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36 嗜虐心の塊を

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「あ、あの。………第2王子殿下はどうしてこうも第1王子殿下に意地悪ばかりをなさるのですか?
 わたくし、いつも我慢できないくらいにとても胸が痛うございますの。
 だって、あれは本来第2王子殿下のお仕事。第1王子殿下に丸投げなさるなど、言語道断ですわ!!
 それなのに………!わたくしはお止めすることができず………、」

 およよっと泣き出さんばかりに顔を両手で隠したアザリアの背中を、王妃が優しく撫でる。
 その手つきに、触れる手に、ぞぞぞっという悪寒が走るが、アザリアはそれを感じさせぬような淡く儚い歪な笑みを浮かべ、王妃が自らの頬に添えてきた手に頬を擦り寄せる。


「王妃さま………、」


 寛大な表情で優しく見守る王妃の瞳には、まだ嗜虐心のようなものが残っている。


「あぁ。可哀想に………、」

(………全くもって可哀想って思っている人の表情じゃないわ)


 それどころか楽しんでいるような表情にしか見えない王妃を、アザリアは脳内で既に数回毒針で刺し殺しているが、このままこのジョークのようなやりとりが続くのであれば、現実で起こしてしまうかもしれない。

 指の骨がぴきっぴきっと可愛い音を鳴らすが、それはアザリアの準備運動だ。


「うふふっ、妾の手で、あなたを立派な淑女にして差し上げましょう。第2王子をも手玉に取れるような、そんな淑女に」


 にいっと意地悪く歪んだ口元を扇子で隠す王妃に、アザリアは感動したかのような表情で両手を組む。


「あぁ………!なんとお礼を言えばいいのかっ。
 王妃さま、わたくしの道標、わたくしの目指すべき至高のお方。
 あなたのためらば、例え火の中、水の中、どこへでも行ける気が致しますわ!!」


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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