Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
286 / 545
第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか

第十九話 黄金の林檎(19)

しおりを挟む

 隊長はそう言ったが、それは困難な注文であった。
 明らかに、小さなドラゴンは兵士に向かって追尾しながら落ちてきていた。

「う……うあああっ!」
「ぐあぁぁっ!」
「俺のほうに?! 誰か、ぎゃあぁ!」

 そこら中で炸裂音と悲鳴が響き渡る。
 その数と頻度は徐々に増していた。
 なぜなら、上空で人ならざるもの同士の戦いが繰り広げられ始めたからだ。
 鷲と鷹の精霊が次々と突撃。腹に抱えた赤い卵を爆発させていた。
 投擲された「てつはう」の炸裂音もその爆発の中に混じる。
 さらにサイラス達が作ったドラゴン達も首を伸ばし、上に向かってブレスを噴き出していた。
 その口から吐き出されているのは攻撃的な虫の群れ。
 小さなドラゴンに群がり、その身をかじる。
 群がられた怪物はまさしく虫食いのように穴だらけになり、次々と墜落していった。
 十体のドラゴンが首を振り乱し、噴水のようなブレスで敵をなぎ払う。
 空が薄赤く見えるほどの爆発の連鎖の中、ドラゴンのブレスが縦横無尽に走る。
 そこにさらに、新たな砲撃の音が加わった。
 大型大砲のものでは無い。それは、

「命中! 次弾装填します!」

 通常大砲のぶどう弾による対空砲撃であった。
 次々と放たれる大粒の散弾が怪物を撃ち砕いていく。
 凄まじい対空攻撃の嵐。
 であったが、敵の数は多く、この嵐をくぐり抜ける怪物達がいた。

「突破された!」
「こっちに来るぞ!」

 十数体の怪物がある大型大砲に迫る。
 これに対し、ぶどう弾と護衛の銃兵達が迎え撃ったが、全てを撃ち落とすことは出来なかった。
 最後の迎撃を突破した五体が、大型大砲に向かって急降下の体当たりをぶちかます。

「っ!!」

 凄まじい閃光と炸裂音に大型大砲が包まれ、砲手の視界が白に染まる。
 間も無く視界が回復。
 どうなった? そんな思いと共に目を見開く。
 そしてそれを見た砲手は声を上げた。

「くそ、やられた! 五号機、砲身に亀裂! 攻撃不能!」

 その声が合図になったかのように、戦況は変化した。

「左右から大きく回り込んで来るぞ!」

 最前線から声が上がる。
 見ると、正面から飛んできていた怪物達は二手にわかれ、対空射撃の範囲内に入らないように迂回し始めていた。
 即座にルイスが声を上げる。

「陣形を変更! 右と左の両翼は方向転換しつつ、大砲の盾になれる位置に移動しろ!」

 その声に、左右の六頭のドラゴンと部隊が動き始める。
 直後に状況はさらに変化した。

「敵が街から出てきたぞ!」
「正面から突っ込んできます!」

 その構成は、大盾持ちと銃を持った狂人達、そして五体のドラゴンであった。
 前列に配置されているフレディはその突撃部隊の規模を見て察した。長年の戦いの経験で予想できた。
 だからフレディは後ろに振り返りながら声を上げた。

「接近戦になるぞ! やれるな? ナンティ!」

 その声に、ナンティは力強い頷きと心の声を返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

処理中です...