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第一章 火蓋を切って新たな時代への狼煙を上げよ
第七話 美女と最強の獣(3)
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その球は形状が特殊であった。シャロンはキーラがその球に絶対の自信を抱いているのと同時に、その特殊性を感じ取れていた。
その球はすり鉢状にへこんでいた。へこんでいる部分がシャロンのほうに向き続けるように、それは無回転で投げられていた。
そして次の瞬間、それは点火した。
内部にある炎魔法が酸素と結びつき、燃焼を始める。
そして生じた熱エネルギーは隣の炎魔法の元素に移り、同じように燃焼させる。
それが連鎖的に、そして爆発的に全体に伝わり、球の内部は炎の海に。
だが、燃焼速度に依存したその爆発力は閉じ込められているゆえに行き場を失う。
だから内部から食い破ろうとする。
そして当然、真っ先に破られるのは一番もろい部分。
それはへこんでいる部分であった。
シャロンはそれを感じ取った。
内部の炎がすり鉢状の外殻に絡みつくように渦を巻いたことを。
炎が瞬く間にすり鉢状の外殻を食い破ったことを。
螺旋状になった炎が中心軸に収束したことを。
そして完成した造形、それは正に赤い槍であった。
これは我々の世界で「モンロー・ノイマン効果」と呼ばれているものとまったく同じ現象であった。
そしてそれは対戦車兵器などに用いられている技術。爆発のエネルギーを一点に収束させる技術。
ゆえにその破壊力は、
「キャアアアァッ!」
槍の直撃を大きく避けたはずのシャロンの体を吹き飛ばすほどのものであった。
砕けた防御魔法の残骸と共に地面の上を派手に滑る。
直後に追撃の弾幕が迫る。
地面の上を転がりながらその弾幕を避け、同時に体勢を立て直す。
即座に鋭く地を蹴る。
直後、シャロンが直前までいた場所に赤い槍が奔った(はしった)。
爆発魔法は投擲から点火まで猶予がある。だから音速を超える赤い槍であっても避けることが出来る。
そして外れた槍は家屋に突き刺さり、その壁に大穴を空けた。
しかし同時に生じた衝撃波だけでシャロンの体をまたしても軽々と吹き飛ばされた。
「……っ!」
地面の上を乱暴に転がされる痛みを受身でごまかす。
家屋が倒壊する音が場に響き始める。
その音と振動を背中で感じながら、シャロンは再び立ち上がって地を蹴った。
目指す先は決まっていた。
包囲している影達だ。
敵の集団の中に飛び込めば射線が無くなる。
しかし、あの赤い槍は味方ごとなぎ払う力を持っている。
されど、あの女は味方を巻き込むようなことはしないと、シャロンは踏んでいた。
が、
(それは少し違うわね)
キーラの考えは異なっていた。
そんなことをせずともシャロンは倒せると、キーラは踏んでいるのだ。
シャロンはその余裕を含んだキーラの思考も読み取ったが、無視して影達に突進した。
サイラスの時とは違う、突破では無く交戦そのものを目的とした突進。
そうはさせぬと、
「「「破ッ!」」」
前列の影達は気勢と共に爪を繰り出した。
だが、この時既にシャロンの左手には防御魔法が生まれていた。
それはまだ小さな盾であったが、目の前の数人を突破するには十分であった。
だから、
「破ッ!」
シャロンは同じ気勢で、光る嵐を繰り出した。
「「「――っ!」」」
目の前の数人が血煙と共に舞い散る。
それでも満たされなかった光る蛇の群れは、列を成している影達に襲い掛かった。
ある影は防御魔法で受け、別の影は爪で切り払ったが、
「ぐっ!?」「っ!」「ぎゃ?!」
逆に噛み刻まれた影もいた。
悲鳴と共に赤い霧が影達の体から生まれる。
シャロンはその霧を浴びに行くかのように、
「疾ッ!」
被害が生じて列が崩れたその箇所に斬り込んだ。
「「「蛇ッ!」」」
直後に狼牙の陣と同等の連携攻撃がシャロンに襲い掛かる。
四方八方から迫る爪の嵐を一本の針で全て受け払うシャロン。
その嵐の中でシャロンは次の手を練った。
このまま敵の中を斬り進んでキーラに接近戦を仕掛けるか。
実行できる可能性は低いが、なんとか隙を見つけて装填し、射撃するか。
シャロンは無難に前者の選択肢を実行に移そうとしたが、
「!?」
瞬間、感じ取った「それ」に、シャロンの計画は狂った。
今度の「それ」は爆発魔法では無かった。
「それ」は、キーラの手から伸びた電撃魔法の糸。
ただの糸ならば驚くに値しない。
だがそれは直後にうごめき、変わり始めた。
絡み合うように束になり、ある形を作り始める。
そうだ。これは魔王が見せたものと同じ技。
そして出来上がった形はシャロンが感じ取ったとおりのものであった。
それは豹。
そしてその人形は見た目通りのしなやかさと速度で走り始めた。
人ごみの中を苦もせず駆け抜ける。
尾は電源と繋がっていない。完全な遠隔操作型。だから人ごみの中でも糸が絡んだりしない。
一定時間でその人形は力尽きるが、その俊敏な足を振り切ることはこの乱戦の中では不可能に見えた。
その球はすり鉢状にへこんでいた。へこんでいる部分がシャロンのほうに向き続けるように、それは無回転で投げられていた。
そして次の瞬間、それは点火した。
内部にある炎魔法が酸素と結びつき、燃焼を始める。
そして生じた熱エネルギーは隣の炎魔法の元素に移り、同じように燃焼させる。
それが連鎖的に、そして爆発的に全体に伝わり、球の内部は炎の海に。
だが、燃焼速度に依存したその爆発力は閉じ込められているゆえに行き場を失う。
だから内部から食い破ろうとする。
そして当然、真っ先に破られるのは一番もろい部分。
それはへこんでいる部分であった。
シャロンはそれを感じ取った。
内部の炎がすり鉢状の外殻に絡みつくように渦を巻いたことを。
炎が瞬く間にすり鉢状の外殻を食い破ったことを。
螺旋状になった炎が中心軸に収束したことを。
そして完成した造形、それは正に赤い槍であった。
これは我々の世界で「モンロー・ノイマン効果」と呼ばれているものとまったく同じ現象であった。
そしてそれは対戦車兵器などに用いられている技術。爆発のエネルギーを一点に収束させる技術。
ゆえにその破壊力は、
「キャアアアァッ!」
槍の直撃を大きく避けたはずのシャロンの体を吹き飛ばすほどのものであった。
砕けた防御魔法の残骸と共に地面の上を派手に滑る。
直後に追撃の弾幕が迫る。
地面の上を転がりながらその弾幕を避け、同時に体勢を立て直す。
即座に鋭く地を蹴る。
直後、シャロンが直前までいた場所に赤い槍が奔った(はしった)。
爆発魔法は投擲から点火まで猶予がある。だから音速を超える赤い槍であっても避けることが出来る。
そして外れた槍は家屋に突き刺さり、その壁に大穴を空けた。
しかし同時に生じた衝撃波だけでシャロンの体をまたしても軽々と吹き飛ばされた。
「……っ!」
地面の上を乱暴に転がされる痛みを受身でごまかす。
家屋が倒壊する音が場に響き始める。
その音と振動を背中で感じながら、シャロンは再び立ち上がって地を蹴った。
目指す先は決まっていた。
包囲している影達だ。
敵の集団の中に飛び込めば射線が無くなる。
しかし、あの赤い槍は味方ごとなぎ払う力を持っている。
されど、あの女は味方を巻き込むようなことはしないと、シャロンは踏んでいた。
が、
(それは少し違うわね)
キーラの考えは異なっていた。
そんなことをせずともシャロンは倒せると、キーラは踏んでいるのだ。
シャロンはその余裕を含んだキーラの思考も読み取ったが、無視して影達に突進した。
サイラスの時とは違う、突破では無く交戦そのものを目的とした突進。
そうはさせぬと、
「「「破ッ!」」」
前列の影達は気勢と共に爪を繰り出した。
だが、この時既にシャロンの左手には防御魔法が生まれていた。
それはまだ小さな盾であったが、目の前の数人を突破するには十分であった。
だから、
「破ッ!」
シャロンは同じ気勢で、光る嵐を繰り出した。
「「「――っ!」」」
目の前の数人が血煙と共に舞い散る。
それでも満たされなかった光る蛇の群れは、列を成している影達に襲い掛かった。
ある影は防御魔法で受け、別の影は爪で切り払ったが、
「ぐっ!?」「っ!」「ぎゃ?!」
逆に噛み刻まれた影もいた。
悲鳴と共に赤い霧が影達の体から生まれる。
シャロンはその霧を浴びに行くかのように、
「疾ッ!」
被害が生じて列が崩れたその箇所に斬り込んだ。
「「「蛇ッ!」」」
直後に狼牙の陣と同等の連携攻撃がシャロンに襲い掛かる。
四方八方から迫る爪の嵐を一本の針で全て受け払うシャロン。
その嵐の中でシャロンは次の手を練った。
このまま敵の中を斬り進んでキーラに接近戦を仕掛けるか。
実行できる可能性は低いが、なんとか隙を見つけて装填し、射撃するか。
シャロンは無難に前者の選択肢を実行に移そうとしたが、
「!?」
瞬間、感じ取った「それ」に、シャロンの計画は狂った。
今度の「それ」は爆発魔法では無かった。
「それ」は、キーラの手から伸びた電撃魔法の糸。
ただの糸ならば驚くに値しない。
だがそれは直後にうごめき、変わり始めた。
絡み合うように束になり、ある形を作り始める。
そうだ。これは魔王が見せたものと同じ技。
そして出来上がった形はシャロンが感じ取ったとおりのものであった。
それは豹。
そしてその人形は見た目通りのしなやかさと速度で走り始めた。
人ごみの中を苦もせず駆け抜ける。
尾は電源と繋がっていない。完全な遠隔操作型。だから人ごみの中でも糸が絡んだりしない。
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