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第三章 荒れる聖域。しかしその聖なるは誰がためのものか
第十九話 黄金の林檎(33)
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残骸が仕掛けた保険は丁寧かつ巧妙であったが、翌日にはバレてしまった。
その事はすぐに大神官に報告された。
「中身が空の種が混じっていた、か。ふむ……これは明らかな裏切り行為だな」
大神官はそう前置きした後、報告してきた者に尋ねた。
「どれくらいの量だ? 事を始めるのに支障が出るほどか?」
これに報告者は首を振って『機械的に』答えた。
「いえ、指示通りに余裕をもって集めさせていたので、計画に遅れが生じるほどではありません」
これに、大神官が「そうか」と相槌を打つと、報告者は再び口を開いた。
「既に魂を集めさせていた者を尋問するために兵を送っております」
その言葉に対し、大神官は口を開いた。
「……犯人の目星はついている。そちらを増員してくれ」
大神官はそう言った後、その目星について言葉を続けた。
「空の種を大量に作るなどという、細かい仕事が出来る機能を持った収集者はあの神の残骸だけだ。そいつを探せ。おそらくもう逃げ出しているはずだ」
その言葉に、報告者は「わかりました。ただちに」と返事を返したあと、大神官の前から去っていった。
大神官はその背を見送ることもせず、別の可能性についても思考を巡らせていた。
(協力者がいる可能性もあるな……再検査を実施した上で、警備の数を増やしておくか)
そして大神官はさらに疑わしきものについて思考を巡らせようとした。
が、それはすぐにやめた。
なぜなら、
(これ以上考えてもきりが無いな。どいつもこいつも疑わしい)
大神官はこの世に生を受けてからこれまで、騙したり騙されたりを繰り返していた。そればかりであった。
ゆえに、大神官にとって信頼という言葉は他者を騙すための道具でしか無かった。
その証拠に、大神官の直属の部下は自意識を持たないものばかりだ。
あらかじめ決められた機械的な応答しかできない。感情を持たず、大神官の指示には絶対だ。
裏切られるのがいやだからそうしているのだ。だから自我を持たせない。
そういう意味でも残骸は特別な存在であった。
神らしさを持たせるためにやむを得なかったとはいえ、さっさと自我を潰しておかなかったのはミスだったと思うようになっていた。
「……っ」
だから大神官はイラついていた。
自分のミスであることがわかっていたゆえになおさらであった。
大神官の心の中では、黒い油のようなものが煮えたぎっていた。
しかしその油は今回の事だけのものでは無かった。
それはこれまでの全てのイヤな経験が積もったものであった。
だから大神官は全てを憎んでいた。
自分が置かれた境遇と、それをなんとかできない己の弱さを憎んでいた。
ゆえに大神官は誰よりも欲していた。
もうすぐそれが手に入る。それだけが大神官を落ち着かせる唯一のものであった。
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