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柴多とは週一回のペースでお昼を一緒に食べていた。水津はそれがなぜか気に入らない様子だが、友人付き合いだからと言って流してもらった。進藤との件もあったので強くは言えない様子だった。
今日も私は柴多と一緒にお昼を食べていた。
「あの子さ、結局辞めるみたい」
柴多は言いにくそうに話し出した。あのスピーカーの女子社員の事を話しているのだろう。
私は何となくそうなるだろうと思っていた。柴多の話を聞く限り彼女は反省していないだろう。
「そう」
私は目を伏せて返事をすると、柴多は少しだけ眉を寄せた。
「『あたしはは何もしていないのに、みんな冷たくて酷い。こんなところ辞めてやる!』だってさ」
彼女の言葉に気分をとても害したのだろう。その捨てゼリフを私に教えてくれた。
やっぱり最後の最後まで、彼女は『被害者』だったようだ。
彼女は行く先々で同じことを繰り返していきそうな気がした。
「何で凛子は怒らないの?」
柴多はその女子社員に対して、怒りを見せることもない私が気になったのだろう。
「何でだろう?もう慣れたっていうか、そんな事で怒っても無駄でしょ?信じてくれない人は信じてくれないし」
もう、あの時の、吊し上げをされた時から私は何もかもが嫌になっていた。人を信じる事も、嘘にいちいち傷つく事も。
今でも、本当は柴多の事をどこかで信じたいと思っている。
彼が本当はとても優しくて、面倒見がいいことを知っている。こうして付き合いをしてくれるのだから水に流すべきだとわかっている。だけど、あのコピー室で聞いた言葉が頭から離れないのだ。
真実は残酷で私の心をずっと傷付け続けていた。あれが嘘だったら良かった。
吊し上げの件に本当に彼は関わっていたのだろうか?だけど、彼の口から真実は一度も語られない。
あの時は柴多が私を裏切った事が信じられなかった。
私は彼の事を友人として好きだったし、彼もそうだと思っていた。
時々そんな事すら忘れてしまいそうになるし、信じたくない時だってある。
私達は友人として良好な関係だったと思う。そうなったきっかけは、元婚約者の澤田だったけれど。何も知らなければここまで人間不信にならなかっただろう。
「凛子、どうかした?」
私が急に考え事をして黙りこんだからか柴多は心配そうにこちらを見た。
「何でもないの、大丈夫。もう、柴多君とは会えなくなるんだな。って思って」
私が困ったような苦笑いを浮かべると、柴多も少しだけ寂しそうに笑った。
気がついたらそろそろ3月だ。柴多は4月に本社に行く。
「そうだな、寂しくなる」
今、話そう。
送別会をしなくてもいいかもしれない、けれど、お互いの区切りのためにこれはすべきだと思っている。
何も言わないで私が一方的に関係を切るのは、あの時に助けてくれた柴多に失礼な気がした。
「あのさ、二人しかいない同期だけど送別会したいんだ。柴多くんが嫌じゃなければ。いいかな?」
私はずっと約束を取り付けたかった送別会について柴多に確認を取った。
表情を伺うように少しだけ見上げながら話すと、さっきまでの不安な表情が嘘のようにパッと光がさしたように笑った。
「うん、ありがとう。凄く嬉しい」
柴多は取り繕ったように微笑んだ。
嘘つき……。
私は柴多の本性をよく知っている。心にも思っていないこと平気で言える。
けれど、私も同類に成り下がっているけれど。
「私がお店選ぶね」
私が偽りの笑顔を向けると柴多はコクリと頷いた。
「ありがとう。じゃあ、任せる。楽しみにしてるよ」
私は本社に行けば二度と会うこともない同期の楽しそうにしている姿を見ていた。
今日も私は柴多と一緒にお昼を食べていた。
「あの子さ、結局辞めるみたい」
柴多は言いにくそうに話し出した。あのスピーカーの女子社員の事を話しているのだろう。
私は何となくそうなるだろうと思っていた。柴多の話を聞く限り彼女は反省していないだろう。
「そう」
私は目を伏せて返事をすると、柴多は少しだけ眉を寄せた。
「『あたしはは何もしていないのに、みんな冷たくて酷い。こんなところ辞めてやる!』だってさ」
彼女の言葉に気分をとても害したのだろう。その捨てゼリフを私に教えてくれた。
やっぱり最後の最後まで、彼女は『被害者』だったようだ。
彼女は行く先々で同じことを繰り返していきそうな気がした。
「何で凛子は怒らないの?」
柴多はその女子社員に対して、怒りを見せることもない私が気になったのだろう。
「何でだろう?もう慣れたっていうか、そんな事で怒っても無駄でしょ?信じてくれない人は信じてくれないし」
もう、あの時の、吊し上げをされた時から私は何もかもが嫌になっていた。人を信じる事も、嘘にいちいち傷つく事も。
今でも、本当は柴多の事をどこかで信じたいと思っている。
彼が本当はとても優しくて、面倒見がいいことを知っている。こうして付き合いをしてくれるのだから水に流すべきだとわかっている。だけど、あのコピー室で聞いた言葉が頭から離れないのだ。
真実は残酷で私の心をずっと傷付け続けていた。あれが嘘だったら良かった。
吊し上げの件に本当に彼は関わっていたのだろうか?だけど、彼の口から真実は一度も語られない。
あの時は柴多が私を裏切った事が信じられなかった。
私は彼の事を友人として好きだったし、彼もそうだと思っていた。
時々そんな事すら忘れてしまいそうになるし、信じたくない時だってある。
私達は友人として良好な関係だったと思う。そうなったきっかけは、元婚約者の澤田だったけれど。何も知らなければここまで人間不信にならなかっただろう。
「凛子、どうかした?」
私が急に考え事をして黙りこんだからか柴多は心配そうにこちらを見た。
「何でもないの、大丈夫。もう、柴多君とは会えなくなるんだな。って思って」
私が困ったような苦笑いを浮かべると、柴多も少しだけ寂しそうに笑った。
気がついたらそろそろ3月だ。柴多は4月に本社に行く。
「そうだな、寂しくなる」
今、話そう。
送別会をしなくてもいいかもしれない、けれど、お互いの区切りのためにこれはすべきだと思っている。
何も言わないで私が一方的に関係を切るのは、あの時に助けてくれた柴多に失礼な気がした。
「あのさ、二人しかいない同期だけど送別会したいんだ。柴多くんが嫌じゃなければ。いいかな?」
私はずっと約束を取り付けたかった送別会について柴多に確認を取った。
表情を伺うように少しだけ見上げながら話すと、さっきまでの不安な表情が嘘のようにパッと光がさしたように笑った。
「うん、ありがとう。凄く嬉しい」
柴多は取り繕ったように微笑んだ。
嘘つき……。
私は柴多の本性をよく知っている。心にも思っていないこと平気で言える。
けれど、私も同類に成り下がっているけれど。
「私がお店選ぶね」
私が偽りの笑顔を向けると柴多はコクリと頷いた。
「ありがとう。じゃあ、任せる。楽しみにしてるよ」
私は本社に行けば二度と会うこともない同期の楽しそうにしている姿を見ていた。
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