転生したら異国の聖女になったが1週間で偽聖女になり公開処刑されました〜異世界でも対立構図〜

岡暁舟

文字の大きさ
5 / 7

一休み

しおりを挟む
 涼しい風が吹き抜ける。ロイド様は普段クールであまり笑顔を見せない。喜んでいるのか怒っているのか、正直分からないのだ。

「アリサ、もう少し近くにこればいいじゃないか?」

 正直心配だから私はロイド様から距離をとる癖がついていたのだ。この時はロイド様が私の方によって来てくれた。ロイド様の好物であり、私の好物にもなったサンドイッチを食べながら。ロイド様は私と過ごす時間に楽しみを見出そうとしていた。

「聖女として辛いこともあるだろうが・・・頑張ってくれな・・・」

「承知いたしました。それにしても・・・ロイド様から褒めていただけるなんて、ちょっと幸せですわ」

「そうか?確かに他人を褒めることは・・・滅多にないからな。まあ、君はそれだけの働きをしてくれた、ということだな」

「ねえ、ロイド様?」

 思い返すと、幸せになれない運命は変わるかもしれないとうっすら期待していたのだ。ロイド様のような美男子と私が結ばれるだなんて、そんなことは現実にありえないが、この世界ではそれもきっと可能なんだと思えたのだ。

 だから・・・私は少し背伸びすることにした。いやらしいかもしれないけど、私はロイド様に好かれたかった。

「どうした?今日は随分と積極的なんだね?」

「なんだか少し暑くなって来ましたね・・・」

 少女漫画のように煌びやかなラブシーンを演じることは出来ない。私は随分と不器用だから。ロイド様の頬にゆっくりとキスをしてみる。ロイド様は慣れているのか、そのくらいでは全く動じなかった。

「どうして・・・笑っているんですか!」

 私の方が緊張して、思わず叫んでしまった。

「だって・・・可愛いなって思ったから」

「・・・・・・・・・!!!!!!」

 やはり、ロイド様はずるいと思った。少女漫画に登場する美男子はみんな、こんな感じではあるけどね。

「それ、反則ですよ?」

「何が?」

「・・・・・・ひょっとして無自覚ですか?」

「・・・そうかもね」

 ああ、それはそれでいいんだけど!!!!!!

 今回の一件で私の聖女偽物?疑惑は晴れることとなった。選ばれし聖女が王族と婚約することは伝統であり私とロイド様の婚約話についても取り沙汰されるようになった。そう、このまま順調に物語が進めば、私はロイド様と婚約することが出来たのかもしれない。でもね、物語がそう上手く進まないのはこれもまた真実。


「おーい、止まれ!とまれと言っているのに!」

 ロイド様に向かって人影が突っ込んでくる・・・男ではなくて女のようだった。敵国のスパイ?そう思った。

「止まらないと命はないぞ!」

 兵士が叫ぶ。だが、女は止まる気配がない。

「オオミカナエ、ここに参上いたしましたぁっ!」

 オオミカナエ、聞き覚えのある名前だった。ひょっとして・・・。オオミカナエの登場によって物語の展開が変わり始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

処理中です...