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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第九話 ヘルハルトという男(15)
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◆◆◆
深夜――
ルイスとサイラスの泊り込みが決定し、みなが寝静まったあと、ベッドで寝ている女の頭の中から二人のひそひそ話の声が響き始めた。
「今回の素体は優秀よ。魔法能力も身体能力も文句無し」
少し興奮した様子で話すアリスに対し、シャロンが「それは良かった」と相槌を打つと、アリスは興奮したまま言葉を続けた。
「特に頭脳はすごいわ。虫の生産力はずばぬけてる。これなら考えていたことよりもすごいことが出来る。『過去最高』のあなたに迫れる、いや、超えられるかもしれないわよ」
この言葉に興味を惹かれたシャロンは尋ね返した。
「過去最高のわたしって、どんな感じだったの?」
それは嬉しい質問だったのか、アリスは待っていたとばかりに答えた。
「全盛期の魔王に勝ったくらい、と言えばわかりやすいかしら? でも、戦争には結局負けちゃったけど」
負けたという事実に興奮は冷めたが、アリスはすぐに取り直して口を開いた。
「魔王は大きなミスを犯した。銃の存在の察知と対策が遅れたことじゃない。あなたの素体を生み出している一族を逃がしてしまったことよ」
その言葉に、シャロンは今度は一族に対しての興味が沸いた。
「そんなに優秀な素体を産み出せるなんて、よほど優れた血を持つ一族なのね」
アリスは「当然よ」と答えた。
「元王族だから。特権や資金力を生かして優秀な血を各地から集めていたから。その権力は戦争に敗れても残った。おかげで、魔法力が高い子や、珍しいはずの電撃魔法の使い手を今もよく産み出しているわ。一族はあなたを支援する形で、いつか訪れる反撃の時に備えて牙を研ぎ続けてきたのよ」
そしてアリスは再び興奮の笑みを浮かべながら口を開いた。
「ルイスも着々と準備を整えているみたいだし、次はきっと楽しい戦いになるわよ」
その一族は似ていた。
強い支配者を自ら作り出し、その強さから生じる象徴性に寄り添う一族。
その生き方は大工によく似ていた。
しかし一族はどうやってその技術を身に着けたのか。
一族が編み出した技術では無い。一族は教えられたのだ。
そのルーツははるか南、温暖な気候の森林地帯の中にあった。
アリスは忘れてしまっている。
その地が故郷であることを。
アリスは知らない。
その地で大きな異変が起きつつあることを。
運命が引き合うように、アリスはその故郷に呼ばれていることを。
第十話 神と精霊使い に続く
深夜――
ルイスとサイラスの泊り込みが決定し、みなが寝静まったあと、ベッドで寝ている女の頭の中から二人のひそひそ話の声が響き始めた。
「今回の素体は優秀よ。魔法能力も身体能力も文句無し」
少し興奮した様子で話すアリスに対し、シャロンが「それは良かった」と相槌を打つと、アリスは興奮したまま言葉を続けた。
「特に頭脳はすごいわ。虫の生産力はずばぬけてる。これなら考えていたことよりもすごいことが出来る。『過去最高』のあなたに迫れる、いや、超えられるかもしれないわよ」
この言葉に興味を惹かれたシャロンは尋ね返した。
「過去最高のわたしって、どんな感じだったの?」
それは嬉しい質問だったのか、アリスは待っていたとばかりに答えた。
「全盛期の魔王に勝ったくらい、と言えばわかりやすいかしら? でも、戦争には結局負けちゃったけど」
負けたという事実に興奮は冷めたが、アリスはすぐに取り直して口を開いた。
「魔王は大きなミスを犯した。銃の存在の察知と対策が遅れたことじゃない。あなたの素体を生み出している一族を逃がしてしまったことよ」
その言葉に、シャロンは今度は一族に対しての興味が沸いた。
「そんなに優秀な素体を産み出せるなんて、よほど優れた血を持つ一族なのね」
アリスは「当然よ」と答えた。
「元王族だから。特権や資金力を生かして優秀な血を各地から集めていたから。その権力は戦争に敗れても残った。おかげで、魔法力が高い子や、珍しいはずの電撃魔法の使い手を今もよく産み出しているわ。一族はあなたを支援する形で、いつか訪れる反撃の時に備えて牙を研ぎ続けてきたのよ」
そしてアリスは再び興奮の笑みを浮かべながら口を開いた。
「ルイスも着々と準備を整えているみたいだし、次はきっと楽しい戦いになるわよ」
その一族は似ていた。
強い支配者を自ら作り出し、その強さから生じる象徴性に寄り添う一族。
その生き方は大工によく似ていた。
しかし一族はどうやってその技術を身に着けたのか。
一族が編み出した技術では無い。一族は教えられたのだ。
そのルーツははるか南、温暖な気候の森林地帯の中にあった。
アリスは忘れてしまっている。
その地が故郷であることを。
アリスは知らない。
その地で大きな異変が起きつつあることを。
運命が引き合うように、アリスはその故郷に呼ばれていることを。
第十話 神と精霊使い に続く
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