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7.妖精との勝負④
しおりを挟む「な、何事!?なんでナナクレナが出てこないの!」
妖精の勝負は動揺した。自分の仮定が間違っていたからだ。
「くっ、見えない……」
私の位置からでは馬車付近で何が起こっているかはっきりと見る事ができない。それに、全体への指示を出す必要があるので、馬車付近に近づかなければならない。
私は馬車付近へと移動を開始した。私は身体が小さいので、たどり着くまでに数分掛かる。それまでにリーダー格の魔物には指示を出しとくべきだわ。
『A、B班はそこのメイドを捕らえて。殺しちゃダメだからね!』
『了解』
これでいい。リーダー格が攻撃を始めれば次第に他の魔物も攻撃を始めるはずだ。
だが、やはり全体への指示を出す為には馬車に近づかなければならない。標高15mほどの木より少し高い位置を進めば障害物がなく進める。それで行こう。
こうして、妖精の少女は王の木を後にした。
―――――
馬車から出てきたのはシニアだった。
シニアは馬車からバク宙をして華麗に登場すると、両手に斧を持って構えた。
魔物達は攻撃してこない。シニアが放つ殺気に反応しているのだろう。それに、妖精の少女からの命令が来ていないからだ。
しばらくどちらも動かずただ風と時間だけが数秒過ぎていくと、馬車から一人のお爺さんが足音を立てずにシニアの前までやってきた。
馬の上に乗って馬車を運転していた、ルスティカーナ家に勤める執事ロクラスト爺やだ。しかし、このお爺さんはただのお爺さんではない。シニアの武術の師匠だ。
ロクラストが歩いてきて、その存在を目視するまで魔物はおろかシニアすら気づかなかった。これはロクラストが長い年月をかけて完成させた完全に気配を消す能力によるものだ。
ロクラストは剣を片手に持ち構えると、その鞘を少し開いた。太陽の光に当てられ輝いた剣と鞘の隙間は一瞬だけしか見る事が出来なかった。
なぜなら、ロクラストは鞘を少し開いた直後に攻撃に入っていたからだ。
ロクラストの攻撃は超高速かつ遠距離型なので、瞬きの間に攻撃が行われる。
その時間にして約0.5秒。その間に鞘から剣を抜いて斬撃を放ち、剣を鞘に収める。
斬撃は空気中を駆けていき、馬車を囲っていた魔物の大群の前方180°に攻撃が行き届いた。
魔物達は斬撃が放たれたことも、その斬撃をくらっていたことも知らない。ただ白い線が身体の表面に現れると、その直後にその部分から血が噴き出す。
こうして、一瞬のうちに魔物の大群の一部が撃破された。
仲間が攻撃されたことに気づくと、魔物達は戦闘態勢に入る。
「後ろは任せましたよ、シニアさん」
「分かりました、師匠」
こうして、魔物との戦闘が始まった。シニアとロクラストは互いに背中をくっつけると、武器を構え、襲ってくる魔物を次々に倒していく。
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