切り捨てるつもりなのかもしれない。
もしかしたら、私を油断させてその隙に潰す為の算段をとっていたのではないのだろうか?
どうしたらいいのかわからない。私のしたことは事実でもあるのだから。
「大丈夫だよ。凛子が誠実で真面目なことはみんなが知ってる。何があっても味方になってくれる人の方が多いよ」
私のグルグルと回る思考を断ち切るように柴多が口を開いた。
その瞳は純粋に私を信じているように見える。動揺している私を心から心配そうに見ている。
この偽善者。と、柴多を罵りそうになって堪える。
信じると言っておきながら、あの時あんな事をしたのだろうか。私は柴多を責めたい気持ちを抑えて言葉を飲み込んだ。
「すぐに広まりそうな噂ね」
けれど、私はそれを隠して苦笑いを作る。柴多はそんな事なんて気が付きもしないで困ったような表情になった。
「誰も信じてないよ。俺も否定するし」
柴多がそんな事を言っても私は信用なんてできない。
「当事者が否定するのが一番だと思うけど、きっと誰も私には聞いてこないでしょうね。それに、当事者一人がどれだけ否定しても、もう一人がなんて言うかでどうなるか決まってくるでしょう?」
あの時もそうだった。
腫れ物のような存在にそんな事をわざわざ聞くような人間は、私の事がよほど嫌いなんだろう。
そう、柴多と同じように。
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