間章 その閨の秘め事について

末野みのり

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本編間話

EX:第17話裏 引越騒動(シアロべ)

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「寮から出てってください」

 古馴染みの中堅騎士はとうとう耐えかねて、ロベルトに直訴した。部下から言われるにしては珍妙なその嘆願に、ロベルトは一つだけ思い当たりがあったのか、すぐに納得の表情になる。

「悪い、喘ぎ声でかいもんな、俺」
「分かってんなら、とっとと出てってくれません!?」
「はは、なんだよ。雑魚寝ん時、オナニー気付いてない振りした仲だろ」

  ヘラヘラと笑うロベルトに、中堅騎士は額に青筋を立てた。この人、ケツ掘られといて、その話と同列に置いてんのかい。

「独り身に酷とか思わないんすか!?」
「うるさくして悪いなとは思ってるけどな。泊まるアテあるだろ、お前なら」
「……チンコおっ勃ってて人の部屋行けると思います?」

 うるさい、だけならばまだよかったのだ。
  最初はただただ快感に翻弄される声が漏れ聞こえるだけで、シアンのやつ頑張ってるなぁなどと思っていられたのだ。
 だが、次第にロベルトの言葉はシアンを誘惑して挑発するものになり、シアンも調子に乗って下品な淫語で攻めるものだから、若い独り身の陰茎は煽られて固くなり、部屋から出ることもできずに悶々とさせられた。
 とうとう先日は耐えられずにオナニーするに至った。くそくそ。内心悪態をつきながらも、あんあんと喘ぐ低い声がどんどん切羽詰まっていくのに追い立てられ、イけよ、と追い詰める声に、遠く絶頂の善がり声を聞きながら射精した。
 中堅騎士は焦った。
 やばい。これは。
 変な性癖に目覚める。
 と危機感を抱き、上官へと冒頭の嘆願を寄せる羽目になったのである。

「いや、ズリネタに出来てんならまあ良くないか?」

 何考えてんだこの人。マジでシアンに尻掘らせてんの、ただの可愛がりの一環なのか?
 中堅騎士は慄いた。元から感性のよくわからない部分の多い上官だったが、羞恥心まで一般良識の埒外とは思わなかった。

「……おい、ズリネタにしてんのか?」
「ほら~~~~~~シアンに言ったらそうなると思ったから隊長に言ったんじゃないですか~~~~~~~」

 突然、後ろから低く冷えた声をかけられて、中堅騎士は絶望した。この十年ネチネチ初恋男に聞かれたくなかったから、わざわざ一対一の時間を確保して嘆願したというのに。

「なに人のセックスで勃起してんだ」
「うるせぇな!!せめて隊長の部屋でやれや!!」

 正直、男として自分の部屋に連れ込んでヤりたい気持ちはわかる。だが、実害が出ているのである。

「あ~」

 だと言うのに、シアンはニヤついている。あ、答え聞きたくないかも。本能的に中堅騎士の本能は危険を感じた。

「俺の部屋で抱いた方が反応いいんだよな」

 ロベルトは無言でシアンの頭をスパンと叩いた。そこの羞恥心はあるんかい。中堅騎士は呆れた。

「キレるとこと開けっぴろげなとこの意味がわからん」

 ロベルトが苦々しく言うので、中堅騎士は心底からどっちもどっちなんだよな、と思った。

「とりあえず話はわかった。適当な持ち家に清掃入れるから一週間ぐらい待ってろ」
「そんなサラッと出ていけるのに寮にいたんですか!?」
「あんた家持ってんの!?」

 二重の怒声交じりの質問を受けても、ロベルトは涼しい顔をしている。

「何軒か俺名義になってるだけで、住んだことないけどな」
「実家が太すぎる」

 知ってたけど。王国随一の商人、ノグレー商会。その長男だもんなぁ……家ぐらい持ってるか……そりゃそうか……。

「くそ、遠くなるな……」

 うるさいなこいつ。中堅騎士は思った。今までが近すぎて感覚がおかしい。軍都内なら掛かってもせいぜい一時間だろうが。
 そんな風に思っていれば、上官は不思議そうな顔をした。

「何言ってんだ。お前も住むだろ」
「は?えぁ?」

 急に同棲をチラつかされて、初恋ネチネチ男がバグった。

「あー……あとは二人でごゆっくり」
「い、行くな、急なデレに耐えきれねぇんだけど」
「勝手に萌えてろ!!俺は部屋に帰る!!」

 俺だって上官のデレに耐えきれねぇよ!!
 腕を掴まれて、中堅騎士は逃げ場を失った。
 シアンの力は強い。ロベルトとそういう仲になってから余計筋肉増強に励んで効果が出ているせいで、本当に本当に、力が強い。

「シアン、荷物まとめとけよ。家具は適当なやつ見繕わせるから。多分売れ残り押し付けられるだろうけど」

 同意を取らずに話を進めるロベルトに再度慄く。もう精神的には夫婦の距離感だろそれは。

「ウワッ話が進んでる!!なんでこれで付き合ってないことになってんだ!?」
「知るかよ!!腕離せって!!イチャイチャに巻き込むな!!」
「いや、合理的判断だろ。シアンが自分の部屋でセックスしたがってんなら、俺だけ寮から出てっても意味ないだろ」

 なんでこの人この状況でまともな理屈の話してんだ?内容は完全に猥談なのに。

「毎日ヤッてもいいって話かこれ?」
「お前、俺がその気じゃないときに、どうにか出来ると思ってんのか」
「帰らせてください」

 人前でセックスの話を始めるな!!
 それが気まずくて出てってもらうのによ!!!!

「お前が始めた話だろ、最後まで付き合ってけよ」

 助けて~~~~~辺境伯~~~~~~~~~バカップルが俺を巻き込む~~~~~~~~~。
 今は遠く巡礼の旅にいるクロードに助けを求めた中堅騎士だったが、クロードが帰れば帰ったで、今度は王とクロードのイチャイチャに巻き込まれるだけになるのを、まだ弓騎士隊の三番手たる中堅騎士は知らない。





 引越当日。
 引越作業に伴い、ロベルトは隊長代理に三番手の中堅騎士を指定していった。
 隊長副隊長が揃って三日間の休暇をとるなど滅多にないことだったが、二人が魔竜討伐の功労者ということもあって、髭の騎士団長は快く二人を休ませた。騎士団長になれば、中々そういった休みをとるのも難しいからな、とロベルトに向けて言いながら。
 次期騎士団長の座を仄めかされたロベルトと言えば、肯定とも否定とも取れぬ笑みで笑った。
 そうして中堅騎士である。王に随行してユリウスの研究室にいた。

「ロベルトもようやく腹を括ったか?」
「それがそうでもなさそうなんすよね……………………………何なんですかねあの人……………………………」
「一般人からの逸脱が極まりないな~」

 そのような雑談を挟みつつ、中堅騎士は遠い目をした。





 久しぶりに会う下の弟が、商会員にてきぱきと指示を出して働く姿に、ずいぶんと立派になったもんだとロベルトは感動した。

「お前……なんか本当に成人したんだなぁ」
「いつの話してんの、俺もう二十二だけど」
「いや、年はわかってるけど。仕事してんの見るの始めてだからな」
「……兄貴ってちゃんと仕事してんの?」

 弟の成長に感心していれば、逆に自分の仕事について聞かれて、ロベルトは不本意そうな顔になる。

「おい。魔竜討伐の時の話、聞いてないのか」
「いや、そうじゃなくて普段」
「あ~、まあ、適当に?」
「やっぱりじゃん」

 鼻で笑う弟を小突いて、ロベルトは作業をする商会員の一団に加わる。力仕事ならば自分が加わった方が早い。

「そういや兄貴、また見合い話めちゃくちゃ来てんだけど」
「悪いけどそっちで断っといてくれ。直接俺に来たやつ断るだけで手一杯なんだ」
「会うだけ会えば?」
「会ってガッカリされんの、面倒くさいんだよな」
「あ~」
「おい。そこで納得するのかよ」
「いやだって、話に聞く兄貴と本物のタイプ違いすぎる」
「美化されすぎてビビるんだよな。クロード殿はマジであれだけど」
「そうなんだ?あ、そうだ兄貴、ユーノヴェルト辺境伯が帰ってきたら紹介してくんない?縁繋げときたい」
「ちゃっかりしてんなぁ」
「商人だからね」

 にま、と笑った下の弟に、ロベルトは肩を竦めた。
 商会の後継者である上の弟がこの末っ子の愛嬌を頼りにしているのはよく知っていることなので、二人でまあ上手くやって行くんだろうな、と家業の安泰を確信しながら。





 夕方、荷物や家具の運び入れや、水回りや熱源の魔法道具の動作の確認を終えた頃、新居を訪ねる者がいた。

「お久しぶりです、ロベルトさん。兄がお世話になります」

 シアンの妹であった。
 軍都内の大衆食堂で住み込みで働いている彼女は、シアンがロベルトと同居するとほんの数日前に聞き、早く言ってよ!と兄を叩いた。そもそも決まったのがほんの十日前なのだが、甘んじてシアンは妹の怒りを受けた。
 ロベルトが何気なく紹介してきた新居が、質素な商店を改造したものとは言え、軍都の一等地だったためだ。貧乏時代を共にした妹に申し訳ない気持ちもあったが、さすがに妹にも住めとは言えなかった。
 シアンは自分の欲望を優先した。

「ああ。悪いな、ずっとシアンを借りてて」
「返さなくていいですよ、かさばるだけなので。夕飯、まだですよね?簡単に食べられるもの持ってきました」
「ああ、ありがとう」

 妹がロベルトとそのようなやりとりをしているのを、シアンは手持ち無沙汰に眺めた。
 兄貴に挨拶してこないのかよ。シアンは子どもの頃ロベルトに告白して玉砕した経験のある妹を呆れて眺めた。
 妹にとって、それはもはや幼少期の思い出でしかなく、いまや『ロベルトさんって眺めてるぐらいが丁度いいのよね』というドライなものになっている。
 泥沼に入りすぎているシアンは、妹のことを賢明だと思った。

「お兄ちゃん、いたの」
「いるだろ」
「なんか落ち着いてるから」
「……」

 妹とロベルトが話している姿はお似合いのカップルのようで、わざと無理やり会話に入っていったことも何度もあった。
 自覚があるのでシアンは黙った。今やそこまでしなくとも、体を重ねてロベルトからの好意が確かにあるのを知って落ち着いているということも、自覚の上である。
 妹は不思議そうに顔を傾げた。

「まあいいけど。私もう店に戻るから。いつでも来ていいけど、ツケはなしだからね」
「わかってるよ」

 しっかりしている妹の親切と小言の入り混じった言葉を受けながら、シアンはテーブルに食事を並べているロベルトを見た。本当にこれから一緒に生活するのだ、という実感が湧いて、気もそぞろになる。

「お兄ちゃん、ロベルトさんに迷惑かけないように」
「おー」

 小言は続く。もう少し続くようなら早く行けよと仕事に急かしてやろうかと思っていたシアンに、妹が顔を寄せて、声を潜める。

「……あと襲わないように」

 とっくに知られているシアンの初恋を、妹は特別応援も嫌悪もしていない。ただただ兄の短気を憂いて念を押した。

「いや……はは、おう……」
「なにその反応」

 さすがに妹に付き合ってはいないけどセックスしてるとは言えず、シアンは言葉を濁らせた。
 この場では濁らせたが、観察眼に優れた妹には、半年もしない内に関係がバレることになる。
 爛れすぎ。その一言で一刀両断した妹に、シアンはうるせぇ、と言うことしかできなかった。





 そうして、ロベルトとシアンの同居が始まった。
 シアンは妹の忠告を完全に無視して、初日から大きくなった寝台でロベルトを抱き潰し、翌朝にはあれこれとこき使われた。何でもかんでもやらせようとするロベルトに悪態は返したが、さすがに甘んじて勤労を受け入れ、その晩には十分に家の中を片付けた。
 そもそもロベルトもシアンも、ゼファーについて遠征に出ることが多かったため、大きな荷物を持っていなかったためである。

「三日もいらなかったな」

 夕食を自分で作るほどの余裕があった。ロベルトの作るそれは素朴な野営料理だったが、強めの塩気が、疲れた体によく沁みた。

「俺が死ぬほど働いたからだろうが……」
「はは。まあ、がんばったな。ご褒美やろうか?」
「あんたたまに恋人みたいなこと言ってくるよな」
「優しい兄弟子の甲斐性だろうが」

 ロベルトは不本意そうに言ったが、シアンはさして重く考えなかった。本人が定義にこだわっているだけで、ご褒美として許される範囲が恋人のものだったので。

「明日デート」
「買い出しな。それはまあ普通にするからいいだろ」
「んじゃフェラ」
「いきなりそっちかよ」

 ロベルトは笑った。いつから着ているのかダルダルに緩んだ私服の首回りから、昨夜シアンが付けた情交の痕が覗いている。

「いいぞ。死ぬほど搾り取ってやろうか?」
「いや、……、まあそっちもしてくれていいんだけど、俺の方がしたくて」
「ふーん?珍しい」

 シアンは迷って両取りを選んだ。二日も連続でセックスを出来る事自体が稀なのだ。出来うる限り何でもやっておきたかった。

「だってあんた、チンコ咥えながら穴弄ってやったら、すーぐケツに入れて欲しそうな顔になんだもん」
「してないだろ」
「してる」
「してねぇ」
「してる」

 結局その日、しょうもない言い争いの決着をつけるべく、姿見の前でシアンはそれをロベルトにしてやった。
 してるだろ。入れて欲しそうな顔。シアンがそう言えば、ロベルトはきゅう、と埋められた秘所でシアンの指を締め付けてしまい、熱っぽい声で、うるせぇな、と悪態をついたのだった。





 三日目には、ロベルトから今日は止めとくか、と言われて、シアンは大人しく従った、わけではなく、少しちょっかいは掛けた。最終的にロベルトから顔面に裏拳を食らって黙った。

「その気がない時に無理に押してくんな。明日の職務に響く」

 こういうところだけ潔癖で生真面目なロベルトを、シアンは仕方なく自室に帰した。じゃあおやすみ。初めてそんな風に挨拶を交わして、二人きりの家で別々の夜を過ごした。これはこれでグッと来るな。シアンは同居の喜びを噛み締めた。
 それからも、ロベルトはそのつもりがない時には、シアンが触れようとすれば躱し、押し倒そうとしても壁のように倒れなかった。
 ロベルトはよく勤怠表作成やら勤務評価の日常の職務を持ち帰り、そういった時は本当に一ミリの慈悲もなくシアンを遮断した。
 けれど、そういった時以外は。
 シアンが少しそのつもりで近付いて、誘いをかけようとすればすぐに気がついて、からかうように笑った。

「なに、セックスしたいのお前」

 そうして逆にロベルトからキスして押し倒してくるぐらいである。気がおかしくなる。シアンはムラムラしながら、恋しい男の、同じ生活臭のする体をまさぐりながら頭を沸騰させた。




 同居してから冗談みたいに、馬鹿みたいに、セックスしてんな。
 シアンは自覚していたが、我慢する理由もないので、欲望に任せた。何分ロベルトも頑丈で体力馬鹿なのでいけない。さすがにロベルトが音を上げればシアンは節制しようと思っては、いるのだ。

「っぁ、あ…っ!ぁ、んーーーーっっっ!!」

 思っては、いるのだ。
 けれど、本当にもう、遠慮の一つもなく抱けると思えば、ついつい責めも激しくしてしまうというものである。びくん、と大きく跳ねたロベルトが、腹の奥でシアンの陰茎をぎゅうぎゅうに締めて、シアンはその誘惑に逆らわず、そのまま射精した。
 びくびくと体を震わせるロベルトの項にキスを落としながら、シアンは腰をぐりぐりと擦りつけた。
 どくどく、と射精は続き、シアンの体の下では、ロベルトが荒く息を繰り返している。
 まだその体の軸がしかと保たれていることを確認して、シアンは震える耳たぶを甘噛みして、熱い息を吹き込んだ。

「……なぁ、もう一回……」
「っは、ぁ……、この、エロガキが、よ……」
「最近あんたの中すげぇんだもん、仕方ねぇだろ」

 ちゅう、ちゅう、と項に吸い付いて甘えれば、ロベルトは体を半分捻って、シアンの口に唇を寄せた。熱く甘い咥内を味わって、汗で湿った体を撫でれば、ロベルトの体が仰向いて、肌と肌が重なりあう。ぬぽん、と抜けたシアンの陰茎がロベルトの尻を汚した。

「……って言って、あんたもまだ勃ったまんまじゃん」

 舌を絡ます狭間、芯を持ったロベルトの陰茎に気付いて、シアンは自分の固い陰茎を擦り付ける。ロベルトの喉から、詰めた息が漏れた。

「んっ、う……人のことケツでイかしといて……」
「へぁ」

 思いも寄らない発言に、シアンの口から間抜けな声がもれる。

「なんだその声……」
「いや……マジか?さっき初めて?」
「じゃねえよ……、何回か……」
「教えてくれてもいいだろ」
「気付いてんだと思ってたから……」

 熱く息を吐き出すロベルトに、シアンは欲望を滾らせる。
 見たい、と思った。
 自分の性器で突かれて善がるだけでなく、尻の中で絶頂するロベルトの顔を、絶対に今日、今、見たいと思った。

「……たまにすげぇ締め方してくるとは思ってたけど、なるほどな」
「お前……」
「あんたが俺のチンコでイくとこ、見せてもらうか…な!」
「っぁ!」

 一気に奥まで貫けば、ロベルトの体が反って跳ねた。その喉を食んで、シアンはロベルトの脚を肩の上に抱え上げる。

「ガンガン奥突いてる時だろ?苦しそうだからあんまやんないようにしてたけど、ケツでイくほどイイならやっていいよな?」
「も……、いまさら、だろ……」
「あんたに強請らせてえ」

 とんとんと小刻みに奥を譲れば、ロベルトの顔が緩んでいく。もう挿れられているのに、挿れられたくて仕方のない顔を、している。

「……強請らせたかったら、ガンガン腰振って、俺の正気ぶっ壊してみろよ」

 それでも不敵に言ったロベルトに、シアンは笑った。ロベルトの言葉は、そこまでやっていいという許しだ。





 ばちゅばちゅ、と下品な水音が激しく部屋に満ちている。
 その狭間に上がるロベルトの善がり声は、もはや隙間がないほどで、快楽の頂点が近いことは歴然としていた。
 責めるシアンの呼気も荒い。強く強く責めれば責めるほど、ロベルトの内側は酷くうねってシアンの陰茎をいやらしくしゃぶり、精を搾り取ろうとする。
 それをどうにか耐えて、シアンは大きく固くなった陰茎で、ロベルトの奥を穿いて、深く長い絶頂へと追い立てる。

「あーっ、あっあっあっ!イく、イく、もうイく、シアン、やっ、ぁあ、あっ!」

 ぼろ、とロベルトの目から涙が落ちた。本当に苦しそうで、だがその苦しさが快感ゆえにだとわかったシアンは、もう手加減をしなかった。ぱた、とシアンの額から汗が落ちて、ロベルトの胸元を濡らした。

「イけよ、イっちまえ…っ!俺のチンコで中イキしちまえ……っ!」
「シア…っ、シアン、奥、おくっ、も、苦し、シアン…っ!」

 がくがくと揺れるロベルトの腰が、卑猥に反ってシアンの陰茎を奥に誘い込む。その誘いに乗って、シアンはめちゃくちゃに腰を振った。
 みっともないほど必死に腰を振っている。それでよかった。一番みっともないところを見られたくない男が、そのみっともなさに、かつて、応えてやりたい、と言ったから。だから、シアンは欲望をさらけ出す。

「っひ、ぁ、ァ、あッ、ぁ、」

 ロベルトの焦点が揺らぐ。追い詰められている。
 塞ぐもののない口が大きく開いて、はくはくと戦慄いて快感を逃がそうと震える。
 でももう、手遅れだ。シアンは歯を食いしばって耐えながら、その瞬間を待った。

「っぁ"、ぅ!あ"、あ"、あ"ーーーーーーっ!!」

 ロベルトの体が跳ねる。中はぎゅうぎゅうと締まり、陰茎を甘噛みする。シアンは歯を食いしばる力を強めた。ちゃんとこの瞬間を覚えていたかった。
 あまりの快感にロベルトの瞳孔がきゅう、と開いて、収束して、その焦点を虚ろにして。
 太腿の震えはいつまでも止まらず、膝を揺らして、びくびくと時折足先が跳ねて何度も繰り返し極めているのを伝えてきた。
 秘所は激流の如くうねって、精を搾り取ろうと収縮を繰り返した。大波を越えても何度も収縮して、ロベルトが何度も小さく腹で絶頂していることをがわかる。

「……っはー、はっ、ロベルト、俺のチンコ気持ちよかったか……?」

 シアンは調子に乗って、言葉で責めた。ロベルトの秘所がきゅうきゅうと小さく蠢いて、それだけで快感を得ているのを伝えてくる。

「っぁ、あ……シアンのチンコ、きもちいい、きもちい……」

 ここまで来るとロベルトもほとんど正気ではなかった。そういう時の兄弟子が、無意識で復唱をするのを分かっているから、シアンは殊更に下卑た欲望で言葉を重ねる。

「俺のチンコでする中イキきもちいいな?」
「ぁ…っ、うん、うん、中イキ、きもち、い……」

 緩く陰茎で突いてやれば、今だ絶頂から抜けきれていないロベルトの体は震える。ぴくぴく、と小さく痙攣する中側を、シアンは執拗に捏ねて突くのだから、余計に快感は引き伸ばされて、ロベルトの正気はもうほんの欠片だけ。

「あんたのここ、今日はずっと、俺のための穴にしていいだろ?いいよな?」
「ん、ん……シアンの穴、シアンだけの穴でいい……」

 ロベルトの焦点はどこにも合っていない。そうすると澄んだ翡翠色の目は、まるで宝石のようなただ愛でられるためのものに変わる。

「うん、いいな。それじゃ、次は俺のこと、あんたの中イキでイかせてくれ」
「うん……」

 ぼんやりと頷いたロベルトに、シアンはキスをして、再びみっともなく腰を振り始めた。応えてくれると分かっているから、どこまでみっともなくなろうと、構わなかった。





「何言わせてんだお前。自分で恥ずかしくないのかよ」
「あんた結構記憶残るタイプだよな」

 翌朝、じっとりとした目つきのロベルトに言われ、シアンは苦笑した。そして素知らぬ顔をした。

「何言わせたっけっかな、俺」
「シアンだけの穴でいい♡」
「言うんかい」
「勃つのかよ」

 素面で言われるには刺激の強すぎるそれに、シアンの陰茎はむくりと起き上がった。元気すぎるだろ。ロベルトは呟いた。

「勃つだろ。もっかい言って」
「言うかよ。言わせたかったら、またあそこまでチンコ働かせとけ」
「それじゃ遠慮なく」
「おい、昨日の今日だぞ。元気すぎるだろ……」
「そうだぞ。元気に生きてっから、あんたと元気にセックスしようかと思って」
「なんだその理屈」

 呆れて、だが安心したように笑うロベルトに口づけて、シアンは遠慮なく昨晩も愛し虐め抜いた穴を自分の陰茎で塞いだ。
 薄暗い朝早くのそのセックスが、思いの外盛り上がってしまい、一度の交合では飽き足らなかった。
 さすがに満足しきって柔くなった陰茎に代わって、指で撫でて突いて、何度も何度も腹で絶頂させた。
 ロベルトが気絶するまで蹂躙しきった頃には、すっかり日も高くなり、からんからんと教会の鐘が鳴った。
 今頃、騎士団の寮では、朝食にありつこうと、寝坊気味の騎士たちですら起き出している頃だ。
 
「っ!!……っはぁー…、は……っ……、この……ッ、この猿……ッ!!!」

 短い気絶から立ち直ったロベルトの罵声を、シアンは甘んじて受け入れ、惜しむように指先をロベルトの拓ききった穴をぐるりと撫でた。
 ぅあ、とロベルトの口から善がり声が上がる。もっとやって、もっとドロドロにしてやりたかった。
 ここまで乱しても、どこか気品を残すロベルトの風貌をみっともなく歪めて、それを愛してやりたかった。ロベルトがシアンにしたように。

「行きたくねぇな……」
「……っうるせぇ、ボケ、行け」

 ロベルトには珍しい、なんの工夫もない罵声に、シアンは余裕で聞き流した。
 がくがくと膝を震えさせて、本当に股を閉められないでいるロベルトの声に覇気はない。それどころか、甘く快感に溶けて、余韻だけで感じているのが、シアンの心を浮かれさせた。
 浮かれて、迂闊なことを言うほどに。

「なぁ、もう騎士辞めて良くないか?魔竜討伐も終わったことだし」
「殺すぞ」
「……そこまで言うか?」

 ロベルトの声に、急に芯が通る。本気の殺気にシアンは仰け反った。猿と罵るほどに尻掘られた後に、蕩けた体で、そんな本気を、シアンの軽口に対して。

「お前の才能一番活かせんの、騎士やってる時だぞ。捨てんな」
「……おー」
「なんだ、その返事」

 ロベルトはごく当然のように言ったその言葉が、シアンの急所に的確に刺さっていた。恋とか愛とか言わないロベルトから、シアンの才能を愛おしんで手ずから育てようという欲望を、向けられている。
 弟弟子として才覚を認められて純粋に嬉しい気持ちと、恋しい男から独善を向けられているという仄暗い歓びで、シアンの心はむずむずと震えた。

「いや、噛み締めてただけ。大人しく行ってくるから、行ってらっしゃいのチューぐらいしてくれてよくねぇか?」
「お前、ほんと一々そういう……」
「ん」

 文句を言うロベルトの眼前に、顔を寄せる。ロベルトは呆れた顔をして、唇を寄せた。
 爽やかな朝に相応しい、紳士的なキスは触れるだけのものだ。その体はどこもかしこも性の匂いにまみれているというのに。

「行ってこい」

 そうしてそう告げた笑みは、まるで恋人のような甘さで。
 なんだかんだでシアンをまた許す兄弟子の可愛げに、シアンは思わず飛びついて舌を入れるキスをした。
 はよ行け。ロベルトがそう言って、拳骨を飛ばすまで、数秒の猶予を与えられて、シアンはまた、本当にこいつ俺のこと好きだな、と自惚れた。
 勘違いでないのだから、もはや余人には手に負えない恋で、愛だった。




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