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ファンデルワールスを取り巻くのは、なにも女に限った話ではない。友人と称する貴族たちが同級生、先輩、後輩問わず近寄って来る。その狙いは当然、彼が皇帝になった時、少しでも自らの地位を優位にしようと考えているから。貴族社会の負の面を全部背負い込んで、彼はまた学院の門をくぐる。
「おはようございます。ファンデルワールス様!!!」
相変わらず、多くの男女が彼を取り囲む。
「今日のご予定はどうなっておりますか???」
「ああ、お荷物をお持ちしましょう!!!」
「今夜は私と…………」
当然、その輪に交わらず自分のペースで生活している者は一定数存在して、彼らは一概に亀と揶揄されている。
「ああ、そこまでしなくても……」
「いいえ、あなた様はただ歩けばいいのです。あなた様が歩む道の後を我々が追いかけますから」
「いや……君たちは自分でだな……」
ファンデルワールスはこれ以上、自分が何を言ってもムダなのだと悟った。だから、静かに歩いた。そして、他の人間たちが歩むべき道を日々作っているのだ。
「相変わらず人気者だな……」
そうため口で語りかけるのは、数少ない気の知れた友人(少なくとも、ファンデルワールスはそう考えている)であるトンプソン伯爵だった。トンプソンはファンデルワールスとエリーナの関係に気付き、なるべく他人に邪魔されないよう、それとなく護衛していたのだ。卒業後はそのまま士官学校に進学し、行く末は近衛兵団となることを希望する愛国者だった。
「ああ、困っちまうさ……」
ファンデルワールスは呟いた。
「君がどれほど悩んでいるのか……いや、僕には分からないが、その話はもう止めにした方がよさそうだ。また、よからぬ噂が広がるからね……」
トンプソンはそう言って、報告書を手渡した。
「ああ、汚い字で申し訳ないね。それだけ報告が増えているんだ……君の身に迫る危険がね……」
近衛兵の見習い……それ以上に一人の友人として、ファンデルワールスに危害が及びそうな気配を察すると、すぐさま潰しにかかる……場合によっては傷害や殺人もいとわない……トンプソンは既に優秀な兵士だったのだ。
「それにしても……どうして、世界は君にこれほどのむごたらしい仕打ちを与えるのかね。君は僕と同じ学生じゃないか。それだと言うのに、どうしていとも容易く人を傷つけることができるのか……」
「それは君が心配する問題じゃないよ。君の権威を守るために……いや、そういう表現は嫌いだったね。この世界の安寧と秩序を保つためには、暗躍する人間が必要……それだけのことさ……」
トンプソンはいつも清々しい顔をしている。こうして、ファンデルワールスと雑談をしながら、最強の兵士として身辺警護をすることに誇りを持っているのだ。仮に自分が死ぬことになっても……それは運命と思って受け入れる覚悟ができているのだ。
「ファンデルワールス様……お話が……」
トンプソンはすぐさま目を光らせた。丁重な言葉遣い……ファンデルワールスに対しては当然なのだが、トンプソンを一瞬見つめると、
「なんだ、その睨み付ける視線は!!!こうしてくれるわ!!!!!」
と言って、トンプソン目がけて鞭を打った。
「おいおい、何をするんだ、エバンス!!!」
突然の暴挙に、ファンデルワールスは叫んだ。彼の声を聞いて、男は冷静になった。
「ああ、失礼いたしました。こんな醜態を披露してしまって……しかしながら、ファンデルワールス様。これは、あなた様のためでもあります。何ゆえ、この男を近づけておられるのですか???こんな家柄のみっともない男を友人になさるなんて…………」
「おい、これ以上私の友人を侮辱すると、いくら最高位公爵の子息だからと言って容赦しないぞ、エバンス!!!」
ファンデルワールスが大部怒りを膨らませてしまったので、さすがの男も平謝りするしかなかった。最高位公爵の嫡男であり、あのカーチャの兄に当たる人物……エバンスは人一倍貴族意識の強い男だった。
「はあっ、度々失礼いたしました。それはそうと、一つお願いがございまして……」
「なんだ、君にお願いされることなんて……僕に出来ることなんてまるでないと思うのだが……」
エバンスはファンデルワールスと同等、あるいはそれ以上に頭の切れる男だった。形状はまだ嫡男であるが、実質父親の肩書を利用して国政や軍隊を実質的に動かしていた。一方、皇帝陛下はまだ若く健在であり、その類の話をもって来られても、ファンデルワールスには全く決定権がないものだから仕方がないのだ。
「いいえ、ございますとも。きっとですね。ええっ、実を申し上げますと、本日学生会が放課後に開催されますので、是非ともご出席いただければと思いましてですね……」
学生会というのは、学院内部の執行組織で平たく言えば生徒の自治を守るための組織、ということになる。当然のことながら、開催者は第一王子であるファンデルワールスであるが、彼が不在の日々、学生会は開かれなかった。
「いくつか議事がございますゆえ、ファンデルワールス様の御採択を仰ぎたく開催したく存じますが……」
ファンデルワールスは、
「分かった」
と短く答えた。
「おいおい、大丈夫なのか?」
意外にも、トンプソンが疑問を抱いた。
「大丈夫って、何を心配しているんだ???いつも開いていたじゃないか……」
ファンデルワールスはトンプソンが不可思議な表情を浮かべて困惑した。
「いや、まあそうなんだけど…………」
「心配ないさ。彼は彼なりに、色々考えているのだから……」
ファンデルワールスは楽観的だった。常に人を疑い、そして自分よりも卑しいと罵ったエバンスのことが、トンプソンは気がかりだった。
「後でそれとなく、僕も行くよ」
「ああ、それは構わないがね……。ありがとう」
ファンデルワールスは軽く会釈して自分の席に戻った。
***********************************************
放課後になり、恒例の学生会が開始となった。数日間空白となった会長席に、ファンデルワールスの姿が戻ってきた。副会長であるエバンスが拍手を始めると、他の会員たちもまた続けて拍手をした。
「そこまでしなくても、ありがとう」
ファンデルワールスはやはり一度会釈をして、席についた。彼が席についたのを確認して、他の会員たちも着席した。
「ええ、それではファンデルワールス様に採択を仰ぎたい議案について、改めて報告させていただきます。ファンデルワールス様、実はあなた様が不在の時、副会長以下会員で話し合いを行いました議案がございます。それをこれから報告申し上げますゆえ、なにとぞ採択のほどよろしくお願い致します……」
ファンデルワールスは声を発さずに頷いた。
「ありがとうございます。それでは早速参りましょう……」
こうして、ファンデルワールスの採択会が始まった。基本的にファンデルワールスが承認したことは全て、学院内の新規ルールとしてまかり通ることとなる。そのため、慎重に吟味する必要があるのだ。幾つかの議題が採択され、いよいよ最後の議事に辿り着いた。
「それでは……本日最後の議事になりますが、これは安楽所の新規開設に関する話でございます……」
「安楽所???それは一体なんだ???」
ファンデルワールスは首を傾げた。
「ええ、ですからその名の通りでございます。例えば授業で運動を行ったとします。あるいは、ものすごく暑い夏の日を想像してみてください。授業が終わってすっかり疲れ切った身体を癒す場所……それが安楽所の由縁でございます。どうでしょうか……」
ファンデルワールスは多少納得した。
「発想としては面白いが……実際にはどのように運営されるのかな???」
問いかけると、エバンスはこう言った。
「それはですね……奴隷を雇い、互いの相手になってもらいます……」
「奴隷だって???それはどういうことだ???」
「いや、ですからね。この世界にはたくさんの男とたくさんの女がいるわけじゃないですか。世界全部から男女を動員して、安楽所に就職して頂くんですよ……」
エバンスが思い描いた構想……一見すると素敵な発想と捉えることができる。だがそれは、様々な意味合いでリスキーであり、それでいてトンプソンのある考えを実現させるための近道となるのだった……。
「おはようございます。ファンデルワールス様!!!」
相変わらず、多くの男女が彼を取り囲む。
「今日のご予定はどうなっておりますか???」
「ああ、お荷物をお持ちしましょう!!!」
「今夜は私と…………」
当然、その輪に交わらず自分のペースで生活している者は一定数存在して、彼らは一概に亀と揶揄されている。
「ああ、そこまでしなくても……」
「いいえ、あなた様はただ歩けばいいのです。あなた様が歩む道の後を我々が追いかけますから」
「いや……君たちは自分でだな……」
ファンデルワールスはこれ以上、自分が何を言ってもムダなのだと悟った。だから、静かに歩いた。そして、他の人間たちが歩むべき道を日々作っているのだ。
「相変わらず人気者だな……」
そうため口で語りかけるのは、数少ない気の知れた友人(少なくとも、ファンデルワールスはそう考えている)であるトンプソン伯爵だった。トンプソンはファンデルワールスとエリーナの関係に気付き、なるべく他人に邪魔されないよう、それとなく護衛していたのだ。卒業後はそのまま士官学校に進学し、行く末は近衛兵団となることを希望する愛国者だった。
「ああ、困っちまうさ……」
ファンデルワールスは呟いた。
「君がどれほど悩んでいるのか……いや、僕には分からないが、その話はもう止めにした方がよさそうだ。また、よからぬ噂が広がるからね……」
トンプソンはそう言って、報告書を手渡した。
「ああ、汚い字で申し訳ないね。それだけ報告が増えているんだ……君の身に迫る危険がね……」
近衛兵の見習い……それ以上に一人の友人として、ファンデルワールスに危害が及びそうな気配を察すると、すぐさま潰しにかかる……場合によっては傷害や殺人もいとわない……トンプソンは既に優秀な兵士だったのだ。
「それにしても……どうして、世界は君にこれほどのむごたらしい仕打ちを与えるのかね。君は僕と同じ学生じゃないか。それだと言うのに、どうしていとも容易く人を傷つけることができるのか……」
「それは君が心配する問題じゃないよ。君の権威を守るために……いや、そういう表現は嫌いだったね。この世界の安寧と秩序を保つためには、暗躍する人間が必要……それだけのことさ……」
トンプソンはいつも清々しい顔をしている。こうして、ファンデルワールスと雑談をしながら、最強の兵士として身辺警護をすることに誇りを持っているのだ。仮に自分が死ぬことになっても……それは運命と思って受け入れる覚悟ができているのだ。
「ファンデルワールス様……お話が……」
トンプソンはすぐさま目を光らせた。丁重な言葉遣い……ファンデルワールスに対しては当然なのだが、トンプソンを一瞬見つめると、
「なんだ、その睨み付ける視線は!!!こうしてくれるわ!!!!!」
と言って、トンプソン目がけて鞭を打った。
「おいおい、何をするんだ、エバンス!!!」
突然の暴挙に、ファンデルワールスは叫んだ。彼の声を聞いて、男は冷静になった。
「ああ、失礼いたしました。こんな醜態を披露してしまって……しかしながら、ファンデルワールス様。これは、あなた様のためでもあります。何ゆえ、この男を近づけておられるのですか???こんな家柄のみっともない男を友人になさるなんて…………」
「おい、これ以上私の友人を侮辱すると、いくら最高位公爵の子息だからと言って容赦しないぞ、エバンス!!!」
ファンデルワールスが大部怒りを膨らませてしまったので、さすがの男も平謝りするしかなかった。最高位公爵の嫡男であり、あのカーチャの兄に当たる人物……エバンスは人一倍貴族意識の強い男だった。
「はあっ、度々失礼いたしました。それはそうと、一つお願いがございまして……」
「なんだ、君にお願いされることなんて……僕に出来ることなんてまるでないと思うのだが……」
エバンスはファンデルワールスと同等、あるいはそれ以上に頭の切れる男だった。形状はまだ嫡男であるが、実質父親の肩書を利用して国政や軍隊を実質的に動かしていた。一方、皇帝陛下はまだ若く健在であり、その類の話をもって来られても、ファンデルワールスには全く決定権がないものだから仕方がないのだ。
「いいえ、ございますとも。きっとですね。ええっ、実を申し上げますと、本日学生会が放課後に開催されますので、是非ともご出席いただければと思いましてですね……」
学生会というのは、学院内部の執行組織で平たく言えば生徒の自治を守るための組織、ということになる。当然のことながら、開催者は第一王子であるファンデルワールスであるが、彼が不在の日々、学生会は開かれなかった。
「いくつか議事がございますゆえ、ファンデルワールス様の御採択を仰ぎたく開催したく存じますが……」
ファンデルワールスは、
「分かった」
と短く答えた。
「おいおい、大丈夫なのか?」
意外にも、トンプソンが疑問を抱いた。
「大丈夫って、何を心配しているんだ???いつも開いていたじゃないか……」
ファンデルワールスはトンプソンが不可思議な表情を浮かべて困惑した。
「いや、まあそうなんだけど…………」
「心配ないさ。彼は彼なりに、色々考えているのだから……」
ファンデルワールスは楽観的だった。常に人を疑い、そして自分よりも卑しいと罵ったエバンスのことが、トンプソンは気がかりだった。
「後でそれとなく、僕も行くよ」
「ああ、それは構わないがね……。ありがとう」
ファンデルワールスは軽く会釈して自分の席に戻った。
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放課後になり、恒例の学生会が開始となった。数日間空白となった会長席に、ファンデルワールスの姿が戻ってきた。副会長であるエバンスが拍手を始めると、他の会員たちもまた続けて拍手をした。
「そこまでしなくても、ありがとう」
ファンデルワールスはやはり一度会釈をして、席についた。彼が席についたのを確認して、他の会員たちも着席した。
「ええ、それではファンデルワールス様に採択を仰ぎたい議案について、改めて報告させていただきます。ファンデルワールス様、実はあなた様が不在の時、副会長以下会員で話し合いを行いました議案がございます。それをこれから報告申し上げますゆえ、なにとぞ採択のほどよろしくお願い致します……」
ファンデルワールスは声を発さずに頷いた。
「ありがとうございます。それでは早速参りましょう……」
こうして、ファンデルワールスの採択会が始まった。基本的にファンデルワールスが承認したことは全て、学院内の新規ルールとしてまかり通ることとなる。そのため、慎重に吟味する必要があるのだ。幾つかの議題が採択され、いよいよ最後の議事に辿り着いた。
「それでは……本日最後の議事になりますが、これは安楽所の新規開設に関する話でございます……」
「安楽所???それは一体なんだ???」
ファンデルワールスは首を傾げた。
「ええ、ですからその名の通りでございます。例えば授業で運動を行ったとします。あるいは、ものすごく暑い夏の日を想像してみてください。授業が終わってすっかり疲れ切った身体を癒す場所……それが安楽所の由縁でございます。どうでしょうか……」
ファンデルワールスは多少納得した。
「発想としては面白いが……実際にはどのように運営されるのかな???」
問いかけると、エバンスはこう言った。
「それはですね……奴隷を雇い、互いの相手になってもらいます……」
「奴隷だって???それはどういうことだ???」
「いや、ですからね。この世界にはたくさんの男とたくさんの女がいるわけじゃないですか。世界全部から男女を動員して、安楽所に就職して頂くんですよ……」
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