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一休み
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涼しい風が吹き抜ける。ロイド様は普段クールであまり笑顔を見せない。喜んでいるのか怒っているのか、正直分からないのだ。
「アリサ、もう少し近くにこればいいじゃないか?」
正直心配だから私はロイド様から距離をとる癖がついていたのだ。この時はロイド様が私の方によって来てくれた。ロイド様の好物であり、私の好物にもなったサンドイッチを食べながら。ロイド様は私と過ごす時間に楽しみを見出そうとしていた。
「聖女として辛いこともあるだろうが・・・頑張ってくれな・・・」
「承知いたしました。それにしても・・・ロイド様から褒めていただけるなんて、ちょっと幸せですわ」
「そうか?確かに他人を褒めることは・・・滅多にないからな。まあ、君はそれだけの働きをしてくれた、ということだな」
「ねえ、ロイド様?」
思い返すと、幸せになれない運命は変わるかもしれないとうっすら期待していたのだ。ロイド様のような美男子と私が結ばれるだなんて、そんなことは現実にありえないが、この世界ではそれもきっと可能なんだと思えたのだ。
だから・・・私は少し背伸びすることにした。いやらしいかもしれないけど、私はロイド様に好かれたかった。
「どうした?今日は随分と積極的なんだね?」
「なんだか少し暑くなって来ましたね・・・」
少女漫画のように煌びやかなラブシーンを演じることは出来ない。私は随分と不器用だから。ロイド様の頬にゆっくりとキスをしてみる。ロイド様は慣れているのか、そのくらいでは全く動じなかった。
「どうして・・・笑っているんですか!」
私の方が緊張して、思わず叫んでしまった。
「だって・・・可愛いなって思ったから」
「・・・・・・・・・!!!!!!」
やはり、ロイド様はずるいと思った。少女漫画に登場する美男子はみんな、こんな感じではあるけどね。
「それ、反則ですよ?」
「何が?」
「・・・・・・ひょっとして無自覚ですか?」
「・・・そうかもね」
ああ、それはそれでいいんだけど!!!!!!
今回の一件で私の聖女偽物?疑惑は晴れることとなった。選ばれし聖女が王族と婚約することは伝統であり私とロイド様の婚約話についても取り沙汰されるようになった。そう、このまま順調に物語が進めば、私はロイド様と婚約することが出来たのかもしれない。でもね、物語がそう上手く進まないのはこれもまた真実。
「おーい、止まれ!とまれと言っているのに!」
ロイド様に向かって人影が突っ込んでくる・・・男ではなくて女のようだった。敵国のスパイ?そう思った。
「止まらないと命はないぞ!」
兵士が叫ぶ。だが、女は止まる気配がない。
「オオミカナエ、ここに参上いたしましたぁっ!」
オオミカナエ、聞き覚えのある名前だった。ひょっとして・・・。オオミカナエの登場によって物語の展開が変わり始めた。
「アリサ、もう少し近くにこればいいじゃないか?」
正直心配だから私はロイド様から距離をとる癖がついていたのだ。この時はロイド様が私の方によって来てくれた。ロイド様の好物であり、私の好物にもなったサンドイッチを食べながら。ロイド様は私と過ごす時間に楽しみを見出そうとしていた。
「聖女として辛いこともあるだろうが・・・頑張ってくれな・・・」
「承知いたしました。それにしても・・・ロイド様から褒めていただけるなんて、ちょっと幸せですわ」
「そうか?確かに他人を褒めることは・・・滅多にないからな。まあ、君はそれだけの働きをしてくれた、ということだな」
「ねえ、ロイド様?」
思い返すと、幸せになれない運命は変わるかもしれないとうっすら期待していたのだ。ロイド様のような美男子と私が結ばれるだなんて、そんなことは現実にありえないが、この世界ではそれもきっと可能なんだと思えたのだ。
だから・・・私は少し背伸びすることにした。いやらしいかもしれないけど、私はロイド様に好かれたかった。
「どうした?今日は随分と積極的なんだね?」
「なんだか少し暑くなって来ましたね・・・」
少女漫画のように煌びやかなラブシーンを演じることは出来ない。私は随分と不器用だから。ロイド様の頬にゆっくりとキスをしてみる。ロイド様は慣れているのか、そのくらいでは全く動じなかった。
「どうして・・・笑っているんですか!」
私の方が緊張して、思わず叫んでしまった。
「だって・・・可愛いなって思ったから」
「・・・・・・・・・!!!!!!」
やはり、ロイド様はずるいと思った。少女漫画に登場する美男子はみんな、こんな感じではあるけどね。
「それ、反則ですよ?」
「何が?」
「・・・・・・ひょっとして無自覚ですか?」
「・・・そうかもね」
ああ、それはそれでいいんだけど!!!!!!
今回の一件で私の聖女偽物?疑惑は晴れることとなった。選ばれし聖女が王族と婚約することは伝統であり私とロイド様の婚約話についても取り沙汰されるようになった。そう、このまま順調に物語が進めば、私はロイド様と婚約することが出来たのかもしれない。でもね、物語がそう上手く進まないのはこれもまた真実。
「おーい、止まれ!とまれと言っているのに!」
ロイド様に向かって人影が突っ込んでくる・・・男ではなくて女のようだった。敵国のスパイ?そう思った。
「止まらないと命はないぞ!」
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