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稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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Ep.1 調査隊の船から回収した記録(16)

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「いやあぁっ!」

 なすすべもなく押し倒される通信士。
 馬乗りになり、通信士を押さえ込む生存者。
 そして生存者は通信士に中を見せ付けるかのように、大きく口を開いた。
 見ると、中にそれはいた。
 蛇のような頭部が、暗い空洞の中で眼を光らせていた。
 それが何をしようとしているのか。部隊を襲った惨劇をずっとカメラで見ていた通信士にはそれが予想出来た。
 ゆえに、直後に牙を向けて口から伸びてきたその頭部を、通信士は掴んで止めることが出来た。
 そしてこの後どうすればいいのか、それも思いついていたゆえに、通信士は即座にそれを実行した。
 握りつぶすように指をそのぬめる胴体に食い込ませながら、ねじ切るように捻る。
 その直後、思ったとおりのことが起きた。
 生存者の体が突如痙攣(けいれん)を始めたのだ。
 そして生存者はそのまま力を失い、仰向けに倒れた。
 だが、それでも通信士はまだ安心できなかった。
 立ち上がりながら、掴んだままのそれを力任せに引っ張る。
 すると、「ブチブチ」というたくさんの細い糸が切れたかのような感覚と共に、それは生存者の口から引き抜かれた。
 見ると、胴体から下の触手は血まみれであり、ちぎれていた。
 先ほど手に伝わってきた感覚はこれによるものだろう。
 そして通信士はふと思った。
 まるでこの触手は根のようだと。
 もしかしたら本当にそうなのかもしれないと。
 まるで冬虫夏草。
 それは蛾に寄生する生物。蛾の体に根を張って、養分を吸い取る寄生体。
 それに似ている。
 だが、こいつには決定的な違いがある。
 こいつの根は恐らく脳にまで張り巡らされていた。だからこいつは――
 通信士の憶測がそんな結論に達しようとした瞬間、

「!」

 再びのドアが開いた音に、通信士はまたしても体を震わせた。
 振り返ると、そこには探していた隊長がいた。

「隊長?」

 思わず尋ねる。

「隊長、ですよね?」

 確認するために重ねて尋ねる。
 だが、それは答えない。
 代わりにそれは銃を通信士に向かって突きつけた。

「隊長?!」

 直後、パン、という銃声と共に、通信士の意識は消えた。

 こうして一つの地獄が終わった。
 だが、それは新たな船を得た。
 きっと、それは船を使って新たな地獄を生み出すのだろう。

 しかしブリッジでの地獄の中で、あの最期の時間の中で、レイモンドは何に似ていると思ったのか。
 それはアリ。
 アリは捕まえた獲物をすぐには殺さず、マヒさせて保管しておく習性がある。
 そうすると腐りにくいからだ。生きたまま捕まえられた獲物は保存食として利用されるのだ。
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