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47 教えてください

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 アザリアは知っている。
 この世のものは自分の思い通りに動いてくれないことを。


 アザリアは知っている。
 生半可な努力は努力といえないことを。


 アザリアは知っている。
 努力してなおこの世界には手に入らないものがあることを。


 アザリアは知っている。
 この王子が今までに挫折を味わっていないことを。


 くちびるが自然と弧を描き、自らの行く末を頭の中が思い描く。
 自分が想像したような筋書きで全ての物事が進むだなんて傲慢なことは思っていないし、人並外れた能力を持ち、努力を怠らない第2王子ならばともかく、凡人に毛が生え、努力で全てを補っているアザリアでは、自らの筋書き通り物事が進むなんて的外れな思い込みはしていない。


「あの、アルフォード殿下からは1時間しかお時間をもらえなくて………、本当に申し訳ないのですが、早速ご相談に乗っていただけませんか?」

「構わん!!」


(………ちょろい………………、)


 あまりのちょろさにほっぺたが一瞬引き攣った。

「わたくし、アルフォードのお側にいながら、アルフォード殿下のことを知らず、そして王家のことを知らない為に、たくさんの虐めを受けているのです………。
 ドレスを汚されたり、ご飯は出てこなかったり………、お風呂がお水だったこともありますわ。
 だから、僭越ながら、セオドール殿下に教えていただきたいのです。王宮のお作法というものを………!!」


 目に涙を溜めて両手を組んで上目遣い。


(あぁ、なんて大女優………!!)


 アザリアは流石にこんな演技では落ちてくれないかなと思いながら、ただただ王子の返事を待った。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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