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04 再び遭遇
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煙が見えた場所は近くに感じたのに、いざ歩いてみると結構距離があるように感じた。
やっとたどり着いた煙の上がっている場所は、やはり人が住んでいるようだった。
少し距離をおいて様子をうかがうと、街というよりは村と言ったほうがしっくりくるほど、ひっそりとしていた。
村のすぐ裏のあたりから、また森が広がっているから、その暗さも村が静かに感じる要因なのかもしれない。
「私が行って話を聞いてくる」
「一人じゃ危ないだろ」
「大丈夫。お兄ちゃんや奏音が行くよりも、私が行った方が良いの」
「……なにか、母さんの声が聞こえたのか?」
「言葉じゃないけど、大丈夫って伝わってくるの」
俺が横を見ると、奏音は黙ってうなずいた。奏音もなにか感じているのだろう。それなら任せるしかないか。
「わかった。でも無理はするなよ」
「オッケー、大丈夫。私に任せなさいって」
初音は軽くウインクすると、村に向かって歩いていった。
「大丈夫なのかな……」
「初音は大丈夫。兄さんは、森の方を警戒してて」
「え? なんで……」
「また昨日みたく、クマが現れるかもしれないから」
たしかにそうだ。実際昨日は、クマに襲われそうになっているうさぎに遭遇した。対象が俺たちになってもおかしくないんだ。
俺は森の方を、奏音は村の方を中心に警戒を強めた。
初音が村に行ってから、それなりに時間が過ぎたけど、初音からの連絡はまだない。
とは言っても、この世界にスマホのような通信機器があるのかも知らないし、他の連絡手段があるわけではない。
「連絡、ないな。なぁ、俺たちも行ったほうが……」
俺がそう言いかけたところで、森の木々が静かにざわめき、木の根元の草花がかすかに揺れた。
異変を感じ取った俺は、小さく奏音の名を呼んだ。奏音もすぐ気づき、村の方を警戒しつつも森へ意識を向けた。
その直後、木々のざわめきの音に混ざり、低く唸る声が聞こえてきた。
まずい、この声は……。
戦うすべを持たない俺たちが、襲われたらひとたまりもない。
昨日はたまたま撃退できただけかもしれないし、しかも今は初音がいない。おそらくあの抑止力は、二人が揃わないと駄目なんだ。
「奏音。村に向かって走るぞ。助けを求めよう」
「兄さん、俺が抑える。その間に村に行って初音に伝えて」
「なっ、馬鹿なことを言うな。怪我だけじゃ済まないぞ!」
「大丈夫。はっきり聞こえなかった声が、少しわかるようになってきてるんだ」
そんな、実態のない感覚だけに頼っても良いものなのか。昨日のはたまたまかもしれないのに。
俺は奏音を信じたい気持ちと、最悪の事態を想定して連れて逃げたい気持ちに板挟みにされてしまう。
「俺たちの頭の中に聞こえてくる声は、たしかに母さんだよ。だから大丈夫。母さんが守ってくれる」
そうか……奏音は確信してるんだ、導く声が自分たちの母親のものだと。
「……わかった。初音を連れて、すぐ戻ってくる」
俺は初音を連れてくることを決意すると、くるりと向きを変えて村の方に全力で走り出した。
一秒でも早く、初音のもとへ行き、奏音のところまで連れて行くんだ。
あと少しで村の入口に届くというところで、村から初音がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
その後ろには、思い思いの武器や杖を持った人々が続いた。
「お兄ちゃん!」
「初音! 奏音が!」
「わかってる! お兄ちゃんも来て!」
「わかった!」
奏音同様、初音も母さんの言葉が聞こえたのだろう。二人のことを信じるしかない。
俺は初音と合流すると、向きを変え再び森に向かって走り出した。その直後、森の方から大きな体のクマが飛び出し、更に唸り声を大きくした。
「奏音!」
昨日と同じように、奏音はクマの前方に立ちふさがると、両手をかざした。
すぐ追いついた初音も横に並び、両手をかざす。俺もその隣に並び、同じように手をかざした。
「お願い、私の話を聞いて!」
「落ち着け、大丈夫だ!」
奏音も初音も、クマに話しかけるように叫びながら、さらに手を高く掲げた。その手から眩い光がクマに向かって放たれた。
奏音の手から放たれた青い光は、クマの動きを止めているように見えた。
初音の手から放たれた桃色の光は、まるでクマに優しく話しかけているようだった。
気づくと、俺の手からもオレンジ色に輝く光が放たれていた。クマを優しく温かな光で包みこんだ。
唸り声を上げすべてを破壊しそうな勢いだったクマが、嘘のように大人しくなりその場にぺたりと座り込んだ。
「落ち着いた……?」
「うん、もう大丈夫」
クマが大人しくなったのを確認すると、俺たちから放たれていた光は、役目を終えたかのように静かに消え去った。
そのタイミングでクマは立ち上がると、くるりと向きを変え静かに森の中へと戻っていった。
「一件落着、かな。一体何がどうなったのかさっぱりわからないけど」
俺は、自分の両手をじっと眺めた。さっきのオレンジ色の光は何だったんだろう。
「いやぁ、驚きました。村を守ってくれてありがとうございます。ささ、少し村で休んでいってください。お礼もしたいですし」
俺が呆けて手を見つめたままでいたら、初音と一緒に村から来たうちの一人が、声をかけてきた。
「お兄ちゃん、お言葉に甘えようよ」
「あ、ああ、そうだな。休むところもないし、少しお邪魔しようか」
「やったー! 村長さん、よろしくお願いします」
「え? 村長さん?」
「ご挨拶が遅れました。エルディア村の村長のエルダです。村を守ってくれてありがとうございます。詳しい話は村の方でいたしますので、とにかく行きましょうか」
「よ、よろしくお願いします」
さっきの光のことも何もわからないけど、この世界のことを聞ける人に出会えたのは、良かったのかもしれない。
俺たちは、村長さんに続いて、村に向かうことにした。
やっとたどり着いた煙の上がっている場所は、やはり人が住んでいるようだった。
少し距離をおいて様子をうかがうと、街というよりは村と言ったほうがしっくりくるほど、ひっそりとしていた。
村のすぐ裏のあたりから、また森が広がっているから、その暗さも村が静かに感じる要因なのかもしれない。
「私が行って話を聞いてくる」
「一人じゃ危ないだろ」
「大丈夫。お兄ちゃんや奏音が行くよりも、私が行った方が良いの」
「……なにか、母さんの声が聞こえたのか?」
「言葉じゃないけど、大丈夫って伝わってくるの」
俺が横を見ると、奏音は黙ってうなずいた。奏音もなにか感じているのだろう。それなら任せるしかないか。
「わかった。でも無理はするなよ」
「オッケー、大丈夫。私に任せなさいって」
初音は軽くウインクすると、村に向かって歩いていった。
「大丈夫なのかな……」
「初音は大丈夫。兄さんは、森の方を警戒してて」
「え? なんで……」
「また昨日みたく、クマが現れるかもしれないから」
たしかにそうだ。実際昨日は、クマに襲われそうになっているうさぎに遭遇した。対象が俺たちになってもおかしくないんだ。
俺は森の方を、奏音は村の方を中心に警戒を強めた。
初音が村に行ってから、それなりに時間が過ぎたけど、初音からの連絡はまだない。
とは言っても、この世界にスマホのような通信機器があるのかも知らないし、他の連絡手段があるわけではない。
「連絡、ないな。なぁ、俺たちも行ったほうが……」
俺がそう言いかけたところで、森の木々が静かにざわめき、木の根元の草花がかすかに揺れた。
異変を感じ取った俺は、小さく奏音の名を呼んだ。奏音もすぐ気づき、村の方を警戒しつつも森へ意識を向けた。
その直後、木々のざわめきの音に混ざり、低く唸る声が聞こえてきた。
まずい、この声は……。
戦うすべを持たない俺たちが、襲われたらひとたまりもない。
昨日はたまたま撃退できただけかもしれないし、しかも今は初音がいない。おそらくあの抑止力は、二人が揃わないと駄目なんだ。
「奏音。村に向かって走るぞ。助けを求めよう」
「兄さん、俺が抑える。その間に村に行って初音に伝えて」
「なっ、馬鹿なことを言うな。怪我だけじゃ済まないぞ!」
「大丈夫。はっきり聞こえなかった声が、少しわかるようになってきてるんだ」
そんな、実態のない感覚だけに頼っても良いものなのか。昨日のはたまたまかもしれないのに。
俺は奏音を信じたい気持ちと、最悪の事態を想定して連れて逃げたい気持ちに板挟みにされてしまう。
「俺たちの頭の中に聞こえてくる声は、たしかに母さんだよ。だから大丈夫。母さんが守ってくれる」
そうか……奏音は確信してるんだ、導く声が自分たちの母親のものだと。
「……わかった。初音を連れて、すぐ戻ってくる」
俺は初音を連れてくることを決意すると、くるりと向きを変えて村の方に全力で走り出した。
一秒でも早く、初音のもとへ行き、奏音のところまで連れて行くんだ。
あと少しで村の入口に届くというところで、村から初音がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
その後ろには、思い思いの武器や杖を持った人々が続いた。
「お兄ちゃん!」
「初音! 奏音が!」
「わかってる! お兄ちゃんも来て!」
「わかった!」
奏音同様、初音も母さんの言葉が聞こえたのだろう。二人のことを信じるしかない。
俺は初音と合流すると、向きを変え再び森に向かって走り出した。その直後、森の方から大きな体のクマが飛び出し、更に唸り声を大きくした。
「奏音!」
昨日と同じように、奏音はクマの前方に立ちふさがると、両手をかざした。
すぐ追いついた初音も横に並び、両手をかざす。俺もその隣に並び、同じように手をかざした。
「お願い、私の話を聞いて!」
「落ち着け、大丈夫だ!」
奏音も初音も、クマに話しかけるように叫びながら、さらに手を高く掲げた。その手から眩い光がクマに向かって放たれた。
奏音の手から放たれた青い光は、クマの動きを止めているように見えた。
初音の手から放たれた桃色の光は、まるでクマに優しく話しかけているようだった。
気づくと、俺の手からもオレンジ色に輝く光が放たれていた。クマを優しく温かな光で包みこんだ。
唸り声を上げすべてを破壊しそうな勢いだったクマが、嘘のように大人しくなりその場にぺたりと座り込んだ。
「落ち着いた……?」
「うん、もう大丈夫」
クマが大人しくなったのを確認すると、俺たちから放たれていた光は、役目を終えたかのように静かに消え去った。
そのタイミングでクマは立ち上がると、くるりと向きを変え静かに森の中へと戻っていった。
「一件落着、かな。一体何がどうなったのかさっぱりわからないけど」
俺は、自分の両手をじっと眺めた。さっきのオレンジ色の光は何だったんだろう。
「いやぁ、驚きました。村を守ってくれてありがとうございます。ささ、少し村で休んでいってください。お礼もしたいですし」
俺が呆けて手を見つめたままでいたら、初音と一緒に村から来たうちの一人が、声をかけてきた。
「お兄ちゃん、お言葉に甘えようよ」
「あ、ああ、そうだな。休むところもないし、少しお邪魔しようか」
「やったー! 村長さん、よろしくお願いします」
「え? 村長さん?」
「ご挨拶が遅れました。エルディア村の村長のエルダです。村を守ってくれてありがとうございます。詳しい話は村の方でいたしますので、とにかく行きましょうか」
「よ、よろしくお願いします」
さっきの光のことも何もわからないけど、この世界のことを聞ける人に出会えたのは、良かったのかもしれない。
俺たちは、村長さんに続いて、村に向かうことにした。
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