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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十九話 黄金の林檎(18)
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その声を合図に全部隊はゆっくりと前進を開始した。
陣形は三列。
一列目は大盾兵と銃兵の混成部隊。
最前で大盾持ちが壁を作り、その真後ろに銃持ちが立ち並ぶ。
、シャロンなどの主力部隊と魔法使い達は二列目に配置。
三列目には大砲と、魔王軍との戦いで使われたあの巨大大砲が並んでいた。
巨大大砲の数は五門。
雲水達が持ってきた『てつはう』と呼ばれる爆発弾の投擲台も並んで配置されている。
指揮官を兼任するルイスはそれらしく中央にいた。
そしてルイスはある部隊の方に視線を向けながら声を上げた。
「予定通り、こちらもドラゴンを展開しろ!」
その指示で動き始めたのはサイラスが率いる部隊。
サイラスの部隊は魂の扱いに長けるフレッドとベアトリスとデュラン、そして魔法使い達で構成されていた。
サイラスが死神を展開し、アルフレッドとベアトリスが蝶の精霊を展開する。
デュランは既に魂を蓄えた状態。長い髪を振り広げ、大量の果実を実らせている。
死神と蝶はその果実を収穫し、慣れた粘土職人のようにドラゴンを組み上げていった。
そして十体のドラゴンが完成すると同時に、サイラスが声を上げた。
「魔力の充填を開始!」
その声を合図に、ドラゴンは変化した。
毛むくじゃらになるように、体中から糸が伸びる。
そして糸は周囲の魔法使い達を包み込んだ。
魔法使い達の手と接続され、魔力がドラゴンに送られ始める。
直後にサイラスの声が再び響いた。
「続いて、対空迎撃用の精霊を展開!」
この声で動き始めたのはシャロンとキーラであった。
手の平を真上にかかげ、ドラゴンの糸と接続する。
そして送り込まれ始めたのは炎の魔力。
赤い魔力がドラゴンの体を同じ色に染め上げていく。
そしてその巨体が赤い光で満たされると、ドラゴンは作業を開始した。
まるで子を宿すように、体内で何かが形作られていく。
その形がある動物のものであることが明らかになった直後、それはドラゴンの体から産まれ出た。
赤い球を体内に宿した鳥が次々とドラゴンの体から這い出てくる。
そして鳥達は一斉に羽を広げ、空に向かって羽ばたいた。
翼が大きい。ゆえに兵士達は鷲や鷹を連想した
その鷲と鷹の精霊たちが兵士達の真上を旋回し始めると、後方からルイスに向かって心の声が響いた。
(間も無く射程内!)
それは大型大砲の射手からの声であった。
その声に対し、ルイスは射手の方に振り返りながら叫んだ。
「合図は待たなくていい! 射程に入ると同時に撃て!」
その声からしばらくして、最初の轟音が響いた。
間も無く、次々と大型大砲が火を噴き始める。
敵の大砲からの反撃は無い。
敵の大砲は屋根上という高所に配置されているが、それでも大型大砲の射程の方が勝っているからだ。
だから全部隊は予定通りその場で一旦停止した。
放たれた砲弾が要塞と化した港町の防壁に大穴を開けていく。
一方的な射撃。
だが、敵がこのまま黙って撃たれ続けるはずは無かった。
そして、その反撃がどのような形で行われるのか、ルイスは予想がついていた。
だからルイスはその動きを敏感に感じ取り、即座に声を上げることが出来た。
「っ!! 来るぞ! 全部隊、対空戦用意!」
その声に、兵士達は一斉に空に向かって銃を構えた。
そして間も無く、それは空からやってきた。
数えきれない。間違い無く数百はいる。
あの「トビウオのようだ」と言われた小さなドラゴンの群れだ。
しかしその大きさはトビウオのそれにあらず。
大人の熊と同等。
小さなドラゴンの群れはその力強い体躯を見せつけるように揺らしながら、空から迫ってきた。
全員が固唾を飲みながら狙いを定める。
しばらくして、ある部隊の隊長が声を上げた。
「届くぞ! 撃ちまくれ!」
銃兵達が一斉に銃口から火を噴かせ、爆竹のような銃声に場が包まれる。
標的はどれも魔力が満ちて銀色に輝いている。感知能力者で無くとも狙いは定められた。
弾幕が小さなドラゴンの体に穴を空けていく。
羽に、首に、胸に、尾びれに。次々と着弾。
だが落ちない。
当然であった。
これは肉で出来た生き物では無い。生き物の形をした魂の集合体だ。
ゆえに小さな穴はすぐに修復される。
そのことに気づいたある兵士が声を上げた。
「小さな穴をあちこちに空けても意味が無い! 攻撃は一点に集中させろ!」
その言葉を、隊長が具体的な指示に変えた。
「胴体のど真ん中を狙え!」
直後にそれは実行された。
銃兵達の銃口が同時に、一斉に火を噴く。
放たれた銃弾は吸い込まれるように怪物の胸部の一点に収束し、そこに大穴を空けた。
再生力を超える損傷。
飛行力を失い、落下を始める。
「やった!」
「落ちていくぞ!」
思わず歓喜の声を上げる兵士達。
だが、その声は、
「「「うわあああっ!」」」
直後に響いた悲鳴によって塗りつぶされた。
同時に、光魔法特有の炸裂音が兵士達の耳を打つ。
見ると、怪物が落ちたところにいた兵士達は派手に吹き飛び、倒れていた。
怪物の体内に蓄えられていた光の魔力が炸裂したのだ。
熊と同じ大きさの巨大な光弾が落ちてきたのに等しい。
だからある隊長は直後に声を上げた。
「こいつは魔力を抱えた爆弾だ! 落下地点を予測して避けろ!」
陣形は三列。
一列目は大盾兵と銃兵の混成部隊。
最前で大盾持ちが壁を作り、その真後ろに銃持ちが立ち並ぶ。
、シャロンなどの主力部隊と魔法使い達は二列目に配置。
三列目には大砲と、魔王軍との戦いで使われたあの巨大大砲が並んでいた。
巨大大砲の数は五門。
雲水達が持ってきた『てつはう』と呼ばれる爆発弾の投擲台も並んで配置されている。
指揮官を兼任するルイスはそれらしく中央にいた。
そしてルイスはある部隊の方に視線を向けながら声を上げた。
「予定通り、こちらもドラゴンを展開しろ!」
その指示で動き始めたのはサイラスが率いる部隊。
サイラスの部隊は魂の扱いに長けるフレッドとベアトリスとデュラン、そして魔法使い達で構成されていた。
サイラスが死神を展開し、アルフレッドとベアトリスが蝶の精霊を展開する。
デュランは既に魂を蓄えた状態。長い髪を振り広げ、大量の果実を実らせている。
死神と蝶はその果実を収穫し、慣れた粘土職人のようにドラゴンを組み上げていった。
そして十体のドラゴンが完成すると同時に、サイラスが声を上げた。
「魔力の充填を開始!」
その声を合図に、ドラゴンは変化した。
毛むくじゃらになるように、体中から糸が伸びる。
そして糸は周囲の魔法使い達を包み込んだ。
魔法使い達の手と接続され、魔力がドラゴンに送られ始める。
直後にサイラスの声が再び響いた。
「続いて、対空迎撃用の精霊を展開!」
この声で動き始めたのはシャロンとキーラであった。
手の平を真上にかかげ、ドラゴンの糸と接続する。
そして送り込まれ始めたのは炎の魔力。
赤い魔力がドラゴンの体を同じ色に染め上げていく。
そしてその巨体が赤い光で満たされると、ドラゴンは作業を開始した。
まるで子を宿すように、体内で何かが形作られていく。
その形がある動物のものであることが明らかになった直後、それはドラゴンの体から産まれ出た。
赤い球を体内に宿した鳥が次々とドラゴンの体から這い出てくる。
そして鳥達は一斉に羽を広げ、空に向かって羽ばたいた。
翼が大きい。ゆえに兵士達は鷲や鷹を連想した
その鷲と鷹の精霊たちが兵士達の真上を旋回し始めると、後方からルイスに向かって心の声が響いた。
(間も無く射程内!)
それは大型大砲の射手からの声であった。
その声に対し、ルイスは射手の方に振り返りながら叫んだ。
「合図は待たなくていい! 射程に入ると同時に撃て!」
その声からしばらくして、最初の轟音が響いた。
間も無く、次々と大型大砲が火を噴き始める。
敵の大砲からの反撃は無い。
敵の大砲は屋根上という高所に配置されているが、それでも大型大砲の射程の方が勝っているからだ。
だから全部隊は予定通りその場で一旦停止した。
放たれた砲弾が要塞と化した港町の防壁に大穴を開けていく。
一方的な射撃。
だが、敵がこのまま黙って撃たれ続けるはずは無かった。
そして、その反撃がどのような形で行われるのか、ルイスは予想がついていた。
だからルイスはその動きを敏感に感じ取り、即座に声を上げることが出来た。
「っ!! 来るぞ! 全部隊、対空戦用意!」
その声に、兵士達は一斉に空に向かって銃を構えた。
そして間も無く、それは空からやってきた。
数えきれない。間違い無く数百はいる。
あの「トビウオのようだ」と言われた小さなドラゴンの群れだ。
しかしその大きさはトビウオのそれにあらず。
大人の熊と同等。
小さなドラゴンの群れはその力強い体躯を見せつけるように揺らしながら、空から迫ってきた。
全員が固唾を飲みながら狙いを定める。
しばらくして、ある部隊の隊長が声を上げた。
「届くぞ! 撃ちまくれ!」
銃兵達が一斉に銃口から火を噴かせ、爆竹のような銃声に場が包まれる。
標的はどれも魔力が満ちて銀色に輝いている。感知能力者で無くとも狙いは定められた。
弾幕が小さなドラゴンの体に穴を空けていく。
羽に、首に、胸に、尾びれに。次々と着弾。
だが落ちない。
当然であった。
これは肉で出来た生き物では無い。生き物の形をした魂の集合体だ。
ゆえに小さな穴はすぐに修復される。
そのことに気づいたある兵士が声を上げた。
「小さな穴をあちこちに空けても意味が無い! 攻撃は一点に集中させろ!」
その言葉を、隊長が具体的な指示に変えた。
「胴体のど真ん中を狙え!」
直後にそれは実行された。
銃兵達の銃口が同時に、一斉に火を噴く。
放たれた銃弾は吸い込まれるように怪物の胸部の一点に収束し、そこに大穴を空けた。
再生力を超える損傷。
飛行力を失い、落下を始める。
「やった!」
「落ちていくぞ!」
思わず歓喜の声を上げる兵士達。
だが、その声は、
「「「うわあああっ!」」」
直後に響いた悲鳴によって塗りつぶされた。
同時に、光魔法特有の炸裂音が兵士達の耳を打つ。
見ると、怪物が落ちたところにいた兵士達は派手に吹き飛び、倒れていた。
怪物の体内に蓄えられていた光の魔力が炸裂したのだ。
熊と同じ大きさの巨大な光弾が落ちてきたのに等しい。
だからある隊長は直後に声を上げた。
「こいつは魔力を抱えた爆弾だ! 落下地点を予測して避けろ!」
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