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第一話 素直になれない再会(6)

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   ◆◆◆

 言うまでも無いことだと思うが、言わないとダメらしいので白状しようと思う。
 まず、ウソをついていたわけじゃない。プロになれそうもないからサッカーをやめたという気持ちにウソは無い。サッカーは好きだが、仕事には出来ないと思った。
 俺はウソをついたんじゃなくて本心を言わなかっただけだ。正直に言うのが恥ずかしかったからだ。

   ◆◆◆

 彼のことはキライじゃない、人前で話すのもイヤじゃない、それは本心からの気持ち。
 だけどわたしは素直になれないことがあった。
 自分から離れておいて、いまさら寄りを戻そうとするなんて都合が良すぎる、そんな気持ちが働くことがあった。
 たとえば、

「なあ、今日も練習に付き合ってくれないか?」

 こういう時だ。
 先輩から指導を頼まれているのだから素直に受け答えるべき場面だ。
 だけど、

「また? たまには他の人に頼んでよ。わたしも自分の練習があるんだから」

 わたしはこんなイジワルな態度を取ってしまうことがあった。
 はっきり言って大人げ無い。高校生はオトナじゃないとしても、あまりに子供じみている。
 頭の中ではそう分かっていても素直になれない、そんな時があった。
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