Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四話 父を倒した者達(1)

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   ◆◆◆

  父を倒した者達

   ◆◆◆

 一週間後、サイラスに敗れたアラン達は最寄りの味方陣地へと逃げのびていた。その地はアラン達が初めての実戦を経験したかの地、レオン将軍が守る陣地であった。
 季節は秋になっており、レオン将軍が守る広大な平原は黄金色に染まっていた。
 レオン将軍の陣は以前よりも防備が強化されていた。陣は高い石垣で囲われており、門もより強固なものになっていた。この守りを突破するには攻城兵器を使うか、かなり強力な魔法使いの力に頼らなければ難しいであろう。

 陣に着いたアランとケビン達はレオン将軍の元を訪ねた。

「久しぶりだな、アラン殿」
「申し訳ありません、レオン将軍。またお世話になります」
「うむ。ケビン殿もゆっくりしていってくれ」
「かたじけない。ご迷惑をおかけする」

 アランは自身がここに来た経緯を説明した。

「敗戦は武人の常、気にすることはない。総大将が突出しなければ結果は違っていただろう。この件に関して貴殿が責任を感じる必要はない。」
「そう言っていただけると助かります」
「敵は次にこの地を狙ってくるだろう。その時が来るまで体を休めておいてくれ」

 この地に戦力が集まってきている。次の戦いは少し派手なものになるかもしれない。レオンはそう思ったが、これは口に出さず黙っていた。

   ◆◆◆

 数日後、サイラス達もまた、この広大な平原の地に足を踏み入れた。
 サイラスはこの平原を奪取できるかどうかがこの戦争の鍵を握っていると考えていた。

(この平原の奥にカルロの城が、そしてさらにその先に奴らの王が住む首都がある)

 サイラスは平原を遠く眺めながら、この戦いの先を思案していた。

(この平原は兵站の要所、ここを制圧すれば物資の流通と兵士の展開を抑えることができる)

 この平原を守るレオンの陣地、それは既に砦と言える様相である。こちらは攻城戦の構えで挑むべきだろう。

(敵の守りは堅い。こちらも相応の準備が必要になる)
「フレディ、この書簡を届けてくれ。すぐにだ」
「へい、ただちに」

 アラン達もこの地にいるはずだ。敵は拠点に篭って守りに徹している。先の戦いのような策は通じないだろう。やつらと正面からぶつかれる戦力が必要になる。

   ◆◆◆

 一ヶ月後、サイラス達のもとに要請した増援部隊が到着した。
 増援部隊を引き連れていたのは一組の男女。
 女の名はカミラ。端整な顔立ちをしているが、顔にある酷い火傷のあとが痛々しかった。
 もう一人はダグラスといい、甲冑に身を包んだ大男であった。

「サイラス将軍、おひさしぶりです」

 カミラはサイラスに対し丁寧に頭を下げた後、顔を隠すために仮面をつけた。



「……」
 対照的に、ダグラスのほうは何も言わず立ったままだった。



 この二人は姉弟であり、共に高い魔力を有する精鋭魔道士であった。

「我等の元に馳せ参じてくれたこと、心から感謝する。貴殿らが共に戦ってくれるなら心強い」

 口ではそう言っていたが、サイラスの心中は穏やかではなかった。

(よりによって送られてきた増援がこいつらだと? 無能な上層部どもめ……。書簡にはアンナが炎魔法の使い手であると、はっきり書いておいたというのに。この二人ではアンナと相性が悪い)

 送られてきた精鋭魔道士のことをサイラスはよく知っていた。なぜなら彼らはサイラスと共にカルロと戦った者達だからだ。
 カルロを襲撃する作戦を提案したのはサイラスである。サイラスはその作戦に参加した精鋭魔道士達の能力を正確に把握していた。
 我が軍の人材に余裕があまり無いことは理解している。戦闘が激化している中、この者達が送られてきただけでもありがたいと思うべきだ。頭ではそう思っていたのだが、サイラスは苛立ちを隠せなかった。

   ◆◆◆

 今はこれ以上の増援は期待できないと判断したサイラスは、皆を集めて作戦会議を行った。

「敵は堅牢な陣に篭っている。よってこちらは攻城戦の構えでのぞむ。投石器と破城槌で門を破壊し、内部に侵入して火を放つのが狙いだ」

 サイラスの説明に皆は黙って頷き、続きを促した。

「敵はこちらの攻城兵器の破壊を狙ってくるだろう。特にレオン率いる騎馬隊と、アンナという魔法使いに注意しろ」
「そのアンナというのは何者なのですか?」
「カルロの娘で強力な炎魔法の使い手だ。兄のアランと共に参戦している。二人の人相書きはあとで回しておく。各自よく覚えておいてくれ」

 カルロの娘という部分に反応したのか、場に不穏なざわめきが起こった。しかしサイラスはこれを諌めもせずそのまま説明を続けた。

「敵の騎馬隊はその機動力を活かして、こちらの守りが手薄なところを狙ってくるだろう。これに対し、こちらは攻城兵器を囲むようにして防御の陣形を敷き、敵の攻撃に対しては守りに徹する」
「それではこちらはいつ攻撃に転じるのですか?」
「まずはアンナの撃破を狙う。これにはカミラとダグラスであたってもらう」
「……」

 カミラとダグラスは何も言わなかったが、炎魔法の使い手との戦いは苦手であり、不利であることを察していた。
 それはサイラスも承知しており、一つの手を考えていた。

「アンナと戦うときは兄であるアランを利用しろ」
「それはどういうことですか?」
「二人は兄妹だ。だがアランの魔法力は弱い。アランを狙えばアンナが前に出てくるはずだ。アランを上手く盾にして戦え」

 サイラスのその言葉に対してカミラは黙って頷いた。

「アンナを撃破できたら城門に突撃を仕掛ける。皆のものよろしく頼むぞ」

 以上で会議は終わり、皆席を立った。

 サイラスはひとつ黙っていたことがある。ディーノのことだ。
 ディーノも決して無視できない相手だ。しかし我が軍にはもう有効な駒が無い。
 サイラスは自身でディーノの相手をしようと考えていた。

「……」

 厳しい戦いになるであろう。サイラスは覚悟を決めていた。

 普通に考えればこの戦力で正面から攻城戦を挑むのは愚手である。さらなる増援を待ち、周辺を包囲制圧して兵糧攻めにするのが常道である。しかしサイラスは焦っていた。
 サイラスを焦らせていたのはカルロの存在であった。カルロが戦線に復帰すれば戦況は一気に苦しくなる。それまでにこの平原を制圧できるかが重要であった。
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