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旅に出ると言っても、明確な行き先があったわけではなく気の向いた方向にひたすら歩くこととした。モートン家の人々にとっては婚約破棄された事実のみが重くのしかかるだけであって、私が存在するかしないか、と言うのは大きな問題にはならなかった。私がクロビッツ様と婚約することで公爵家の名声が担保出来たわけであって、婚約出来ない事実を突きつけられて、モートン家は機能不全に陥っていたのだ。
「今一度カナエとの婚約を考え直してはくださいませんか?」
お父様は毎日毎日、クロビッツ様のとこに通い詰めていると噂に聞いた。
「そうは言っても・・・今更婚約破棄を撤回することは出来ないしなあっ。それにカナエ殿はやはり、不細工ですからね。あの方の身体を抱く気分にはならないですな・・・」
「はあっ、ごもっともでございますっ!」
子供のことを馬鹿にされても、親はひたすらクロビッツ様のご機嫌とりに勤しむ・・・本当に可笑しな世界だと思う。ただ、救いなのはこの世界の大部分を占める一般階級の市民たちであった。私が歩む世界を住処とする市民たちは、どうも私の顔をじっと見て、私こそが不遇にも婚約破棄された公爵令嬢カナエであることに気がつくようだった。まあ、自分で認めるのも辛いところではあるけれど、貴族世界の中では不細工な部類に入る、というか私よりも容姿端麗な令嬢はたくさんいるわけだからクロビッツ様の発言はあながち間違ってはいなかったのだ。
「すごーく綺麗な人だっ!」
子供たちは正直・・・不細工ではあるけど、かえって親しみやすいのだろうか、私が進む道に小さな女の子たちが集まってくる。
「お姉さんはひょっとしてお姫様なの?」
子供達が質問してくる。直接は返事しない。なんとなく分かるのだろう。ゴシップ新聞の恰好のネタになっているはずだからね。
「かわいそうなお姫様・・・」
子供達にまで同情されるのがどうなのか、微妙なところではあるが、彼ら彼女らの方が貴族よりも真っ当な人間心を持ち合わせているのは事実だと思った。
「今一度カナエとの婚約を考え直してはくださいませんか?」
お父様は毎日毎日、クロビッツ様のとこに通い詰めていると噂に聞いた。
「そうは言っても・・・今更婚約破棄を撤回することは出来ないしなあっ。それにカナエ殿はやはり、不細工ですからね。あの方の身体を抱く気分にはならないですな・・・」
「はあっ、ごもっともでございますっ!」
子供のことを馬鹿にされても、親はひたすらクロビッツ様のご機嫌とりに勤しむ・・・本当に可笑しな世界だと思う。ただ、救いなのはこの世界の大部分を占める一般階級の市民たちであった。私が歩む世界を住処とする市民たちは、どうも私の顔をじっと見て、私こそが不遇にも婚約破棄された公爵令嬢カナエであることに気がつくようだった。まあ、自分で認めるのも辛いところではあるけれど、貴族世界の中では不細工な部類に入る、というか私よりも容姿端麗な令嬢はたくさんいるわけだからクロビッツ様の発言はあながち間違ってはいなかったのだ。
「すごーく綺麗な人だっ!」
子供たちは正直・・・不細工ではあるけど、かえって親しみやすいのだろうか、私が進む道に小さな女の子たちが集まってくる。
「お姉さんはひょっとしてお姫様なの?」
子供達が質問してくる。直接は返事しない。なんとなく分かるのだろう。ゴシップ新聞の恰好のネタになっているはずだからね。
「かわいそうなお姫様・・・」
子供達にまで同情されるのがどうなのか、微妙なところではあるが、彼ら彼女らの方が貴族よりも真っ当な人間心を持ち合わせているのは事実だと思った。
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