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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
エピローグ(3)
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(……)
ナイアラはルイスとナチャのはるか後方から二人の会話を盗み聞きしていた。
二人になにかしようと考えているわけでは無い。
たまたま目指す方向が同じだったから、理由はそれだけだった。
そして盗み聞きは素晴らしいヒマ潰しになっていた。
それはナイアラの顔に薄い笑みが浮かぶほどであった。
(かつて神を滅ぼした男が、こんどは神を生む旅に出る、か。笑えるな)
人間の守り神が増えればナイアラのような存在は色々やりにくくなるはずなのだが、それでもナイアラは笑っていた。
いまの自分には関係無い。ナイアラはそう思っていた。
これからはやり方を変えるのだから。人間達の戦力がどれだけ増えようともう関係無い。
ゆえに、
(好きなだけ神を増やすといい……陰から応援してやろう)
ナイアラは本心から笑っていた。
◆◆◆
ルイスと同じ方向に足を向けていたのは他にもいた。
その者はルイスとナチャの気配に気づき、足を止めて待っていた。
先に声をかけたのはルイスのほうであった。
「やあキーラ、奇遇だな。旅立つ前に挨拶しようとしたんだが、私よりも先に出発していたようだな」
キーラは一人では無かった。一人だけ兵士がついていた。
それはかつて魔王軍に在籍していたキーラの私兵のようであった。
まだ全滅していなかったことにも、そしてまだキーラに信頼を寄せてついてきていることにも驚いたが、そのことに関して話題を振るつもりはルイスには無かった。
そしてキーラはルイスの言葉に対して頷きを返し、口を開いた。
「そういうことになるわね。そして進む方向も同じ。なら、途中まで一緒に行きましょう」
そう言ってキーラはルイスと肩を並べて歩き出した。
その並んだ方に向かってルイスは尋ねた。
「キーラはどこに向かってるんだ? アテはあるのか?」
キーラは首を振りながら答えた。
「何も考えて無いわ。誰も私のことを知らない遠い場所を目指してる、たったそれだけよ」
それは、魔王という存在の居場所が無くなったことに対してのキーラが出した答えだった。
その思いに対してルイスは深く言及しようとは思わなかった。
それよりもこれからだ。そう思ったゆえにルイスは口を開いた。
「そうか。なら同じだな。私にもアテは無い。行けるところまで旅をしてみるつもりだ」
口には出さずとも、大事なのはこれからだという気持ちはキーラの心に響いていた。
だからキーラは尋ねた。
「行けるところまで、か。いいわねそれ。落ち着ける場所が見つかるまではご一緒させていただいても?」
断る理由は無かった。
「もちろんかまわないさ。お前のように強い同行者がついてくれるのであれば心強い。願ったり叶ったりだ」
こうしてルイスとキーラの奇妙な旅が始まることになった。
その旅路がこの物語で語られることは無い。
だが、二人の旅路の結果は遠い未来のどこかで明らかになる。それは間違い無いことであった。
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