信頼していた妹が私の円満な婚約を壊すまで

岡暁舟

文字の大きさ
3 / 5

その3

しおりを挟む
「私にはこの世界を修正できる能力があるのです……」

こんなことを真面目に主張するのは、いささかバカらしい……だがしかし、それが現実に起こってしまったら?


「私がこれほどまでに不遇な人生を過ごしてきたことを考えれば……お姉様に何をしたって許されるのでしょう???私は強いのです。そして、愚かな人間どもを味方につける能力を持っているのですから……」

「恐怖による支配ですか???まあ、試しにやってみましょうか????」


「ねえ、誰か私を助けてくれませんか????」

そう言って、マルクは試しに道のど真ん中に横たわってみる。

しばらくすると、旅人が足を止める。

「何かお困りですか???お嬢さん???」

そう言って、マルクに声をかける。

「ええ、私を助けてくださいませんか???お礼は致しますから……」

そう言って、マルクは旅人に願い事を伝える。旅人は一瞬目を丸くする。

「それは……そもそも私は旅人でして、この地には疎いものですから……」

「あら、そうはおっしゃっても……恐らくは隣国の貴族様なのではありませんか???」

マルクには感覚でわかる。この旅人がそれなりの地位にある人物なのだと。

「なるほど……見破られておるのですか……ですが、本当にお力になれるかは……」

「でも、あなたの背後を護衛されている方々は様々な情報をお持ちのようですわね???まさか……当国を秘密裏に内偵されていたりとか????」

マルクの嗅覚は人一倍鋭いともいえる。外見だけで、その人となりをおおよそ判断することができるのだ。

「まさか……そんなことは……」

「あら、怪しいですわね???」

「いいえ、決してそんなことは……」

「本当ですか????それでは、私がこれからあなたを然るべき場所にお連れしても宜しいのですか????」

そんなことを言われてしまったら、旅人はもうすっかり困惑してしまったのだった。

「それで……私にどうしろと???」

「ええ、すぐさま調査を済ませて頂いて……ちょっとした内乱を起こして下さればいいのですよ。ああ、私を裏切ると、後であなたの命が飛ぶことになりかねませんよ???それに引き換え……私の提案を受け入れてくださったら……そうですわね、甘いひと時が待っておりますわよ???」

そう言って、マルクは白いワンピースを少しばかり開けて見せた。

「なるほど……そうですか、そうですか。分かりましたよ……」

旅人はすぐさま、馬車に乗り込み、その背後に控える人々を引き連れて、スーザン達のいる城に向かったのだった。


「これで、私の計画は全て上手くいくのです……。お姉様たちがどんな顔をするのか……私には楽しみですわ……」

「親愛なるお姉様が私に裏切られた時……お姉様は一体、どんな顔をなさるのでしょうか???」

「どうして???こんなことに???そんな疑問を抱くのでしょうか???ああ、どうだってかまいませんわ!!!これで……私の人生が新しく動き出すのですから!!!!!」

マルクはそう言って、新しい空の行方を薄っすらと眺めていたのだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

やり直しの王太子、全力で逃げる

雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。 僕は、気が付けば十歳に戻っていた。 婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。 果たしてその結末は…

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

処理中です...