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05 協力を申し出る
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「……というわけなの」
エルディア村に到着し、出された温かいハーブティーを口に含みながら、一人で村に様子を見に行っていた初音の話を聞いていた。
村に入ってすぐのところにいた人に話しかけたけど、いきなり現れた『よそ者』を警戒しないはずはないだろう。はじめは話を聞こうとしなかった村人だけど、森で見かけたクマとうさぎの話をすると、村長さんのところへ案内されたそうだ。
そこで改めて昨日の話をしたところ、最近村の近くにもクマが現れるようになったから、追い払うのを手伝ってくれたらちゃんと話を聞こうと言われたそうだ。
「だから、森へ偵察に行きがてら、お兄ちゃんたちのところに戻ろうと思っていたの。そしたら頭の中にまたあの声が響いて、森の方からお兄ちゃんが走ってくるのが見えたんだ」
「また母さんの声が……やっぱり守ってくれてるんだな」
「実際あなた達の力を目の当たりにし、この辺り一帯で起きている異変の解決の糸口になるのではないかと思ったのです」
「異変?」
初音が説明をし終わった頃、今度は村長さんが説明を始めた。
「はい。……この村の者は、太古の昔から森に住む動物たちと共存してきました。私の知る限り、動物たちはいつも穏やかで、平和に暮らしていました。なのに最近は、大型動物を中心に凶暴化するものが現れたのです」
「凶暴化……それが、俺たちが遭遇したクマというわけですね」
「クマだけではなく、他の大型動物の凶暴化も、森の中で確認されています。襲われたことはないのですが、時間の問題かと……」
村長さんはそう言うと、大きなため息をついた。
「心当たりはあるんですか?」
俺の問いかけに、村長さんは大きく首を横に振った。
「先程のあなた達を見ていると、なにか不思議な能力をお持ちだとわかりました。その力を使って、真相の解明と動物たちの救済をしていただけませんか?」
「ちょ、ちょっと待ってください。たしかに俺たちは何かしらの力を持っている可能性があるのですが、自分たちではどうにもできないんです」
「どういうことでしょうか?」
「俺たちもまだよく分かっていないんです。何かあったときに、強く祈ると発現するようなのですが、例えば魔法のように意識して操るとかそういうんじゃないんです」
「そうなんですか……」
慌てて否定するような言葉を伝えてしまった俺の前で、村長さんはわかりやすく落胆したように視線を落とした。
申し訳ないとは思うけど、これが事実だから仕方がない。こんな不思議な体験は昨日が初めてだったし、俺たち自身何がなんだかまだよくわかっていないんだ。
「でも、俺たちがこの村に来たのもなにかの縁だと思っています。どこまでできるかわかりませんが、協力させていただけませんか?」
「いいんですか?」
「もちろんです」
村長さんは、俺の手をガシッと掴むと、「ありがとうございます」と何度もお礼を言った。
まずは、この村の歴史など聞かせてもらおうかなと、口を開きかけたところに、突然バタンと大きな音を立てて部屋の扉が開いた。
そして若者が飛び込んで来たと思ったら、ズカズカとこちらにやってきて、俺たちを思い切り指さして大声で怒鳴った。
「こんなよそ者に任せるなんて、絶対反対だ! 村に危険が及ぶ前に、凶暴化した動物を駆除すべきじゃないのか!?」
鼻息荒くわめき散らす若者を、村長さんは「まぁまぁ」となだめるように言うと、「お前もここに座りなさい」と、自分の隣の椅子を引いた。
「父さん! 俺は反対だからな! この村の問題は俺がなんとかする!」
村長さんに椅子へ座るように促された青年は、捨て台詞のように息巻いて、そのままの勢いで外へ出ていってしまった。
「すみませんねぇ、少し威勢の良い息子でして……」
「息子さん、でしたか。……いいんですか?」
「大丈夫ですよ。あいつなりに、この村のことを考えているんです。ちょっと考え方が過激なところもあるので、注意はしているのですがね」
そう言いながら村長さんは、息子さんが出ていった扉の方を見て「仕方がない子だ……」とでも言いたげに、息を吐いた。
「うーん、息子さんの気持ちもわかるかな。原因がわからなくて共存のバランスが崩れているなら、まっさきに村を守ろうって考えるのが普通だもん」
今まで隣で黙って聞いていた初音が、我慢しきれないように口を開いた。
その言葉を聞いた奏音は、たしなめるように、「初音」と小さく名前を呼んで肘で小突いたけど、「奏音もそう思わない?」と言われたら、少し考えてコクンとうなずいた。
「ああ、すみません。妹が口を挟んでしまって」
初音の発言に、俺は慌てて村長さんに謝罪の言葉を伝えた。まだ12歳で人生経験が浅いけど、優しい初音らしい言葉だなと思った。
「構いませんよ。息子だけではなく、村の中にはそう考える者も少なくないんです。どうしてこの村と森の動物達が共存してこれたのか、知らない者が増えて来てしまったからでしょう」
「凶暴化の原因もわかるかもしれませんし、村と森の動物達の歴史を教えていただけませんか?」
「そうですね。では少しお話させていただきましょう」
村長さんはそう言うと、この村の歴史について話し始めた。
「この村は太古の昔から、森の動物たちと共存してきました。私の一族は代々、動物たちの気持ちを感じ取る力を受け継ぎ、村長を務めてきたのです」
村長さんは少し寂しそうに続けた。
「かつては人も動物も、言葉を交わすことができたと聞いています。しかし時が経ち、その力は徐々に失われていきました。今では私のように、わずかに気持ちを感じ取れる程度です。……それでも、互いを尊重し、領域を守りながら共存してきました。だからこそ、今回の異変が不可解なのです」
俺は初音の能力と同じだなと思いながら、村長さんの話を聞いていた。
エルディア村に到着し、出された温かいハーブティーを口に含みながら、一人で村に様子を見に行っていた初音の話を聞いていた。
村に入ってすぐのところにいた人に話しかけたけど、いきなり現れた『よそ者』を警戒しないはずはないだろう。はじめは話を聞こうとしなかった村人だけど、森で見かけたクマとうさぎの話をすると、村長さんのところへ案内されたそうだ。
そこで改めて昨日の話をしたところ、最近村の近くにもクマが現れるようになったから、追い払うのを手伝ってくれたらちゃんと話を聞こうと言われたそうだ。
「だから、森へ偵察に行きがてら、お兄ちゃんたちのところに戻ろうと思っていたの。そしたら頭の中にまたあの声が響いて、森の方からお兄ちゃんが走ってくるのが見えたんだ」
「また母さんの声が……やっぱり守ってくれてるんだな」
「実際あなた達の力を目の当たりにし、この辺り一帯で起きている異変の解決の糸口になるのではないかと思ったのです」
「異変?」
初音が説明をし終わった頃、今度は村長さんが説明を始めた。
「はい。……この村の者は、太古の昔から森に住む動物たちと共存してきました。私の知る限り、動物たちはいつも穏やかで、平和に暮らしていました。なのに最近は、大型動物を中心に凶暴化するものが現れたのです」
「凶暴化……それが、俺たちが遭遇したクマというわけですね」
「クマだけではなく、他の大型動物の凶暴化も、森の中で確認されています。襲われたことはないのですが、時間の問題かと……」
村長さんはそう言うと、大きなため息をついた。
「心当たりはあるんですか?」
俺の問いかけに、村長さんは大きく首を横に振った。
「先程のあなた達を見ていると、なにか不思議な能力をお持ちだとわかりました。その力を使って、真相の解明と動物たちの救済をしていただけませんか?」
「ちょ、ちょっと待ってください。たしかに俺たちは何かしらの力を持っている可能性があるのですが、自分たちではどうにもできないんです」
「どういうことでしょうか?」
「俺たちもまだよく分かっていないんです。何かあったときに、強く祈ると発現するようなのですが、例えば魔法のように意識して操るとかそういうんじゃないんです」
「そうなんですか……」
慌てて否定するような言葉を伝えてしまった俺の前で、村長さんはわかりやすく落胆したように視線を落とした。
申し訳ないとは思うけど、これが事実だから仕方がない。こんな不思議な体験は昨日が初めてだったし、俺たち自身何がなんだかまだよくわかっていないんだ。
「でも、俺たちがこの村に来たのもなにかの縁だと思っています。どこまでできるかわかりませんが、協力させていただけませんか?」
「いいんですか?」
「もちろんです」
村長さんは、俺の手をガシッと掴むと、「ありがとうございます」と何度もお礼を言った。
まずは、この村の歴史など聞かせてもらおうかなと、口を開きかけたところに、突然バタンと大きな音を立てて部屋の扉が開いた。
そして若者が飛び込んで来たと思ったら、ズカズカとこちらにやってきて、俺たちを思い切り指さして大声で怒鳴った。
「こんなよそ者に任せるなんて、絶対反対だ! 村に危険が及ぶ前に、凶暴化した動物を駆除すべきじゃないのか!?」
鼻息荒くわめき散らす若者を、村長さんは「まぁまぁ」となだめるように言うと、「お前もここに座りなさい」と、自分の隣の椅子を引いた。
「父さん! 俺は反対だからな! この村の問題は俺がなんとかする!」
村長さんに椅子へ座るように促された青年は、捨て台詞のように息巻いて、そのままの勢いで外へ出ていってしまった。
「すみませんねぇ、少し威勢の良い息子でして……」
「息子さん、でしたか。……いいんですか?」
「大丈夫ですよ。あいつなりに、この村のことを考えているんです。ちょっと考え方が過激なところもあるので、注意はしているのですがね」
そう言いながら村長さんは、息子さんが出ていった扉の方を見て「仕方がない子だ……」とでも言いたげに、息を吐いた。
「うーん、息子さんの気持ちもわかるかな。原因がわからなくて共存のバランスが崩れているなら、まっさきに村を守ろうって考えるのが普通だもん」
今まで隣で黙って聞いていた初音が、我慢しきれないように口を開いた。
その言葉を聞いた奏音は、たしなめるように、「初音」と小さく名前を呼んで肘で小突いたけど、「奏音もそう思わない?」と言われたら、少し考えてコクンとうなずいた。
「ああ、すみません。妹が口を挟んでしまって」
初音の発言に、俺は慌てて村長さんに謝罪の言葉を伝えた。まだ12歳で人生経験が浅いけど、優しい初音らしい言葉だなと思った。
「構いませんよ。息子だけではなく、村の中にはそう考える者も少なくないんです。どうしてこの村と森の動物達が共存してこれたのか、知らない者が増えて来てしまったからでしょう」
「凶暴化の原因もわかるかもしれませんし、村と森の動物達の歴史を教えていただけませんか?」
「そうですね。では少しお話させていただきましょう」
村長さんはそう言うと、この村の歴史について話し始めた。
「この村は太古の昔から、森の動物たちと共存してきました。私の一族は代々、動物たちの気持ちを感じ取る力を受け継ぎ、村長を務めてきたのです」
村長さんは少し寂しそうに続けた。
「かつては人も動物も、言葉を交わすことができたと聞いています。しかし時が経ち、その力は徐々に失われていきました。今では私のように、わずかに気持ちを感じ取れる程度です。……それでも、互いを尊重し、領域を守りながら共存してきました。だからこそ、今回の異変が不可解なのです」
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